12月5日付けの朝日新聞特集「負動産時代」の1回目は、山林の土地の所有権を放棄し、国が引き取るべきと裁判に訴えた例でした。
残念ながら、土地の引取りは認められない、土地の放棄はできないということを改めて確認するという判決となりましたが、それでは、相続放棄した際の土地はどうなるのでしょう。
相続放棄された土地が国に引き取られるまでの流れ
新聞に掲載された図があります。
1. 家裁に相続財産管理人選任の申し立て
2. 家裁が管理人を選任
3. 管理人は売却に努める
4. 手を尽くしても売れ残った土地は国が引き取る
つまり、あくまで、「売却」という手順を経て、誰かがその土地を継承するというのが目指すところであって、所有者がいらないからといって、直ちに国が引き取るということにはなっていません。
売却の努力をする人が所有者から、管理人に変わるだけのことなのです。
そしてもちろん、売り手が変わっただけでは、売れるとは限りません。最終的に国が引き取るのは、年間30~50件程度なのだといいます。
それでは、引き取らずに残った土地はどうなるのかというと「国に引き取ってもらえず、業務を終結」(管理人業務の司法書士)、そして事実上所有権は「宙に浮いたまま」ということになる。
つまり売れない土地は国も放置するしかないということなのかもしれません。
個人が相続放棄をする場合
土地だけの放棄はできない
個人が相続放棄をした場合の流れも上記と同じです。
しかし、土地の放棄が目的で、相続放棄をしようとしても、土地だけの相続放棄、あるいは借金だけの放棄といった選択的な放棄はできないのです。
なので、被相続人の遺産全部の放棄を行うということになります。財産が少しだけで、預貯金等限られたものであれば、それも行えるかもしれません。
土地建物の維持管理責任は継続
しかし、そのままでは、驚いたことに土地建物の維持管理は免れることはできず、その義務は引き続き負うことになるので注意が必要です。
【民法第940条】
相続放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
相続財産管理人の選任申立て
そのため、管理責任を免れるためには、裁判所に相続財産管理人の選任申立てを行い、その管理人に相続財産を引き継ぐという手続きが必要になります。
相続財産管理人とは、被相続人(亡くなった方)の債権者等に対して被相続人の債務を支払うなどして清算を行い、清算後残った財産を国庫に帰属させる役目の人で、通常司法書士などが選任されるようです。
相続放棄の費用
申し立ての費用は、印紙800円、切手代、官報広告料3775円と、財産管理人の報酬、そして予納金、これは戻ってくるとは限りませんが、数十万円から、これが相続人の負担となりますので、申し立てにも費用がかかりります。
それ以前に、そもそも、相続放棄というのは、自分が放棄すると、相続権が子どもに移ってしまうため、関係する親族全員が放棄をしなければならず、トータルするとたいへんな費用と手間になってしまいます。
相続放棄の行える期間
相続放棄が行える期間は3か月です。
私の場合は、他に親族はおらず、費用がかかっても売却の必要があったため、事前にわかっていたら、相続放棄も考えたかもしれません。
ですが、ほとんどの方がそうだと思いますが、今、土地問題で挙げられているのは、限界集落のようなところではない、地方ではあっても、普通の町の普通の住宅地なのです。
たいていは売れないとは思っておらず、仲介に出してみた結果売れないとわかることが多いのです。
事前の準備がなければ、考えには浮かばないでしょう。
負動産時代 土地への夢はなくなった
記事を読んで思うには、これからはうっかり土地は買えない、もらえないということです。
「売れない」土地はもとより、「あるいは売れなくなるかもしれない」土地を、安易に住み続けてもいられないかもしれません。
親が亡くなって、残ったものが預貯金であれば喜べたのです。
少しでも親に感謝ができるようにするには、できるだけ早めにマイナスを残さずに売る、今残された道はそれだけです。