私の母は、分譲マンションに暮らしています。また、夫の実家は戸建てを2戸持っています。
私たち夫婦は、そのうちの一軒に暮らしていますが、夫の父名義なので、いずれはそれらマンションか戸建てのうち、どれかを継ぐか、または、住み替え先を探すか、どちらかを選択しなければなりません。
その際、どういう住居を選択するのが、ベストの道でしょうか。
老後は賃貸マンションで、との意見
生前に土地家屋を処分したいと考えておられる方のご意見を拝見しました。
「負動産の時代2」10月2日付朝日新聞フォーラムより。
子供に残せる財産と思い購入しましたが、それは親だけの夢であり、さらに一人になった親は不動産とともに子供にはお荷物となりました。
すべての処理が自らできるうちに処分し、都内に戻り、賃貸マンションで暮らす方向で考えています。(山梨県・60代女性)
「一人になった親は不動産とともに子供にはお荷物」のくだりを読むと、悲しい気持ちになりますが、ここまで考えてくれるお母さんはなかなかいないでしょう。
不動産の処分など、高齢になっては判断がつかないこともありますし、どの不動産屋に頼むか、実際事務所を訪ねたり、現地を案内したり、必要な書類を役所に行って揃えたり、というようなことは、体が弱ってからではとてもできません。
せいぜい60代が限度だと思います。不動産がらみの場合は、早めに準備をした方が良さそうです。
万が一、病気や認知症などにならないとも限りません。そうなった場合は、後見制度や家族信託といった手続きを得ないと、売却もできなくなります。
駅近分譲マンション優良物件との比較
もうひとつ別なご意見は、マンションへの住み替えという最近の風潮です。
最近よく耳にするのは、「住宅すごろく」の話だ。昔の「あがり」は庭付き一戸建てだったが、ここ数年は戸建てを売却し、駅近くの分譲マンションに移り住むのが「ゴール」らしい。(東京都・50代男性)
上の場合は、賃貸ではなく、分譲マンションとのことですが、駅近くであれば容易に売却できるという前提でしょう。
しかし10年後、20年後、あるいはそれ以上たった時に、よほど便利のいいところはともかく、マンションを売ることはできるのでしょうか。
いったい、賃貸の家賃と分譲マンションの価格を引き比べた場合は、どちらが得なのでしょうか。住居として選ぶには、まずそれを知らないといけませんね。
賃貸の方が有利という専門家
住宅ジャーナリストの榊淳司さんは次のように言っています。
都内のいいマンションは約30年分の家賃分を出さないと買えない状態になっている。これから買うのはなるべくやめた方がいい。(週刊朝日9月29日号)
なお、投資用としてマンションを持っている場合については
高値のうちに早く整理すべき。年をとると家を借りられなくなると心配する人も居るが、これからの日本では人口が減り、家は余る。
また榊さんは投資用マンションについても「今マンションを買って長期ローンを払い続ける方がリスクが大きい」として、これからの投資を警告しています。
資産価値なしの土地に新築する意味
上の榊さんの「買わない方がいい」との意見は、今、所有している住まいについても同じことでしょう。
中高年者なら、今ある土地に家を建てたとしても、そこに30年住めるかどうか。
そもそも土地の価値が下がるとわかっていて、そこに新築する意味があるでしょうか。
今までなら、家を建ててお金を使っても土地の値段が値上がりするので、たとえば30年経ったとしたら、支払った金額以上になるということが予想できたわけです。
持ち家が得で、賃料は払い損、土地と家は売却してお金に変えることもできると思われていた。
年齢に関わらず、多少無理をしてでも家を建てよう、マンションを買おうということができたのは、その後の資産価値が信じられていたからです。
今は到底同じような考えは持てなくなりました。
所有の土地に新築したとしても、お金を使ったら使っただけなくなるだけです。
そして万が一の時に売れるだろう頼みの綱としても当てにならない。
相続後に売れという、子どもへの「担保価値」もなくなれば、介護費用の肩代わりをさせるわけにもいきません。
つまり、土地に資産価値がないということは、現金をその分持っていなければ、老後は安泰ではなくなったということになるのです。
持ち家志向は根強いが、一生賃貸で暮らすのも選択肢だ。高齢者でも借りられるマンションは増えているし、公営住宅もある。(同上)
最初の投稿者の卓見と合わせて、よりよりライフプランを見定めていきたいものです。