「共有持分の放棄」という言葉がありますが、それで家土地が手放せるのでしょうか。
持分の放棄をするにはどのような手続きをすればいいのかというと、内容証明便などで郵送で放棄の意志を伝達するだけで、それが「放棄」の表明になります。
しかし、相手の同意が見込めず、こちらがその土地が要らない、手放したいから共有持分の放棄をしたいという場合には、「共有持分の放棄」は役には立ちません。
まぎらわしい共有不動産の「持分放棄」とは何かを説明します。
「共有持分の放棄」とは
目次
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共有不動産の自分の持分を放棄したい。土地は要らないので、共有状態から抜け出したいのだが、「放棄」をすれば、手放せるのだろうか。 |
共有持分の放棄の答え
共有持分の放棄は、郵送で「共有持分を放棄する」と示すだけで行えます。
しかし、共有者の同意がなければ、実際、放棄は成り立ちません。
相手の同意なしに、共有状態から抜けられる唯一の方法は、共有持分の売却のみです。
答えの理由
私は、弟と相続した土地と家屋を手離したいと思っていました。
売却と無償で放棄する意志を弟に伝えましたが、弟が連絡に応じず、同意を取れませんでした。
東京住まいの弟は、田舎の実家の家も土地もいらなかったからです。
そこで、私は共有持分の売却によって、相続が発生してから9年後、相続物件の管理、解体、固定資産税の支払いから逃れることができました。
共有持分の放棄とは
そもそも、法律用語で「共有持分の放棄」というのはあるにはあるのですが、結論を言うと、「放棄します」といっても、そのままでは、相続権がなくなるわけではありません。
また、既に共有物として登記がされてしまうと、登記から自分の名前を外すには、登記の手続きには共有者である相手の同意が必要なのです。
相手の同意がなければ、「共有持分の放棄」は成り立たない理由です。
しかし、「共有持分の放棄」は、相手がその相続財産をもらいたいという場合には、きわめて有効です。
まぎらわしい共有不動産の「持分放棄」とは何かを、もう少し詳しく説明します。
共有持分の放棄の方法
共有持分の放棄とは、その通り、その土地の所有を「要りません」として手放すことです。
その表明は、他の共有者に向けて行うことで、基本的には相手にそのことを告げるだけでいいのです。
口頭でもいいし、書面でもいいのですが、記録紙として残したければ、下のように内容証明便で送ります。
持分の放棄 内容証明文例
相続分放棄書
被相続人○○○○ (死亡年月日)
本籍( 県 市 町 番地)
上記被相続人の相続について、不動産や預貯金等の一切の遺産に関する私の相続分を全部放棄します。
私の相続分は、他の相続人で、相続分に応じて取得してください。
平成 年 月 日
住所
相続人 署 名 実印
共有持分の放棄が有効な場合
それでは、どのような場合に、共有持分の放棄が有効に機能するのでしょうか。
たとえば、地方の昔の家では、長男が跡継ぎであって、親も長男と代々続く田畑と続く家土地に同居しているような場合がよくあります。
そのような家族構成だと、他の兄弟は、長男に家も土地も譲って、不動産はもらわないということが当たり前に行われている時代がありました。
その際に、他の兄弟が「不動産は要らない」というのが、持分の放棄です。
各人が書類に捺印して、長男が自分ひとりの名義で家土地を登記をすれば、実質的な放棄がそこで初めて成り立ちます。
「共有持分の放棄」と相続放棄との違い
私は共有持分の売却で、実家を売ることができましたが、その前に共有持分の放棄についても調べました。
私の場合は、お金は要らないので、とにかく土地や家を継ぎたくない。
最初から分かっていれば、相続放棄も視野に入れられましたが、何しろその頃は土地が売れないとは思いもよらなかったし、結婚したのが父の死後5年経っていましたので、相続放棄がそもそもできません。
なので「持分の放棄」ができればと思ったのです。
たいていの人は私と同じように、「持分の放棄」というと、「相続放棄」に似たものだと思われるようですが、持分の放棄はそれとは全く違うものでした。
共有持分の放棄と同意
土地と家屋の価値が高いので、兄弟が皆が土地が欲しいと争っているような物件、あるいは、土地全部はもらえなくてもいいから、土地の相続権分の対価、代金を支払ってほしいというような場合には、「持分の放棄」は「相続放棄」と同じようにすんなり他の所有者や相続人に受け入れてもらえるでしょう。
しかし、誰もがその土地が欲しくない、土地がもらいたくないから、「持ち分の放棄をしたい」という場合には、相手の同意が取れません。
「持分放棄」の目的は不動産の登記
最終的に自分ではない誰かの名義にする場合は、名義にする人の協力が必要です。
なので、その場合は、「持分の放棄」という方法は役には立たないのです。
たとえば、私の家の例を挙げますと、姉と弟が、どちらも過疎地の空き家がもらいたくないという場合、私がいくら「持分の放棄」をするといっても、弟の名前での登記には至りません。
持分の放棄の最終目標は、不動産の登記なのです。
登記には共有者の同意が必要
なので、弟が「冗談じゃない、そんな土地は僕も要らない」ということになったら、私がいくら「あなたの名前で登記をしてください」といっても、弟はそれに応じないことになります。
その場合は「持分の放棄」は成り立ちません。登記上はいつまでも私の名前が登記簿に残ることになり、固定資産税の請求も、それまで通り私宛に来ることになるのです。
この場合の持分の放棄とは、あくまで共有者向けの通達です。
その土地が誰の所有かという市役所や法務局に対して行う証明が「登記」なので、それは共有者が同意しなければ成り立たないのです。
なので、他の共有者も要らない土地に関しては、持分の放棄を行うこともできません。
土地を手放す法律はないが
空き家を手離したいという人は、今の世の中にたくさんいますが、いったん所有しまった土地は、売却をしない限り、所有権を手放すことは今の法律ではできないのです。
これは今の法律の大きな問題点の一つですが、それは単独名義の場合です。
単独名義では不可能でも、逆に共有不動産の場合は、持分売却によって、土地の所有権を手離すことは難しくありません。
そういう意味では、相続したのが共有不動産であったのは、ラッキーというべきかもしれません。
共有持分の売却が唯一の手段
土地を手放したい時にできる最終的な方法は、やはり、共有持分の売却です。
私は共有持分の売却で9年目にやっと自分の持分のみを売って、自分の名前を登記から外してもらうことができました。
固定資産税の支払いもなくなり、空き家の解体に多額の費用を出さずに済みました。
もっともよかったのは、私の息子や子孫は、田舎の不要な土地を相続せずに済むようになったことです。
負担の大きな家土地を放棄したい時、他の兄弟、相続人や共有者の同意なくできる唯一の方法が、持分のみの売却です。
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