スマートデイズ社の運営していたシェアハウス、かぼちゃの馬車問題。負債を抱えたままのオーナーたちはスルガ銀行の提訴の方向で、それらの投資者オーナーに融資を続けていたスルガ銀行の内部調査が続いています。
そろそろ「Xデーはいつか」との声も聞かれる中、逆にオーナの方が、建築会社に訴えを起こされるという出来事もあります。
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オーナーがホーメストに建築代金の支払い拒否
これは物件の建築を請け負っていた建築会社が、シェアハウスオーナーに建築代金の完済を求めたということで、スルガ銀行・スマートデイズ被害弁護団によって明らかになりました。
オーナーを提訴したのは都内の建築会社(株)ホーメスト。 建築代金は総額4000万円で、オーナーは物件の着工時と上棟時、竣工時の3回に分けて、各時点で分割で支払う予定だったが、最終の3回目に残金1340万円の支払いを拒否したというものです。
それについては、オーナーの方は、支払わない理由として、スマートデイズ社によって建築会社が既にキックバックを受けているという事を主張しています。
ホーメストのキックバック分とは
つまり、「(請負代金の)50%以上が業務委託費としてスマートデイズにキックバックされている」ということが一つ。そして、建築会社の責任も問うべき」だというのがオーナー側の言い分です。
キックバックとは、不正な払戻し、リベートのことですが、このオーナーは会見にも出席し、
「キックバックの件をホーメストに尋ねたところ、相当額がスマートデイズに流れていたことを認めた。すでに3分の2(2660万円)は支払いを終えており、本来払うべき金額は支払っていると考えている」
と述べています。
そして、弁護団は建築費に関しても、業者が「市場価格より不当に高額な契約をオーナーと結んだ」としています。
ホーメスト側の提訴の理由
一方、ホーメスト側は提訴の理由を「「建築代金の回収ができず資金不足が生じ一部の仕入先に支払遅延が発生」としています。
なお、ホーメストの施行したシェアハウスは全部で70棟であるということです。
支払いはともかく、これらの大量の建物自体、これからどうなってしまうのでしょうか。
大量放出 シェアハウスの建物自体はどうなる?
倒産した運営会社関連のシェアハウスは、既に売りに出されているといいますが、一時に多量の物件が出たため供給過剰の状態だそうです。
シェアハウスそれ自体は、決して需要がないものではなく、テレビドラマの影響もあり、若い世代にリーズナブルであると同時に、むしろおしゃれなものとしての印象もあるといいます。
どんな不動産物件でも、立地が良く、低額で利用できるとなれば、必ず希望する人はいるでしょう。
しかし、スマートデイズ社の「かぼちゃの馬車」は少し特殊な構造の建物であったようです。
人材あっせんによる収益?
通常、賃貸住宅というと、そこにある程度の年数を住むということが予想されます。
ホテルのように、直ぐに出ていって、借主が入れ替わりたり変わりするというようなものではない。だからこそ、予想される収益を元に家賃保証の金額というのが決まるのです。
しかし、スマートデイズ社の考えるシェアハウスでの収益とは、家賃ではなくて、入居者に仕事を紹介する、職業の人材斡旋による収益を予想したものでした。
スマートデイズ社は、賃料ではなくて、その収益によって、家賃保証ができるということをオーナー側に説明したといいます。
シェエアハウスのオーナーというと、一般に経験の浅い、正業が会社員などの副業と思われていますが、そういう人ばかりではなく、中には投資の経験者など、投資リテラシーの高いオーナーもいるのです。
つまり、賃貸料に頼らない投資物件、そして、上京する若い世代の就職支援など「社会貢献になる」といわれて、新しいビジネスモデルとして、その点に魅力を感じたという人までさまざまであったようです。
長期の賃貸には適さない内部
しかし、そのために、かぼちゃの馬車の内部は、通常のシェアハウスとも違った作りになっており、あくまで短期滞在の宿泊所に適した構造です。
部屋が狭い、お風呂はなく各階にシャワーブースが一つあるだけ、キッチンも最低限なら、居住者同士の触れ合いのためのラウンジなどパブリックスペースもないなど。
要は仕事を決めてできるだけ早く出ていってほしいというような建物で、そこに長く住むという想定をしていなかったようなのです。
そのような建物が人気を得られたかどうかは、これまでの経過が示す通りです。検討する間もなく、次々に新築されてしまい、結果が悪くてもそのまま 作り続けられてしまった・・・
そのような建物をどうしたら無駄にせずに活用できるでしょうか。
リフォーム前提での売買か
建物をこれから通常のシェアハウスとして利用するには、通常に賃貸に適したリフォームが必要となりますので、実際の建物以上の価格に加えて、業者のキックバック分ととして当初に設定された価格よりももちろん値下げは否めません。
それ以上に、一気に大量放出されてしまったシェアハウスに、スルガ銀行のようなリスクある物件にも融資をする銀行がなくなった今では、投資物件としての売却はいよいよ難しくなりそうです。
そしてまたそれは、空き家のまま朽ちていく、地方の物件をも思い起こさせるものではありませんか。
いずれにしても、今後は都心を含め人口は減少、空き家は急激に増加し、マンションは下落。
賃貸も競争激化の予想がついている今では、シェアハウスもまた田舎の売れない物件同様、きわめて厳しい状況と思われなくはありません。
逆にそのような社会情勢だからこそ、社会貢献としてのシェアハウス投資には、大きな夢があったのだろうということも理解できますが、今となっては、利用者のない新築の建物に、ため息をつく他ないようです。