相続放棄で要らない土地を放棄できるのでしょうか。
山林の土地の所有権を放棄したいという人が、国が引き取るべきと裁判に訴えた例がありました。
残念ながら土地の放棄はできないということを改めて確認するという判決となりましたが、それでは相続放棄した際の土地はどうなるのでしょう。
相続放棄された土地
相続放棄で要らない土地を放棄できるのでしょうか。
相続放棄をするには、下のような流れで手続きが必要となります。
1. 家裁に相続財産管理人選任の申し立て
2. 家裁が管理人を選任
3. 管理人は売却に努める
4. 手を尽くしても売れ残った土地は国が引き取る
あくまで「売却」という手順を経て誰かがその土地を継承するというのが目指すところであって、所有者がいらないからといって、直ちに国が引き取るということにはなっていません。
※今後相続する土地については国家帰属の新法ができました。詳しくは下の記事から
相続放棄された土地も売却
つまりその場合は、売却の手続きをする人が所有者から管理人に変わるだけのことなのです。
そしてもちろん、売り手が変わっただけでは売れるとは限りません。
そうして最終的に国が引き取るのは、年間30~50件程度なのだといいます。
それでは、引き取らずに残った土地はどうなるのかというと「国に引き取ってもらえず、業務を終結」(管理人業務の司法書士)、そして事実上所有権は「宙に浮いたまま」ということになる。
つまり売れない土地は国も放置するしかないということになるのでしょう。
相続放棄で土地の放棄をする場合
個人が相続放棄をした場合の流れも上記と同じです。
しかし、相続放棄には注意点があり、思うほど簡単ではないことがわかりました。
- 土地だけの放棄はできない
- 土地の維持管理責任は継続
- 相続財産管理人の選任申立て
- 相続放棄には費用もかかる
どういうことなのか詳しく確認していきましょう。
土地だけの相続放棄はできない
土地の放棄が目的で相続放棄をしようとしても、土地だけの相続放棄はできません。
また、相続放棄の大きな理由の一つが借金ですが、借金だけの放棄といった選択的な放棄もできないそうです。
なので、被相続人の遺産全部の放棄を行うということになります。
財産が少しだけで、預貯金等限られたものであれば、それも行えるかもしれませんが、土地の他にも遺産が多くある場合には、相続放棄をするかどうかは慎重に考える必要が出てきます。
土地の維持管理責任は継続
もう一つ、土地の相続放棄をしても、驚いたことにそのままでは土地建物の維持管理は免れることはできないという点です。
管理の義務は引き続き負うことになるので注意が必要です。
【民法第940条】
相続放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。 出典:https://hourei.net/law/129AC0000000089
土地に何か不具合があったときには、相続放棄をしていてもその責任があるというのです。
その対策が下の管理人の選定です。
相続財産管理人の選任申立て
管理責任を免れるためには、裁判所に相続財産管理人の選任申立てを行い、その管理人に相続財産を引き継ぐという手続きが必要になります。
相続財産管理人とは、被相続人(亡くなった方)の債権者等に対して被相続人の債務を支払うなどして清算を行い、清算後残った財産を国庫に帰属させる役目の人で、通常司法書士などが選任されるようです。
相続放棄の費用
申し立ての費用は、印紙800円、切手代、官報広告料3775円と、財産管理人の報酬、そして予納金。
印紙や切手代はもちろんですが、納金に関しては戻ってくるとは限らないということです。
数十万円から平均すると50万円くらいになるといわれており、これが相続人の負担となりますので、申し立てにも費用がかかりります。
それ以前に、そもそも相続放棄というのは自分が放棄すると相続権が子どもに移ってしまうため、関係する親族全員が放棄をしなければならず、それもトータルして考える必要があります。
相続放棄の行える期間
相続放棄が行える期間は3か月と決められています。
一見長いようですが、人が亡くなった後ですので、他の手続きも立て込むために決して十分な期間とはいえません。
あれこれしているうちに期限を過ぎてしまうことももちろんあります。
また、もう一つ、ほとんどの方がそうだと思いますが、今土地問題で挙げられているのは、限界集落のようなところではない地方ではあっても、普通の町の普通の住宅地が多いですね。
たいていは売れないとは思っておらず、仲介に出してみた結果売れないとわかることが多いのです。
それから相続放棄をしようと思っても既に期限は過ぎています。
なので、できれば、親が生きているうちに売却に出して、売却期間を長くとることがおすすめです。
3カ月ではなくて、年単位とすることで成約の可能性が高まりますし、その間にそれでも売れないとなったら、その時に相続放棄を考えればいいからです。
負動産時代 土地への夢はなくなった
様々な事例に察するたびに思うの、これからはうっかり土地は買えない、もらえないということです。
「売れない」土地はもとより、「あるいは売れなくなるかもしれない」土地を、安易に住み続けてもいられないかもしれません。
親が亡くなって、残ったものが預貯金であれば喜べたのです。
少しでも親に感謝ができるようにするには、できるだけ早めにマイナスを残さずに空き家と土地を売る、今残された道はそれだけです。
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