スルガ銀行(静岡県沼津市)のシェアハウス投資向け融資で多数の不正があった問題で、同行の第三者委員会(委員長=中村直人弁護士)は7日、調査報告書を公表しました。
現社員の証言で、パワハラの内容が報告され、驚きを呼んでいます。そのようないびつな社内態勢は、事実上の業務執行責任者だった、岡野光喜会長の実弟、故岡野喜之助副社長が構築したとされました。
また、新しく社長となった有国氏についても「一定の経営責任は免れない」としています。
「最も重い経営責任がある」と指摘された岡野会長は、これまで一度も謝罪はせず、今回の会見にも姿を見せませんでした。
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スルガ銀行に蔓延するパワハラの実態と内容
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第三者委が公表した調査報告書には、行員らの壮絶な体験談がつづられており、見た人の驚きを呼んでいます。
中でもひどいと思われるのは、社員の融資の成績が伸びなかったときに叱られた例でした。
恫喝に「オマエの家族皆殺し」
「数字ができないなら、ビルから飛び降りろと言われた」
「上司の机の前に起立し、恫喝(どうかつ)される。机を殴る、蹴る。持って行った稟議(りんぎ)書を破られて投げつけられる」
「ものを投げつけられ、パソコンにパンチされ、オマエの家族皆殺しにしてやると言われた」
「首をつかまれ壁に押しあてられ、顔の横の壁を殴られた」」
「死んでも頑張りますといったところそれなら死んでみろ、と言われた」
営業担当の執行役員 不正への関与を認定
衰退する地方銀行の中でも異例の高収益を支えてきたのが、不動産に投資する個人向けのローンでしたが、それを担う個人営業担当の執行役員1人も今回、不正への関与を認定されました。
パワハラを主導したのは、この役員だということです。
個人営業部門ではこの役員の元で過大な営業ノルマが設定され、支店長以下の職員に達成に向けたプレッシャーがかけられ、その中で不正が横行したといいます。
収益を担う個人営業部門の発言力は強く、審査部門が融資に否定的な意見を述べても、営業部門幹部らによって押し通されました。
融資99% 審査部より営業が強い構図
審査担当者が「家賃設定に疑義あり」などと否定的な意見を残しながら融資された案件は200件超もあり、シェアハウスなどの融資承認率は2009年度前後は80%台だったが、14年度下期以降は99%超。
ほとんど審査なしに、融資の案件が通されていました。
主導は故岡野喜之助副社長
いびつな社内態勢は、事実上の業務執行責任者だった、岡野光喜会長の実弟の副社長が構築したとされた。こうした状況は、岡野会長ら経営陣の間で共有されることはなかったという。
米山社長が、5月の最初の記者会見で「わからない」と言った通り、第三者委の中村委員長は経営陣について「大事な情報はなんにも上がってこない。雲の上で下界を見ていた」と語っています。
報告書は、取締役らが個別の不正を具体的に知り得た証拠はないとしつつ、経営責任がある、と認定。
岡野喜之助副社長は、3年前に一度、融資の中止を指示しましたが、社員がダミー会社を設立して、融資を継続。
副社長自身が16年に急逝、、改革は先送りにされました。
なお、社長に就いた有国氏についても、第三者委は「一定の経営責任は免れない」としています。
スルガ銀行の処分は?
麻生太郎金融担当相は7日午前の閣議後会見で 「法令を守るのは当然の話であり、経営管理に問題があるなら適正に対応していく」と発言しました。
金融庁は第三者委の報告内容も踏まえ、スルガ銀行に対する行政処分の検討をすることになります。
業務改善命令に加え、一部業務停止命令も避けられないかもしれません。
しかし、金融庁内にはあまりに厳しい処分には慎重論もあり、金融庁幹部の一人は、「まっとうに立ち直らせることが行政処分の狙いだ。悪質な不祥事があったから重い処分を下せばよいわけではない」と述べているということです。
スルガ銀行の今後については、引き続き金融庁の発表が待たれるところです。