実家の売却は相続の前に行う、つまり親が生前中に行うのと、相続の後に行うのとではどちらが良いでしょうか。
これまでの売却は、通常は相続の後に行うと思われてきましたが、最近は生前が良いという意見が多くなってきています。
それぞれの良いところ、どのような場合には前、または後が良いのかを解説します。
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「実家の売却が相続の前と後か」という選択
目次
実家の売却はこれまでは相続が生じてから、そのあとというのが普通の考え方でした。
前という選択肢はそれまではなかったのです。
そもそも、親が生きている時に相続の話などとんでもないと思われていましたが、この頃は全く事情が変わったのです。
それでは、なぜ、ここにきて相続の「前」という可能性が出てきたのか、その理由から考えてみます。
「実家の売却が相続の前と後か」の理由
相続の前という選択肢が出てきた理由は下のようなことです。
・相続税で得をする
・介護費用を増やせる
・相続の争いを減らす
・空き家の期間がない 少ない
・空き家が売れなくなる前に売れる
こうやって見ていくと、やはり現代特有の背景がありそうですね。
一つずつ解説します。
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相続税で得をする
家を相続前に売却するメリットで有名なのが、相続税についての特例制度です。
親の生前に自宅を売却した場合には、譲渡所得から最高3000万円まで控除が受けられる特例があり、3000万円の特別控除の特例といいます。
不動産が3000万円以上だとすると、3000万円を差し引いた残りにのみ課税されることになるのでこの違いは大きいです。
ただし、これは、自分の家を持たずに親と同居している場合、俗に”家なき子”特例といわれる条件の下でのみ使える制度です。
また、3000万円がラインですので、不動産価格が安い場合には当然対象にはなりません。
あくまで相続財産によりますが、相続対策が必要だという場合には、相続より前に準備を始めるケースが多くありそうです。
介護費用を増やせる
自宅を売却すると、その代金は親の介護費用として使うことができます。
そして、そのお金で施設に入ったり、他の介護サービスを受けることも考えられます。
子どもが負担せずとも、介護資金を得られるというのは大きなメリットです。
今は特に高齢者は子供が定年を迎えても生きているのが当たり前になったくらい長命です。
老々介護という言葉は夫婦だけではなくて子どもにも当てはまるくらいになっていますので、介護費用の捻出は一方で切実な問題でもあります。
相続後の争いを減らす
相続財産である家が残ったままだと、相続が発生した時に財産分与が複雑になります。
誰かひとりが家をもらったら、他の兄弟は家を分けることができません。
そのため、家を相続した人は、家の代わりに代償金を各相続人に支払うのが理想的です。
支払いが快く進む場合ばかりとは限りません。
遺産に現金がない場合はトラブルが起きやすくなります。
よって生前に売却をして、売却代金は所有者である親が受け取り、そこから相続財産を配分するということになります。
誤解のないように言うと、親が生きている間に相続する遺産を分けてしまうということではありません。
あくまで売却益は親のために使われるということが前提です。
相続後に家を売却せざるを得なかった例
知人のAさんは両親と長年同居をしており、奥さんと両親の面倒を見ながら暮らしてきました。
そこで、両親が亡くなると、Aさんは同居していた家に当然そのまま住めるものと思っていましたが、他の兄弟は代償金の支払いを求めてきました。
つまり、他の弟と妹2人、計3人に900万円ずつ払うようにというものでした。
遺産の分配に不満が
そもそも、Aさんが他の兄弟に分けた預貯金の現金が少なすぎる、Aさんが勝手にもらったのではないかという不満が他の兄弟たちにあったようです。
元々親の預貯金は少ないものでしたので、Aさんはそこから代償金を支払うには不十分でしたので、家を売ってその代金を支払いに充てる他方法が亡くなりました。
親と長年住んで面倒を見てきたのは何のためだったのかと、相続後は毎日のように嘆くようになってしまったといいます。
生前の売却の背景
このような事態は、皆が法律に詳しくなったためにかえってトラブルが多くなったという事情が背景にあるようです。
以前なら、親と同居をしている人や長子が後を継ぐものとして、他の兄弟は辞退をするのが地方では普通に行われていました。
しかし、最近では長男や後継ぎという観念が薄れています。
また介護は程施設など第三者の手を借りるものとなったのと同時に他の相続人があまり感謝をしなくてもいいのではという風潮も出てきています。
また、相続権とその知識が以前より浸透していて、特に相続に漏れた人は遺留分の請求を行うということが不通になりました。
相続後のトラブルを避ける
私の親も遺留分を巡って兄弟で調停の場で争いになりましたが、もちろんこの場合は請求をした人は間違いなく相続分をもらえるようになっています。
なので、辞退するのが当然というところから、もらうのが当然というように考え方が変わってきたのだと思います。
当たり前のことですが、実際には介護負担は平等ではないため逆にトラブルの種となります。
あらかじめ遺言を書きましょうと助言されるのもそのためです。
ここまでは税金や相続に関するメリットでした。
この後は、実家の空き家に直接関するメリットです。
空き家の期間がない 少ない
親が施設に入ってしまい、そこから入退院を繰り返すと実家は空き家になります。
戻ることはまずない場合は、数年単位で空き家になってしまうことがあります。
その途中で売却をしようということもできなくはありません。
売却ができれば、空き家管理の負担はなくなります。
介護と同時に家の管理をするというのは、大変な負担ですし、親が戻れないのであれば維持の必要はありませんのでその時点での売却も良い選択でしょう。
生前でも健康が必須
ただし、親が認知症になったり、意識がもうろうとした寝たきりであるという場合には、もちろん家の売却はできません。
なので、親が生前に売る場合でも心身が健康であるときに限られますので、この場合はあらかじめの話し合いや準備も必要となると思われます。
空き家が売れなくなる前に売れる
空き家は今や全国に850万戸あるということがこれまでの統計調査でわかっていることです。
調査に漏れている空き家もあるため、実際はこれより多い数字になるでしょう。
そして空き家が売れないと言われて問題になっているほとんどは田舎、つまり地方で相続によって生じた家、すなわち実家です。
空き家を売るのに数年係と言ったことも珍しくなく、それでも売れればいい方で、売るのをあきらめて持ち続けている方も少なくありません。
そのため、最初から相続をしないという話すらあります。
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いったん相続をしてしまうと、何とかして売却をしなければいけないが、これは努力ではどうにもなりません。
なので、お住まいの地域が一体どのような状況なのかは早めに確かめる必要があります。
また、実家に住みたい兄弟や親族はいるのかも含めて話し合い、誰も欲しくない、つまり相続したくないと思われる結果になったときには、所有者である親が生きているうちに速やかに売却をするのが、苦労やトラブルを未然に防ぐための対策となります。
後からゆっくり考えて売ろうというのは、家がどんどん売れていて空き家などは見当たらないという地域だけの話です。
今どき空き家がないなどという所は地方ではどこにもないでしょう。
人口が減少している地域では家は余るばかりであり、築年の古い家は売れ残るのが普通だからです。
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相続前に売却した夫の実家の例
夫の実家は夫が住んでいる家と、母が住んでいる家の2軒がどちらも親の名義でした。
父の死後、夫は、親名義の家を売却、売却代金はその後買い替えた中古住宅の資金に充てました。
母が現在住んでいるもう一つの家は、兄名義に名義を変更しました。
つまり、2軒あった家を兄と弟に一つずつ先に与えたことになります。
それは母の決めた分与の方法なので子どもたちには異議はなく、、今後相続が生じた際にも母名義の不動産はなくしたため相続登記は必要ありません。
夫の実家のケースは、母自身も生前に目的をもって、一家が協力して売却をした好例だと思います。
相続と空き家売却のまとめ
相続より前に家を売るか売らないか、ここでは、相続より前に売った方がいいケースを主に紹介しました。
相続後に遺産分割協議を行って相続登記をするのがこれまでの標準的な順番でしたが、先に家を売却すると、遺産分割協議に家を含める必要はありませんし相続登記も不要です。
相続後であっても協議と登記は同じようにできるので支障ありませんが、家が売れない問題は早くから対策を始めるのが良く、生前の売却もその一つです。
売れればそれでよし、万が一相続が発生するまで売れないという時でも、少なくとも家の査定額を不当に高く見積もって、後から問題が起こりそうな分割は避けることができます。
またその間に仲介だけではなく買取や譲渡など他にも手放す方法を、生前ならば相続よりも前もって試すこともできます。
一番問題なのはやはり、地方の売れない家のケースですので、生前の売却を視野に不動産の価格を見積もってもらうことが必要です。
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