岡野光喜元会長がスルガ銀行社員に配ったマンガと「最後まで殿様」    

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岡野光喜元会長がスルガ銀行社員に配ったマンガと「最後まで殿様」

朝日新聞の経済欄に、スルガ銀行の創業家岡野家ファミリー企業の実態を扱うコラムが連載されています。その中に、スルガ銀行の社員に配られたマンガがあったことが取り上げられていました。

また、スルガ銀行から7億円の「融資」を受け取った岡野光喜元会長が、第三者委員会の調査の際に、殿様然とした受け答えをしたとも伝えられています。
コラムの内容をお伝えします。

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岡野光喜会長がスルガ銀行の社員に配ったマンガ

 

 

 

 

 

 

 

スルガ銀行をモデルにした漫画というのは、タイトルが「CRM 金流革命」というもの。現在は販売されていないようですが、 Amazonや楽天にも表示があります。

編著者は、岡野家ゆかりの土地、「駿河平」を逆にした、筆名「平河駿」という人物。1999年に出版されてスルガ銀行員に配布。

なぜ社員に配られたのかはわかりませんが、銀行内では岡野光喜元会長が社員に配るために作ったと言われているそうです。

岡野元会長がモデルのフランクな社長「御可能光」

岡野光喜元会長は、漫画の中に「御可能光」(おかのひかり)スルガ銀行社長として登場しています。モデルが誰であるかは、字面を見ただけで、言うまでもなく、岡野光喜元会長その人です。

そのマンガの中で、御可能光社長が

「たまには若い人と食事でもしないとね。スルガをもっと柔軟な企業にするため、君たちがどんな考え方で仕事をし、生活してるか知っときたいんだ」

と話すシーンがあります。

そして、この御可能光という人物像は

「フランクな人柄で社員に親しまれている。最先端ITへの関心は社内の誰よりも強い」

と描写されています。

 

スルガ銀行の社風の実像

しかし、銀行内の雰囲気が、このマンガその通りだったとは今では誰も思わないでしょう。

著しくコンプライアンスに欠け、社員に過大なノルマを課し、暴力すれすれの上下関係は、第三者委員会の報告書によって、外部にもつぶさに知られることとなりました。

銀行の OB は、その社風の実際を

創業家には媚を売り、部下には厳しく当たって追い込む人が偉くなる。そんな社風は90年代から助長された」

と語っています。

スルガ銀行を追い込んだ岡野元会長の「イケイケの経営手法」

経済ジャーナリストの松崎隆司氏、銀行の内情と今回のシェアハウス問題について、次のように指摘。

「経営が悪化した大きな原因は、岡野会長自身にあります。’85年に当時、地銀史上最年少の40歳で頭取に就任。頭打ちだった法人融資から個人の住宅ローン融資にシフトし、収益を大きく上げカリスマ的存在になりました。その後も経営手法はイケイケで、倒産の恐れのあるスマートデイズ(「かぼちゃの馬車」を手がける不動産会社)などにもどんどん融資してしまった。社内では誰も文句は言えません。オーナー経営者の悪しき例です」

先にお伝えした通り、以前には、労組のデモも行われましたが、行った社員は直ちに解雇され、もはや誰も何も言えない社風が、現在のシェアハウスの問題に結びついてしまったことは疑いがありません。

岡野家によるスルガ銀行の経営支配

そしてその背景にあったのが120年以上続いた創業家、岡野家による経営支配でした 。

昨年末の調査報告書によるとファミリー企業への融資残高488億円のうち69億円は創業家の個人に流れ、岡野喜之助副社長が61億円を受け取り、岡野光喜元会長も7億円を受け取ったとされています。

岡野氏個人が受け取った7億円を含め、それらの多額なお金の使途や経緯は、当然調査対象になりました。しかし、調べに当たった調査委員会は「疑いは残るものの、調査には限界があった」と報告しています。

 

「最後まで殿様の口ぶり」だった」岡野光喜元会長

一体なぜだったのか、聴取の様子がうかがえる岡野氏への聴聞の様子が、朝日新聞のコラムに記されています。

その7億円の人や経緯について光喜氏は「わからない」と繰り返し、調査委に説明しなかった。

スルガ銀関係者は(その様子を)「最後まで殿様みたいな口ぶりだった」と話す。

「わからない」だけでなく、「調査委に説明しなかった」と記されています。

調査委員会も警察ではないため、それ以上は追求できず「調査には限界があった」となったのでしょうか。

岡野光喜氏への融資7億円は返却されたか

これらの、 ファミリー企業や岡野氏個人に対する不正な融資に関しては、 スルガ銀行に変換するということになっていますが、今のところ返済や返却されたという報告は出ていません。

一部の有志には既に返済期日が昨年11月であるような、返済期限を過ぎた案件もあるということですので、最初から返済をする意思も返済計画もなかったもののようで、現在も返却に至ってはいないのです。

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スルガ銀行からの損賠請求にも応ぜず

岡野光喜元会長を含む、 旧経営陣は、シェアハウス問題とファミリー企業問題で、 スルガ銀行から総額70億円近い損害賠償請求も起こされています。

融資として流れた総額に比べるとはるかに小さい額だとも言われていますが、岡野光喜元会長はそれにも応じる気がないらしく、請求を棄却を求めて、全面的に争う姿勢です。

岡野元会長の取材申し込みへの返信

朝日新聞は昨年秋、手紙で岡野光喜元会長に取材を申し入れたそうです。取材そのものは断られたそうですが、その際に届いた手紙の内容を掲載しています。

その内容は以下の通りです。

私なりに信念を持ち経営に携わってきたものの、今回の事案でお客様を始め関係者の皆様に多大なご迷惑をおかけしました。夢先案内人でありたいというスルガ銀行の理念を体現するに力及ばず、誠に残念に思います。

謝罪も会見もない岡野元会長

そもそも、シェアハウス問題の時も、ファミリー企業の融資問題があげられた時も、岡野光喜元会長は、謝罪どころか、一度も公の場に姿を現しておりません。

調査委員会の聴取の時と同じように、謝罪や釈明をしなければならない、企業のトップとして説明責任を果たすというような考えが最初からないのではないか。

仮にファミリー企業への融資が、弟喜之助氏の采配であったとしても、スルガ銀行の長として言うべきことがあるとも思わないのが、むしろ不思議に思われます。

スルガ銀行のトップとは言っても、実権を握っていたのが、弟の喜之助氏であり 、おそらく今までもずっとそのような立ち位置であったのかもわかりません。

それでも、名前はスルガ銀行の長、そのために、自らの存在を社員に知らしめるマンガを配布しようとしたのではなかったでしょうか。

スルガ銀行関係者が「殿様」と表現したその言葉に、傲慢さだけではない、どこか不可思議なものを感じずにはいられないのです。

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