印西市のビデオより
印西市が制作したインド風PR動画が話題、「住みやすい町」7年連続ナンバーワンとして知られている印西市、一方で専門家は印西市を「将来が危ない町」のトップにあげています。
印西市の何が問題なのか、住宅ジャーナリスト榊淳司氏の意見を元に考えます。
スポンサーリンク
印西市のPR動画はどんなもの?
千葉県印西市が作成した、「印度じゃないよ、印西市」は異色のプロモーション動画として急激に話題になりました。長さは1分半、市のPRと知名度アップのために制作され、16日から市のHPで公開を始めたものです。
市シティプロモーション課の担当者は
「中途半端はダメなのでエッジの効いた映像にしたかった。印西市がにぎやかで楽しいところということを知ってもらいたい」
インド風のコスチュームをした人たちが、コミカルな動きで集団で踊るというものです。「楽曲やフレーズが耳に残る」音楽の印象もよく一気に評判が上がりました。
同市は成田空港のある成田市の西隣に位置し、よく知られた経済週刊誌の「東洋経済」の「住みよさランキング」で7年連続全国1位を獲得しています。
印西市は「住みやすい町」だが
その動画を見るよりも前に、私たちは、近々印西市を選択肢に入れていました
というのは、私たち夫婦は夫の父が4月に亡くなったばかり。父所有の家に住んでいるために、早々に住み替え先を見つけておきたいのです、もちろん、今の場所、あるいは、その近辺に住むという選択肢もありますが、できれば、よそに移りたい希望なのです。
そこで、「住みやすい町」7年連続ナンバーワンの印西市がどうかと夫が言い出し、ネットの不動産サイトで見てみると、中古住宅が1千万円以下で買えるということで、このあと見に行く予定になっていました。
印西市は「将来が危ない町」の筆頭?
ところが、昨日、そのビデオが評判を集めると同時に、夫が急に「印西市には住めない」と言い出しました。聞くと、「将来が危ない町」という記事をネットで読んだが、その話し手の住宅ジャーナリストが、「将来が危ない町」の記事タイトルで、「住んではいけない街」の筆頭に挙げているのが、印西市だということなのです。
その話し手とは、このブログでも度々取り上げている榊淳司さんです。
印西市に住んではいけない理由
榊さんは次のように話しています。
「今、住宅ローンは1%未満で借りられます。『借りなきゃ損』という風潮がありますが、非常に危険だと思いますね。ローンを組めば、わずかとはいえ金利を払うわけだし、借金もできる。何より不動産バブル崩壊の予兆があるからです。」
榊さんがこう話したのは、2016年12月の話です。そして、その通り、不動産バブルは局所的にではあれ、既に始まっていると言えます。
上のように前置きして、榊さんは、
『将来が危ない街』で、私が思い浮かべるのは『千葉ニュータウン』です。今も新しいマンションの供給が続いていますが、ディベロッパーは無責任だと思う。恐らく、15年後には徒歩数分の駅近物件でも買い手がつかなくなるでしょう」
と言います。この「千葉ニュータウン」というのは、印西市の現在の中心地なのです。
印西市の交通費の高さ
榊さんのいう印西市を危険視する理由は何かというと、それは意外にも交通時間の長さ、それと交通費が高額だということなのです。
上のビデオでは、上記の通り「成田にも都内にも乗り換えなし」とうたっています。交通の利便性、印西市が自分の市にあげるいちばんのアピールポイントです。
確かにその通りなのですが、都内までは片道1時間以上かかり、しかも交通費が1000円以上かかるということはこのビデオではもちろん伝えられてはいないことなのです。
都内へ通勤するという場合は、通勤費の補助が出ますが、通学となったら自分で負担しなければならず、たとえば、千葉ニュータウンから浅草まで通学したとすると、通学定期で割引を入れても、定期代は半年で10万円にもなります。
つまり「乗り換えなし」とはいっても、都内に遊びに行くのはともかく、通勤圏通学圏としては適した町とは言えない。
そのため、けっして住みやすい町とは言えないというのが、榊氏の分析です。
千葉ニュータウンも古くからある町と条件は同じ
榊氏は、多摩ニュータウン、港北ニュータウン、そして、越谷レイクタウンや柏の葉国際キャンパスタウン新興系のニュータウンも同様だと言います。
確かにこれらの町は、住宅費は安く、新築で駅近物件が3000万円台、近くに映画館や大型ショッピングモールもあって若い夫婦であれば、子育てには便利です。
しかし、都心まで通勤通学に1時間もかかる点は、古くからあるニュータウンと条件は変わらないというのが、榊氏の主張です。
極めつけは「35年ローンで買えば、恐らく20年後、資産価値よりもローン残高が上回る“逆ザヤ状態”になる」といわれれば、どうにも二の足を踏まざるを得ません。
シニアの住み替えは若い世代とは違う
私たち夫婦は、夫が定年間近ですのでローンは組まない、むしろ組めないと思います。そもそも定年後には通勤の必要はなく、その土地で暮らすことも何とも思いませんし、周りがどうなろうとも住み続けることはできます。
しかし、不便さから、お金のある人は都内に動き、資産価値が落ちる。なぜならその頃には、都内も含めて人口減少が急速に進み、住宅価格も家賃も下がることが目に見えているからです。
心配なのは相続
その時に心配なのは、やはり相続のことです。早ければ20年後、または30年後以降には必ず相続が起きます。このブログに書いている通り、相続した空き家で苦労した経験があるので、子どもには売れない家は残せません。
若い人は、目先のスパンで考えても構いません。しかし、年を取ってからさらなる住み替えや不動産の売却となると尚更難しい。しかも、収入が亡くなって年金暮らしになれば、手持ち資金もなく、その頃には他に住み替えることもできなくなります。
やはり現時点で、地価が安い、というだけでは家は選べない。早めにわかってよかったという思いと、いささか残念な思いが残る結果となりました。