土地が売れないというと、よく「市に寄付をしたらどうか」という意見を聞くことがあります。
あるいは「固定資産税を払わずにいると、土地が市の所有となるのではないか」という推測を述べる方もたいへん多くいます。
これらの真偽を確かめるため、市役所に行って寄付は可能なのか実際に聞いてきてみました。
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目次
土地の寄付を市役所は受け付けるのか
私の実家は相続後にはじめて、持分なし私道に接道しているため通常の方法では売れないとわかりました。
当時はまだ不動産に関する知識がなく、身内からもこれまでには一度も聞いたことのない話で解決が困難に思われたため、市役所のトラブル相談に行ってみることにしました。
その際、自治体で土地の寄付を受け付けてくれるかもしれないという意見があることを耳にしたことがあったので、合わせて聞いてみたのです。
市役所で寄付を扱うのはどこ?
市役所に行って土地を寄付するとしたらどの課で扱うのか聞きましたら、「管財課」というところだと窓口でいわれました。
それでその窓口に行ってまず私道の件と窮状を話し、寄付ということで取ってもらうことはできるのかどうかを聞いてみました。
すると、市役所の職員からやんわりと、
「(土地を)取る理由がない」
と返事されました。
市役所は土地の寄付は受けつけない
結論を言うと、市役所、つまり、自治体では土地の寄付は受け付けないということでした。
察するに管財課で土地を受け取るのは寄付ではなくて「土地を取る」時に限るようです。
どういうことかというと固定資産税を支払わないで差し押さえをするならあり得るが、それ以外に市役所では土地を引き取るという事例がないということです。
利用価値のない土地は市でも要らないわけで、そもそもがすぐ現金化できるという需要の高い土地なら市に寄付するまでもないでしょう。
要はどうしようもない土地だからと言って、市役所に行ってもらちが明かないことがわかったのです。
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固定資産税を滞納した土地は?
他に一般に見かける意見では、「固定資産税を滞納したら、土地を市役所に取られる」というものがあります。
この真偽はどうなのかというと、もちろんこちらは間違いではありません。
土地の差し押さえ
まず、固定資産税を滞納すると、土地に対する滞納分の税金債務が発生します。
そして、次のような措置が行われます。
- 通知および督促:・・・通知や督促状が来る
- 強制執行手続き・・・土地が差し押さえになる。
- 土地の差し押さえのあと競売になり、売却代金から税金分が差し引かれる
ただし、こちらは寄付とは全く違った意味合いです。
土地を要らないから固定資産税を意図的に支払わないというのは、悪質な行為となりもちろんすすめられるものではありません。
生活保護で固定資産税の減免
他には、生活保護を受けている人なら固定資産税を減免する手続きを取ることができます。
もう一つ、土地の税金が高過ぎるという場合は、税金の見直しを申請して、申請が通れば固定資産税を値下げしてしまうという方法はあります。
ただし、寄付と差し押さえに関しては、どちらにしても現実的な案ではないということですね。
市役所が受け取る土地もある?
土地以外の物品であれば、市役所が受け取るケースはもちろんあります。
私自身が以前、市役所に行って未使用の介護用品の寄付をしたことがあります。
ただ、この場合もすぐに受け取ってもらえたわけではありませんでした。
物の寄付でも最初は断られた
父の亡くなったあと、未使用の介護用品、おむつや寝間着などが大量に余りました。
捨てるのももったいない、新品なので誰かの役に立たないかと思って、寄付ができないか市役所に問い合わせたことがあります。
その場合でも最初に訪れた課では一度は断られたのです。
というのも、たいていの老人ホームだと、おむつなどの介護用品は規格が決まっているので、もらえないと即答されました。
市役所で寄付を扱う課を選ぶ
ただし、そのあとで福祉課の方で、低所得者の入るホーム用に欲しいという職員が見つかりました。
最初の市の運営の老人ホーム担当の人だと、規格品しか使わないので要らないと言われたのです。
しかし、低所得者の生活担当の人だと、今度は一転して該当施設では不足しているので助かるということになりました。
この経験からわかるように、他の寄付に関しても担当部署や職員を変えて何度も聞かないとわからないこともあるようです。
震災の時の援助などそうですが、欲しいという人は必ずいるのです。
土地の寄付の前例がない
しかし、震災の援助も、いきなり市役所に直接物品を持ち込んでも即役立ててもらえるわけではありません。
寄付にはそれなりのルートが確立していることが必要なようです。
特に、不動産はそのまま伝えない場合は現金化する手間が必要ですし、そのような制度も前例もありません。
そのまま使うという用途がない、用途に合わない、市が必要としていない空き家や土地などは受け取ったとしても活用ができません。
そのような土地の場合は寄付は難しいと言えます。
施設などの用地の可能性
ただし、市役所で施設などの用地を探しているようなときや、施設の用地が決まってその隣に隣接する土地などであれば、寄付の可能性もありそうです。
少なくても、そのような場合は無償で提供するという申し出が不自然ではないことになるでしょう。
寄付もないのですから、土地の買取はまず期待できないことになります。
土地の寄付が今後可能になる?
さらに言うと、自治体で探している、用途に合うなどの条件を満たしていれば、寄付が可能になる可能性はあるのでしょうか。
空き家に関する施策として自治体が行っているのは、空き家バンクがあります。
ただし、空き家バンクの目的はあくまで空き家問題へ対策として市が行うものであって、土地に関しての自治体の積極的な関与はあまり期待ができません。
というのは、2023年からは国が土地を引き取る相続土地国家帰属制度という法律ができたからです。
※詳しくは下の記事に
相続土地国庫帰属制度とは
国が土地を引き取る法律
われわれが考える「寄付」というのは、お金がかからないから「寄付ができたらいいな」と思うのです。
国が土地を引き取る法律というのは、相続土地国家帰属制度というもの。
相続による土地限定で、しかも無料ではありません。
この制度によると、土地の引き取りはできるものの、基本的に有料となります。
土地引き取りの費用
個々の土地によっても違うのですが、大まかに言うと
- 手数料がかかる
- 登記費用
- 処理費用
の3つです。
手数料は、相続土地が国庫に帰属する手続きに発生する費用です。
登記費用は、相続土地の所有権が国庫に帰属した後、土地の処理や返還が行われる場合、登記手続きが必要になることがあり、その費用です。
いちばん大きいのは、相続土地が国庫に帰属した後、土地の処理や管理に伴って持管理費用や税金の支払いが必要になるというものです。
土地の管理費用が有料
このうちもっとも大きいのが土地の管理費用です。
土地の管理費用については、10年間の土地の管理費用ということになっています。
現在のところ予想の金額がネットで示されている例がありますが、かなりばらつきがあります。
住宅地については、原則一筆(登記上の一個の土地)20万円 となっているそうで、それほどではない印象ですが、土地の処分に国がお金を取れる仕組みが法律で確立されたのです
なので、価値のある土地ならともかく、それ以外のいらない土地を所有者の申し出によって無条件に無料で土地を引き取るという意味合いでの寄付は、今後はまずあり得ないと考えた方がいいでしょう。
土地の引き取りにかかる費用
ちなみに、国に土地を引き取ってもらう場合に管理費以前にかかる費用を概算で提示すると下のようになります。
- 建物の解体費用…平均170万円
- 空き家の残置物撤去…家具や不要貧処分費用…量に寄るが数10万円からが目安
- 庭木や庭石の撤去…量によるが10万円~
- 塀の撤去…量によるが数10万円が目安
- 確定測量費用…約40万円
- 建物滅失登記…司法書士依頼で3万円~
これを見ると、解体費が最も大きいのはもちろん、最初に行った管理費用も足すと、金額はかなり大きいと言えます。
要らない土地はどうするべきかまとめると、
- 市役所では無償の土地の寄付はない
- 有料の引き取りであれば申請ができる
というのが現在のところの答えです。
われわれの側はどうすればいいのかというと、対策としてはやはり不動産を手放すこれまでの方法をとるしかありません。
まとめ「市役所に土地の寄付」の結末
結局、私の実家の場合は、実家とその土地は買取で解決することができました。
市役所に寄付を断られた時はがっかりしましたが、売却をあきらめていた実家が、なんと買取で売却することができたのです。
実家が売れた今では固定資産税の支払いも、草取りの苦労もなくなり本当に安心しました。
私の時はまだ買取が今ほど一般化していない時でしたが、今では地方の土地はまず売却を試し、それで売れなければ業者に買い取ってもらう、または有料で引き取ってもらうのが一番良い方法です。
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