シェアハウス投資

スルガ銀行 第三者委員会調査報告書の見られるサイト 要約版内容掲載

更新日:

スルガ銀行(静岡県沼津市)のシェアハウス投資向け融資で多数の不正があった問題で、同行の第三者委員会(委員長=中村直人弁護士)は7日、調査報告書を公表しました。

今回は、その調査結果報告書のご案内です。

 

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調査結果報告書のあるサイトご案内

調査結果報告書は、全部で3部あり、そのすべてが、スルガ銀行のホームページからダウンロードができ、誰でもダウンロード、閲覧が可能です。

全文だと338ページあるという長いもので、詳細な結果が記されています。

スルガ銀行のサイトと各ファイル

スルガ銀行 調査結果報告書掲載ページ

2018/09/07 15:30 スルガ銀行
第三者委員会の調査報告書の受領と今後の当社の対応について(3ページ)
https://storage.googleapis.com/surugabank/20180907_1.pdf
 第三者委員会調査報告書(要約版)(17ページ)
https://storage.googleapis.com/surugabank/20180907_2.pdf
第三者委員会調査報告書(全文)(338ページ)
https://storage.googleapis.com/surugabank/20180907_3.pdf

いずれも長いものなので、以下に17ページある要約版から、一読して内容がわかるように、重要と思われる部分を以下に抜き書きします。

特に見てほしいところ

特に見てほしいところ、新しく知り得たところ等は以下のところです。

偽装の件数と関与の認定

偽装が疑われる件数(資料の数)は、2014 年以降で 795 件であった
偽装を黙認した融資業務を行うことに多くの営業職員が関与し、かつ、一部では営業職員自らが偽装に積極的に関与していたものと認められる。
所属長(支店長)レベルでも、一部の偽装行為については、そもそも所属長が直接関与していたことが認められる。

シェアハウスのリスク判断

・収益不動産ローンにおいて、レントロールの疑義、空室リスクの重大化、満室想定賃貸収入の 70%を返済原資とみなすことの危険性、担保評価額の実勢価格との乖離傾向、家賃保証への過度な依存による不適切な投資判断等の問題が見受けられるほか、収益不動産ローンの延滞案件のほぼ全てで自己資金確認資料が架空・偽造であったこと。

・シェアハウスローンには次のような重大なリスクが存在したにもかかわらず、スルガ銀行ではその取扱いが開始された当初、既存のアパートローン事務取扱要領が適用され、その後、資産形成ローン事務取扱要領が適用されることとなり、独自の新商品と
しての審査が行われなかった。

・サブリースが設定されるとしても、期間が 5 年や 10 年の有期であるなど、35 年に及ぶ長期間の返済期間をもともとカバーしていない。

岡野副社長の関与

・経営責任については、「本件の構図」を作り上げ企業風土の著しい劣化を招いた主たる責任者。
・2015 年には岡野副社長の指示でスマートライフとの取引が禁止されたものの、その指示は口頭でなされたのみで、実際には別会社による迂回がなされていた。審査担当者においても、現況確認をしたところ、カボチャの馬車の表示があり、スマートライフとの取引が実質的に継続されているのではないかとの疑いが徐々に芽生えていったようであるが、営業担当者への指摘を十分には行うことができず、結果的に、スマートライフがサブリース会社となっているシェアハウスローンが多数継続されることとな
ってしまった。

行員の特異な意識

・収益不動産ローンについては、物件の評価が出てしまえば融資額は固まるので、債務者に貸すという感覚が希薄になってしまった。

・形式主義の結果、書類は債務者から徴求するよりも、融資の事務処理に慣れている業者から徴求した方が効率的であるから業者からの徴求がスタンダードとなり、行員は債務者と金銭消費貸借契約の締結の際にしか顔を合わせないこととなった。

・また形式主義の結果、「最初から融資条件を業者に教えておけば、融資条件を充たすような案件しか持ち込まれないから、否決となる案件が減って、銀行側の作業に無駄がない」という発想で、業者への審査条件の暴露が盛んに行われ、業者側が審査条件に合うようなエビデンスを偽装してくる工作を行うことを可能にした。

・スルガ銀行の行員からすると、例え偽装が疑われるエビデンスが業者から提出されてきたとしても、①そうした業者からの依頼を拒絶して業者が離れていけば、自らのノルマの克服が極めて困難になる上に、②自分が断ったとしても他の支店が取り上げてしまえば、結局はスルガ銀行の貸付債権になり、かつ、ノルマを達成したとして賞賛されるのが他の支店になってしまうという思考回路に陥ることになり、そのような案件でも断らずに取り上げることを正当化してしまう素地が産まれた。

・(多数の不正・不当行為等が)それが会社のためではなく、また顧客のためでもなかったこと。

関係者の法的責任・経営責任の有無

岡野会長

・ 個別の不正、又はシェアハウスローンに係るリスクを具体的に知り又は知り得た証拠はない。
・一方で、以下の点(以下、併せて「本件問題発覚後の諸行動」という。)に関しては、善管注意義務違反(一部法令違反)が認められる。

故岡野副社長について

・1998 年 4 月から 2016 年 7 月に逝去するまでの間、長年にわたり、スルガ銀行の業務執行全般における実質的な最高意思決定者であったが、①営業を極端に重視した人事、②過大な営業目標、③営業重視かつコンプライアンス軽視の組織風土の形成、④審査部門の弱体化、その他により「本件の構図」を構築してしまった主たる責任者であり、問題となり得る点は少なからずある。
・しかしながら、これらは現在の役職員らのインタビュー結果に依拠していること、既に逝去されており弁明の機会を付与することができないこと、本人に対する責任追及の余地がないこと等に照らし、当委員会としては法的責任についての判断を留保する。
・ ただし、経営責任については、「本件の構図」を作り上げ企業風土の著しい劣化を招いた主たる責任者であって、優に認定できる。

岡崎氏(元専務取締役)ついて

 個別の不正を具体的に知り又は知り得た証拠はない。(中略)「本件の構図」を産んでしまった要因のうち、営業本部と経営陣との間の情報の断絶を作出したのは岡崎氏に他ならず、その経営責任は、故岡野副社長に次ぐ重いものである。

有國取締役

営業邁進の厳命、審査部に対して審査を通すよう強く要求したこと等は、直ちに注意義務に違反するとまではいえないものの、企業風土の劣化を招く行為であったことは否定できず、スルガ銀行で生じた企業風土の著しい劣化に寄与した度合いは大きい。

 

スルガ銀行 第三者委員会調査報告書(要約版)

以下は17ページある要約版の方です。「中略」「省略」と記した以外ほぼ全文です。

不正行為について

債務者関係資料の偽装

 スルガ銀行では、シェアハウスローンを含む収益不動産ローンにおいて、10%の自己資金を投資家に要求する運用となっていたため、10%の自己資金を用意できない投資家や当該投資家に不動産を販売したい業者が、10%の自己資金があるように偽装する工作が行われた。

また、不動産購入後も一定程度の財務力を有していることが審査に当たって重要視されることを踏まえて、不動産購入後も相応の金融資産を有しているように見せるための自己資金の偽装も同時に行われた。

 収入関係資料を偽装して返済原資を多く見せ、本来の限度額を超えた融資を可能とするための偽装も行われていた。
 上記以外の債務者関係資料に関する偽装として、団体信用生命保険の加入申込みにおける診断書の偽装等が認められた。

物件関係資料の偽装

 返済原資となる賃料収入を多く見せて融資限度額や担保評価額をつり上げるため、中古マンション等について、レントロールやサブリース契約を偽装する行為が行われていた。また新築の収益不動産についても、同様の理由で、現実的な家賃設定額の見込みを超えた家賃を設定することが行われた
 レントロールは物件から得られる収入のみであるが、これ以外に、稟議申請に当たって必要となる物件購入後の事業計画についても偽装が行われた。
 レントロールの偽装工作を確実にするために、虚偽の賃貸借契約を作成する行為や、ウェブ上に掲載されている空室についての賃借人募集の情報を、業者に命じて取り下げさせる行為も発見された。
 行員の中には、行内の物件の調査者が現地に向かう前に、業者に対して調査者が現地に向かうタイミングを教えることも行われた。これにより、調査が行われる物件について、業者が(空室が少なく見えるように)カーテンを引くこと等の偽装工作を行うことが可能となっていた
 このほか、物件関係資料に関する偽装として、建物の検査済証や確認済証の偽装が疑われる案件も認められた。

売買関連資料の偽装

 スルガ銀行では、事実上、売買価格の 90%が融資限度額とされていたため、このルールを潜脱するために、スルガ銀行に提示される売買価格の約 90%が実際の売買価格となるようにして、虚偽の価格を記載した売買契約書が提出されていた。同じようなやり方として、売買契約を高い価格で締結しておいて、後に減額の覚書を作成するというやり方も存在する。
 自己資金がない者について、通帳の代わりに、手付金等の領収証を偽装することも行われていた。書類の偽装の蔓延

 当委員会が行ったフォレンジック調査及びインタビューにより、多くの行員が偽装に関与していることが認められた。
 フォレンジック調査の結果として検出された偽装が疑われる件数(資料の数)は、2014 年以降で 795 件であった。
 当委員会によるアンケートとは別にスルガ銀行が行ったアンケートでも、多くの行員が偽装行為について、自ら偽装したか、偽装を黙認したか、又は偽装の疑いを持ちながら融資を実行したと回答した。
 取扱案件が多かった業者とのやり取りに着目して行ったフォレンジック調査においても、当委員会が調査した限りで偽装が疑われるやり取りが含まれる電子メールが数多く検出された。
 以上から、正確な偽装行為の件数を数えるのは不可能であるものの、書類の偽装が収益不動産ローンの全般に蔓延していた事実が認められる。

行員の偽装への関与

 当委員会が行ったフォレンジック調査、当委員会による行員アンケート、スルガ銀行のコンプライアンス部によるヒアリング及び当委員会によるインタビューにおいて、パーソナル・バンクにおいては、偽装を黙認した融資業務を行うことに多くの営業職員が関与し、かつ、一部では営業職員自らが偽装に積極的に関与していたものと認められる。
所属長(支店長)レベルでも、一部の偽装行為については、そもそも所属長が直接関与していたことが認められる。また、それ以外の者も、偽装を事実上黙認していたか、又は偽装の存在を知りながらも自らが現認せずに済むようにしていた(見たくないものを見ないようにしていた)かのいずれかであったと認められる。
 パーソナル・バンク所属の執行役員においても、1 名については偽装行為に直接関与していた事実が認められた。またそれ以外の執行役員についても、比較的最近(5 年以内)、所属長のポストを経験しており、上記の所属長と同様、偽装を事実上黙認し
ていたか、又は偽装の存在を知りながらも自らが現認せずに済むようにしていたかのいずれかであったと認められる。

個別の不正行為等

 抱合せ販売
 スルガ銀行においては、営業本部から各支店に対して、(シェアハウスローンに限らず)収益不動産ローン(有担保)全体について、無担保ローンの抱き合わせ販売が強く奨励されていた
 横浜東口支店では、有担保ローンと無担保ローンのセット販売率が他の支店と比べても高かったが、これを実現するため、スマートライフに対して、無担保ローンをセットにした上でシェアハウス案件を進めるように要請していた。
 上記以外に定期預金や保険の契約についても、個別事情を勘案することなく機械的に抱き合わせ販売が行われていた。
 横浜東口支店は、特にシェアハウスローンについて、金銭消費貸借契約上の根拠がないにもかかわらず、スマートライフに命じて繰上返済を防止することの協力を求めていたことが認められた。
 スルガ銀行の営業店においては、物元業者と客付業者をマッチングさせることによって、多くの融資案件を実現させていたが、一部の行員は、業者同士のマッチングを超えて、不動産業者に対して個別に不動産を紹介する行為も行っていた。
 営業本部の各支店では、審査部によって取引停止処分となった業者(チャネル)について、「ハコ」と呼ばれる別の法人を介して関係を継続する行為が公然と行われていた。

不正行為等の温床を醸成する行為

 スルガ銀行では、行員が業者に銀行の審査条件(どのような案件であれば審査が通るか)を暴露する行為が行われていた。
 シェアハウスローンに限らず収益不動産ローン全般において、行員がやり取りをするのは専ら業者であり、行員が債務者と面談するのは金銭消費貸借契約の締結時のみであるのが常態化していた。そのため、ローンの内容の説明や書類の受領は、全て業者
を通じて行われた。
 スルガ銀行では、特に遠方にいる債務者の場合、スルガ銀行の行員が債務者の居住地の近くまで赴いて、ファミリーレストラン等で金銭消費貸借契約の手続を行う、「出張金消」と呼ばれる運用が頻繁に行われていた。出張金消に当たっては、融資の案件を
アレンジしているチャネル(業者)が行員に対して交通費を支払う取扱いが定着していた。

 当委員会が行った行員アンケートで、キックバックの受領を自ら認める行員は存在しなかったが、金銭を受領している疑いがある行員(退職者を含む。)については複数の回答が寄せられた。しかし、当委員会として、それらの行員(とりわけ退職者)から
預金通帳の提出等を求める権限まではないこともあり、それらの者が実際に業者からの金銭を受領していることの確証までは取得することができなかった。

 審査体制の問題

 審査部内の融資管理部は、延滞事案における回収等を行っており、その職務を通じて、収益不動産ローンの融資基準や審査体制について、次のような問題点を認識し、岡野副社長との間で開催していた「出口から見た気づき」の会議で指摘していた。
しかし、当該会議で指摘された問題点は審査部内でも共有されておらず、また、岡野副社長以外の経営層にも届いておらず、収益不動産ローンの融資基準や審査体制の検証を促すきっかけとして十分に活用されなかった。
事後的に見れば、当該会議で指摘された問題点が審査部内や営業企画部内で真摯に検討され、また経営会議や取締役会でも取り上げられるなどしていれば、スルガ銀行の審査体制が早期の段階で改善されていた可能性がある。

 収益不動産ローンにおいて、レントロールの疑義、空室リスクの重大化、満室想定賃貸収入の 70%を返済原資とみなすことの危険性、担保評価額の実勢価格との乖離傾向、家賃保証への過度な依存による不適切な投資判断等の問題が見受けられるほか、収益不動産ローンの延滞案件のほぼ全てで自己資金確認資料が架空・偽造であったこと。
 2016 年 4 月 18 日の「出口から見た気づき」の会議資料では、シェアハウス案件の動向を今後調査する予定である旨の記載がある。この記載は、当時、横浜東口支店で所属長が変わった直後にシェアハウスローンの融資実行額が急激に伸び始めており、
それが融資管理部にとって異常値として不審に映ったことによるものであった。

 収益不動産ローンのリスクとして、①返済原資(年間所得と賃貸収入)の変動リスク、②収益還元法による担保評価額が実勢価格と乖離しがちであること、③適切な判断能力を欠いた顧客による収益不動産投資が見受けられること、④不良チャネルによる不適切勧誘や不正行為の可能性があること、⑤家賃保証・サブリースの過信などがあること。
 シェアハウスローンには次のような重大なリスクが存在したにもかかわらず、スルガ銀行ではその取扱いが開始された当初、既存のアパートローン事務取扱要領が適用され、その後、資産形成ローン事務取扱要領が適用されることとなり、独自の新商品と
しての審査が行われなかった。審査担当者のなかには、シェアハウスローンの取扱いが開始された当初の頃から、そのビジネスモデルの合理性を疑っていた者が複数いたようであり、そうであればなおさら、シェアハウスローンを独自の商品とみなして新商品の検証を実施すべきであったといえる。

 返済原資の変動リスク

シェアハウスローンでは、「年間所得の 40%+満室想定賃貸収入の 70%」をもって返済原資とみなし、その水準までの年間返済額を許容する融資基準が適用されていた。しかし、30~35 年等の長期間にわたって、現在の年間所得が維持されることは現実的でない。また、満室想定賃貸収入の 70%についても、満室想定賃貸収入から30%を減じることで、空室リスク、家賃下落リスク、修繕費等の負担、固定資産税等の負担を見ていることになるが、満室想定賃貸収入のわずか 30%でこれらのリスクや費用負担を全て考慮しきれているのか懸念が残る。
実際にも、直近の状況で、物件完成済みかつ入居状況の確認が完了した物件の約半数において、シェアハウスの入居率が 50%以下にとどまっているなど、満室想定賃貸収入に対する 70%の掛け目が空室リスクを考慮するものとしては不十分であったことが事後的に明らかとなっている。

収益還元法による担保評価額と実勢処分価格との乖離

シェアハウスローンでは収益還元法による担保評価額の 100%までの融資が許容されていた。特にシェアハウスについては、建物が特殊な構造であるため、市場のニーズに合わずシェアハウスのビジネスモデルそのものが崩壊した際には、担保実行時の処分価値も大幅に下落することが見込まれ、収益還元法での担保評価額が担保実行時の処分価値の実勢から乖離することが懸念される
実際にも、シェアハウスローンの一部 127 件を抽出して検証した結果によれば、収益還元法による評価額が積算法に比して平均 1.7 倍高くなっており、シェアハウスローンでは担保実行時に回収ロスが拡大する可能性が懸念される。

サブリースによるリスクの増幅

サブリースが設定されるとしても、期間が 5 年や 10 年の有期であるなど、35 年に及ぶ長期間の返済期間をもともとカバーしていない。30 年などの長期間にわたるサブリースが設定されることもあるが、シェアハウスのビジネスモデルが崩壊すれば、サブリース会社の財務健全性も同時に毀損され、サブリースによる家賃保証が得られない。このような懸念があるにもかかわらず、サブリースによる家賃保証が喧伝され、投資者の投資判断を歪め、返済能力を超えた融資申込みを誘発するおそれがある。特定のサブリース会社への集中によって、ポートフォリオの分散が図られなくなるという問題もある。
実際にも、シェアハウス業者が自転車操業を続けた後に破綻しており、サブリース会社の財務健全性を慎重に検証すべきであったことが事後的に明らかとなっている。
 当初の時点ではシェアハウスローンの試験的な取扱いを許容することがあり得たとしても、次のように、シェアハウスローンのリスクは 2015 年中頃から 2016 年にかけて、複数の審査部内の担当者において認識されるようになっていた。これらのリスクの顕在化に対し、速やかに融資基準の厳格化やシェアハウスローンの取扱中止などが検討されるべきであったが、そのような対処はなされなかった。
 スルガ銀行では 2013 年 10 月から一棟収益不動産の定期的調査が実施されており、シェアハウスについても 2015 年 4 月頃から物件調査が開始された。その結果、2015年中頃から、シェアハウスの入居状況が芳しくないことが担当者レベルでは明らか
となりつつあった。
 2016 年 5 月のシェアハウス会議では、シェアハウスローンのリスクが明確に分析され、サブリース会社が自転車操業に陥るリスクまで指摘されたが、営業側の意向により、取扱地域や業者を限定して、シェアハウスローンを継続する方針が採用された。
 少なくとも 2015 年中頃の時点で、空室リスクが重大であることが担当者レベルでは明らかとなっており、2016 年 5 月のシェアハウス会議でシェアハウスローンのリスク特性がより鮮明に指摘されていた以上、速やかに融資基準の厳格化やシェアハウスローンの取扱中止などの対処がなされるべきであったと言える。

 2015 年には岡野副社長の指示でスマートライフとの取引が禁止されたものの、その指示は口頭でなされたのみで、実際には別会社による迂回がなされていた。審査担当者においても、現況確認をしたところ、カボチャの馬車の表示があり、スマートライフ
との取引が実質的に継続されているのではないかとの疑いが徐々に芽生えていったようであるが、営業担当者への指摘を十分には行うことができず、結果的に、スマートライフがサブリース会社となっているシェアハウスローンが多数継続されることとな
ってしまった。

 シェアハウスローンを含む収益不動産ローンについての上記のような問題は、審査部の担当者において早期の時点から把握・認識されていた。しかし、次のように、審査の営業からの独立性が確保されておらず、審査部が実効的に機能せず、信用リスクや
顧客保護の観点で問題のある融資が実行されるに至った。
 審査担当者が営業担当者に対し、レントロールの偽装の疑義などについて指摘したとしても、すぐに反論され、再度疑義を指摘すると、所属長が登場して威圧的に反論がなされ、最終的には麻生氏(元専務執行役員・Co-COO)が審査第二部長や審査部長に対し、直接かけあって、稟議を押し通していた。
 審査部の役職員のなかには、麻生氏の強圧的な姿勢をもって、恫喝と表現する者もいる(他方で、審査担当者のなかには、麻生氏の特性について、「恫喝というよりも、何を指摘しても反論され、平行線に終わり、結局意見を押し通されることの方が多
かった。」と表現する者もいる。)。
 現場の審査担当者は相応に営業担当者に対し、否定的な意見を述べるなどしていたようであるが、最終的には、麻生氏が審査第二部長に厳しく問い詰めるなどして、稟議を押し通していたようである。営業担当者や所属長らも麻生氏に協議した事実を審査担当者との協議材料の決め手として使うようになり、横浜東口支店の所属長は稟議申請書の冒頭に「パーソナル・バンク協議済み」と書いて審査部に承認するようプレッシャーをかけていた。
 審査担当者が否定的な見解であったにもかかわらず、稟議が通された案件において、審査担当者の一部は審査部限りでの記録として審査意見を残しており、その案件数は 200 件を超える。その内容を見ると、「家賃設定に疑義あり」といったコメントが
目立ち、レントロールの妥当性の疑義にかかわらず、融資実行がされていた案件が多数存在していた可能性をうかがわせる。
 このように審査の現場では、審査担当者が否定的な意見を述べたとしても、最終的には営業側の意見が押し通されて融資実行されることが大半であり、資産形成ローンは 2015 年の取扱開始以降、2017 年度上期に至るまで、半期毎の承認率の平均が常
に 99.0%を超えて推移していた。収益不動産ローン全般について見れば、2008 年度上期~2010 年度上期は半期毎の承認率は平均 80~90%の水準で推移しているのに対し、2010 年度下期以降に承認率が上昇し始めて 90%を超えるようになり、2014 年度
下期以降は 99%を超えて推移するようになっている。このような審査承認率の上昇と高止まりは、審査の独立性が徐々に毀損していったことを示すものと思料される。
 また、上記の個別与信の稟議手続のほかに、融資基準の設定を検討する際、審査よりも営業企画や営業本部の意向が優先された事案が多々みられる。たとえば、2014年に審査送付書類が簡素化され、自己資金確認書類を審査部に送付しないこととさ
れたが、この取扱変更は営業企画の要請によるものであった。2016 年 5 月のシェアハウス会議でシェアハウスローンの取扱方針が決定されたのも、麻生氏の判断によるものであった。
 以上のように、融資基準の設定においても、また個別の与信判断においても、審査の営業からの独立性が確保されておらず、結果的に多数の不正行為が広がったり、信用リスク管理の不全を招く原因となったものと考えられる。

営業の問題

 営業のプレッシャー
 スルガ銀行の単年度の営業目標(営業推進項目)は、現場の意見を聴取しないトップダウン方式で策定されており、営業現場の実態が勘案されない厳しい営業ノルマとなっていた。
 さらに、営業推進項目を策定する営業企画をはじめとする本部組織において、営業推進項目の進捗をモニタリングする仕組みがなく、目標が過大で現場に歪みを生むリスクがないか、といった観点からの検証はされることがなかった。
 近年のスルガ銀行の収益を支えたとみられる収益不動産ローンが包摂される項目(いずれも純増目標)につき、各年度とも、極めて高い割合(年度によっては 100%)でその達成可否をパーソナル・バンクに依存していた。
 かような高い営業目標を課されたパーソナル・バンクは、公式な営業目標である営業推進項目とは別途、さらに高い営業ノルマ(ストレッチ目標)を設定し、パーソナル・バンク内の営業拠点に賦課した上で、その達成のため、センター長会議等に
おいて拠点長に対して強度のプレッシャーをかけていた。

効率性指向とチャネルへの依存

 スルガ銀行においては極端な形式主義(書類だけ揃えれば良いという考え方)が広まっており、形式主義の結果として、収益不動産ローンについては、物件の評価が出てしまえば融資額は固まるので、債務者に貸すという感覚が希薄になってしまった。
 形式主義の結果、書類は債務者から徴求するよりも、融資の事務処理に慣れている業者から徴求した方が効率的であるから業者からの徴求がスタンダードとなり、行員は債務者と金銭消費貸借契約の締結の際にしか顔を合わせないこととなった。
また形式主義の結果、「最初から融資条件を業者に教えておけば、融資条件を充たすような案件しか持ち込まれないから、否決となる案件が減って、銀行側の作業に無駄がない」という発想で、業者への審査条件の暴露が盛んに行われ、業者側が審査条件に合うようなエビデンスを偽装してくる工作を行うことを可能にした。
 上記のような効率性重視の結果として、スルガ銀行側は、業者(チャネル)の働きなくして融資を実行することが難しい状況に陥っていた。
 業者側は、自分達に依存しているスルガ銀行であれば多少無理のある案件であっても取り扱ってくれるという認識を持つことになり、通常であれば通らないような案件がスルガ銀行に持ち込まれてしまうという悪循環が生じていた。
 スルガ銀行の行員からすると、例え偽装が疑われるエビデンスが業者から提出されてきたとしても、①そうした業者からの依頼を拒絶して業者が離れていけば、自らのノルマの克服が極めて困難になる上に、②自分が断ったとしても他の支店が取り上げてしまえば、結局はスルガ銀行の貸付債権になり、かつ、ノルマを達成したとして賞賛されるのが他の支店になってしまうという思考回路に陥ることになり、そのような案件でも断らずに取り上げることを正当化してしまう素地が産まれた。

業者の管理の不徹底

 スルガ銀行においては、チャネル PRM というチャネルの管理システムを整備していたが、システムへの登録のルールが明確でなかったため、偽装された書面を持ち込むような業者を適切に排除することができていなかった。
 業者の側も、取引停止処分となったとしても、すぐに別の法人を設立したり、既存の別の不動産業者に転籍したりすることで、姿形を変えてスルガ銀行の前に現れてくるため、いたちごっこの様相を呈してしまった。
 その結果、銀行全体として、業者の管理を適切に行うことができず、悪質な業者との付き合いを絶つことが徹底できなかった。

不正行為等の多様化

 本件で行われた不正行為等は多岐に亘っていたため、スルガ銀行の行員自身が積極的に関与していた事例、黙認していた事例や疑いを持ちながら融資を実行していた事例も多かったと思われるが、スルガ銀行の行員自身も気付かぬままに行われていた偽装も多かったものと考えられる。

シェアハウスローン

 シェアハウスローンが発生した主な原因と考えられる要素は、いずれもシェアハウスローンに固有のものというわけではない。収益不動産ローン全般で見られた数々の問題点がシェアハウスにも等しく合致したことが、現在のような事態が生じている原因であると考えられる。

(3) 内部監査体制の問題
(省略)

(4) 統制環境(企業風土)

 以下の点に照らすと、スルガ銀行においては、極端なコンプライアンス意識の欠如が認められ、統制環境(企業風土)の著しい劣化があったといわざるを得ない
 多数の不正・不当行為等があったこと(上記 1 参照)。
 これらの不正行為等が、組織的、主導的、長期間に渡るものであったこと。
それが会社のためではなく、また顧客のためでもなかったこと。
 これだけ多数の不正行為等が長期間、多支店に渡って継続し、拡散していながら、誰 1 人としてアピールしなかったこと。

 人事評価制度上、以下のような問題があった。
 本来の起案権を無視した、自己の管轄外の部門に係る人事異動案の直告が黙認されていた。
 昇進・昇格基準が形骸化されていた。
 人事異動に関しては、管掌取締役に対し、報告すら行われておらず、規程上の根拠
を欠いた「人事会議」により牽制不在の中重要な人事異動の決定が行われていた。
 これらによって、営業偏重(パーソナル・バンク中心)の人事が行われることとなった。具体的には、麻生氏の意図する人材がパーソナル・バンクに集中し、また、審査部の人員配置まで、本来権限を有しない麻生氏が起案し差配する結果となった。
 極めて短期業績反映度の高い賞与制度であった。

(5) ガバナンスの問題

 取締役会は、①経営者に対するモニタリング、②内部統制システムの構築と監視、③重要な業務執行事項の意思決定の何れの点に関しても、十分な責務を果たしていなかった。
 そもそも、①取締役会の位置づけ、②経営会議の位置づけ、③執行会議の位置づけ、④各種リスク委員会の位置づけ、⑤CEO・COO の位置づけ、⑥業務担当取締役の位置づけ、⑦社外役員の位置づけといった組織の構築に問題があった。
 監査役の職務に関しても、往査に赴いた際にリスクの端緒を把握しながら適切な調査
をしていない点、社外監査役への伝達を怠っている点等、少なからず問題があった。

(6) 本件の構図 ~パーソナル・バンクの聖域化とその本質的課題

 上記(2)の通り、パーソナル・バンクがスルガ銀行の業績を 1 人で背負っていたといっても過言でない状況があり、強度の依存構造があった。
 この結果、全社業績を背負っているのはパーソナル・バンクであるという認識が社内に広がり、必然的にパーソナル・バンクの発言力が高まる状況がエスカレートした。
 しかしながら、麻生氏は、強大な力を誇ったとはいえ、執行役員(雇用型であり「従業員」たる労働者)に過ぎず、より上位者が多数あった上、創業オーナー家である岡野兄弟も存在した。
 上位者である各部門を管掌する取締役はライン上にはなく、業務の執行に関してはほぼ執行役員に任せきりであり、取締役会や社外役員には単年度の営業目標や中期経営計画すら知らされていなかった。
 経営トップ層は、持株比率や創業家の権力を背景に全体としてのスルガ銀行は完全に支配していたが、他方、現場の営業部門は強力な営業推進力を有する者、しかも従業員クラスに任せ、その者には厳しく営業の数字を上げることを要求し、人事は数字次第となっていた。経営層自らは執行の現場に深入りせず、幾重もの情報断絶の溝を構築していた。
 営業本部が逸脱行為を繰り返したことの大元の原因は、そのような意図的と評価されてもやむを得ない断絶と放任・許容にあった。
 本件は、作り出された「限定的な聖域化」、「無責任・営業推進態勢」という経営層に都合のいい態勢の結末であったというべきである。

(7) 問題表面化後の経営の対応と問題

 2017 年 2 月にサクトが国税の差押えを受けたことを発端に、次第にスルガ銀行の経営層もシェアハウスの問題に関わるようになるが、その経緯は迷走というほかなく、問題の所在も明らかにならず、営業本部に振り回され、適切な意思決定、指揮命令がで
きないまま、翌 2018 年 1 月の危機管理委員会の設置に至った。 かかる一連の対応からは、①経営層による一貫した主体的な対応をする姿勢が欠如していたこと、②リスクに対する感度と業務への知見が欠如していたこと、③業務指示に違反した行為を適切に認識し、対応する意識が欠如していたこと、④社内の意思決定に係る内部統制が適切に整備、運用されていなかったことが看取される。

 関係者の法的責任・経営責任の有無

(1) 岡野会長について
 個別の不正、又はシェアハウスローンに係るリスクを具体的に知り又は知り得た証拠はない。
 一方で、以下の点(以下、併せて「本件問題発覚後の諸行動」という。)に関しては、善管注意義務違反(一部法令違反)が認められる。
 2017 年 7 月 5 日に開催された第 4 回サクト会議の結果、シェアハウスローンのリスクや問題が判明し、会社に著しい損害を与えるおそれがある重大な問題が発生していることを認知したにもかかわらず、取締役会を開催して報告・付議をすること、及び監査役に直ちに伝達すること(会社法 357 条)を怠ったこと。
 同年 10 月 19 日の取締役会で、上記問題について、担当取締役に十分な説明を求めず、また自ら説明もしなかったこと。
 同年 10 月 19 日の経営会議で、融資の基準(業歴 5 年以上、完成時一括実行等の条件)が改定されたにもかかわらず、同月 31 日の社内会議で事実上それが覆されてしまったことについて、経営会議決議違反を認識しつつこれを是正しなかったこと。
 「本件の構図」として述べたような会社の仕組みを構築してしまったことについて、法的責任は認められないが、その諸要因について、故岡野副社長と同等の最も重い経営責任がある。
(2) 米山社長について
 個別の不正、又はシェアハウスローンに係るリスクを具体的に知り又は知り得た証拠はない。
 一方で、本件問題発覚後の諸行動に関しては、善管注意義務違反(一部法令違反)が認められる。
 「本件の構図」として述べたような会社の仕組みを構築してしまったことについて、法的責任は認められないが、2016 年 6 月以降は代表取締役であり、また 2017 年 4 月以降は最高執行責任者(COO)であるから、就任後の経営に関し一定の経営責任は免れない(ただし、経営責任が「重い」というのは酷である。)。
(3) 故岡野副社長について
 1998 年 4 月から 2016 年 7 月に逝去するまでの間、長年にわたり、スルガ銀行の業務執行全般における実質的な最高意思決定者であったが、①営業を極端に重視した人事、②過大な営業目標、③営業重視かつコンプライアンス軽視の組織風土の形成、④審査部門の弱体化、その他により「本件の構図」を構築してしまった主たる責任者であり、問題となり得る点は少なからずある。
 しかしながら、これらは現在の役職員らのインタビュー結果に依拠していること、既に逝去されており弁明の機会を付与することができないこと、本人に対する責任追及の余地がないこと等に照らし、当委員会としては法的責任についての判断を留保する。
 ただし、経営責任については、「本件の構図」を作り上げ企業風土の著しい劣化を招いた主たる責任者であって、優に認定できる。
(4) 白井専務について
(省略)
 本件問題発覚後の諸行動に関しては、善管注意義務違反(一部法令違反)が認められる。(中略)専務取締役(代表取締役)として、その職責を十分に果たしてきたとはいえず、経営責任がある。
(5) 望月専務について
 個別の不正を具体的に知り又は知り得た証拠はない。(中略)財務関係の数値に関して恒常的に報告を受け、社内の各種情報にアクセス可能な立場にあったのであり、専務取締役として、その職責を十分に果たしてきたとはいえず、経営責任がある。
(6) 岡崎氏(元専務取締役)ついて
 個別の不正を具体的に知り又は知り得た証拠はない。(中略)「本件の構図」を産んでしまった要因のうち、営業本部と経営陣との間の情報の断絶を作出したのは岡崎氏に他ならず、その経営責任は、故岡野副社長に次ぐ重いものである。
(7) 柳沢常務について
(略)
(8) 八木取締役について
(略)
(9) 有國取締役について
 個別の不正、又はシェアハウスローンに係るリスクを具体的に知り又は知り得た証拠
はない。(中略)明らかな善管注意義務違反があったとまでは断定できないまでも、一定の経営責任は免れない。
(10) 麻生氏(元専務執行役員・Co-COO)について
 以下の点等に関して、営業本部の執行役員としての注意義務に違反していた。
 審査部の人事に介入したこと。
 シェアハウスローンについて、構造的な問題やリスクが非常に大きいことが議論されたにもかかわらず、ごく限定的な対応だけでさらにシェアハウスローンを推進してしまったこと。
 故岡野副社長の指示に反してスマートライフとの間の取引を営業店が行っていること知りながら、それを差し止めるなど適切な措置をとらなかったこと。
 2017 年 10 月 19 日の経営会議で融資条件を厳しくすることが決定されたにもかかわらず、同年 10 月 31 日の社内会議でそれに抵触する取扱いを決めたことに関与し、その後実際に経営会議決議違反となる融資の稟議申請をし、融資実行させたこと。
 収益不動産ローンにおいて、各種リスクが増大しているにもかかわらず、営業本部において必要な監督を行う義務を怠ったこと。
 この他、センター長会議での度重なる叱責、営業邁進の厳命、審査部に対して審査を通すよう強く要求したこと等は、直ちに注意義務に違反するとまではいえないものの、企業風土の劣化を招く行為であったことは否定できず、スルガ銀行で生じた企業風土
の著しい劣化に寄与した度合いは大きい。
 一方、経営陣ではなく、情報の断絶が生じているスルガ銀行の中で、現場に明確な形で介入しない経営陣の下、ひたすら営業に邁進した立場というべきである。したがって、「本件の構図」を作った張本人ではないし、その構図について責任があるとするの
は酷であろう(それは経営トップの責任である。)。

(11) 社内監査役について
(略)
(12) 社外取締役及び社外監査役について
(略)

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スルガ銀行 第三者委員会調査報告書(要約版)は以上になります。

 

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