週刊東洋経済誌に田舎暮らしを夢見て移住をしたら、思わぬ目にあったという家族の例が載っていました。
地方は地域のつき合いが難しいとも以前から言われています。一体どんなことが起こったのでしょうか。
スポンサーリンク
夢見ていた田舎暮らし
取材を受けた夫婦は東京から山梨県にある築60年の古民家に移住をしました。やがて生まれる子どものために開放的な環境で育てたかったといいます。
新宿までは150キロの距離、ITエンジニアの夫は月に何度か新宿の本社に通えばいいというような、毎日出社の必要がないという、移住するにはぴったりの勤務だったといえます。
そのまま楽しく住めれば何の問題もなかったでしょう。
ゴミが出せない
しかし、最初の問題はゴミが出せないということでした。近くには、大きな囲いのゴミ集積所があって、Aさんは市の有料のゴミ袋にゴミを入れてそこに置けばいいと考えていたと言います。
ところが、「組に入っていない人はそこには出せない」と言われたそうなのです。
これは、私も一度引越し後に同じ目に会ったことがあります。組というのは、昔の言葉で、今なら町内会と言いますが、町内会では通常のごみや資源ごみなどに対して、掃除当番というのを持ち回りでやることになっています。なので、それをやらない人は出せないということになるのです。
実際、有料のゴミ袋を使用しているので、市が受け付けてくれないということはないのですが、「出せない」となれば、出せないことになってしまうという、どうしようもないところがあり、最初に問題になることは、この「ゴミ」の問題が大半です。
自治会の入会も拒否
そこで別な集積所に出してくれ、と市が言ったので、ゴミ問題はそれはそれで片付きました。
さらに、保育園のバスの割り当てをめぐり、改善を求めたAさんは、「呼び出し」というものを受けたそうですが、それが人気の少ない神社の境内や公園に来るように言われて、そこで文句を言われるという「恐怖」を味わうことに。
他の人は怖いので皆黙っていると言います。そして、一度でも、今までの村の慣習やしきたりを乱すようなことをした場合が「村八分」ということになってしまうのです。
大分県の村八分例
大分県北部の小さな集落では、訴訟に発展した例があります。
兵庫県の男性Bさんは、母親の世話のため、実家に帰省してUターン移住。集落は14戸の小さなものです。
対立のきっかけは、国から農家に出る補助金の配布方法で、自治会の役員らと対立が起こったのが最初だと言います。
Bさんは住民票がないことを理由に自治会から外されて、市報や行事の連絡も受け取れなくなりました。
住民票を移して晴れて住民となったが
住民票を移したBさんは加入を願い出ましたが、自治会は拒否。
それ以外に「村八分」に当たる何があったのかは詳しくはわかりませんが、Bさんは脅迫の疑いを理由に刑事告訴に踏み切りました。
Bさんの自治会加入をめぐっては、「男性が入るなら、自分は抜ける」という声もあり、根深い感情的な対立が起こってしまったようです。
一方Bさんは、「この5年間、毎日孤独だった」と述べ、その心境が告訴の理由であったようです。
「村八分」を禁止や勧告はできるが
県弁護士会は、地域に住所をもつ個人の自治会加入を正当な理由なしに拒むことを地方自治法が禁じていることから、「村八分」だと批判、「排除は明らかな人権侵害」として、加入を認めるよう、また行事の連絡などをするよう勧告を行ったと言います。
地域では、災害や急病などの場合を含めて、隣近所の協力が必要な場合も必ずあります。
勧告を受けて、「ゴミが出せる」とか「回覧版が来る」などということは、これまで通り行われるようになるかもしれませんが、感情的な対立を抱えたまま、そこに住むということは難しいことではないでしょうか。
増加する相談
移住先の紹介などを手がける認定NPO法人「ふるさと回帰支援センター」(東京)には昨年度、都市部から地方への移住相談が約2万7700件あり、約7710件だった2011年度の4倍近くにもなっているといい、けっして稀な例ではないことを伺わせます。
また、人にも地域にも容易に溶け込める人の性格というのもあり、誰でもが、田舎への移住に向いているというわけではないかもしれません。
上のAさんの場合は、近くにある、移住者が多い別荘地域に転住して、問題はそれで解決したといいます。
が、田舎暮らしをしたいと思った時には、ある程度の心構えが必要なのは間違いありません。
田舎暮らしのポイント
田舎暮らしで心がけておいた方がいいことは
・お祭りや掃除当番など共同作業が多い
・古い地域ほど古い「しきたり」、そこでの不文律や順列がある
・数代前からお互いを知ってるという環境なので、プライバシーが少ない
・挨拶以上の気配り、時に物品より労力が必要
などですが、中々難しいことでもあるので、上のAさんの例のように、移住者同士で住めるエリアがあるというのなら、そういうところを選んだ方が、苦労をしないで済みそうです。
いずれにしても、移住を決める前には、どの地域がどのようになっているのかの入念な下調べが必要となりそうです。