遺言には、自筆遺言書と公正証書遺言があります。
そして、相続人が複数いる時にでも、遺言書で指定を受けた人が単独で預貯金をおろしたり、土地家屋の登記を行ったりできるものは、公正証書遺言だと述べました。
しかし公正証書遺言で、遺産の全額を相続人一人に相続させると書かれていても、残りの相続人が、自分の最低限の相続財産を請求することができます。
その相続分のことを遺留分(いりゅうぶん)といいます。
遺留分は相続欠格者以外は基本、誰でもがもらえるため、逆にそれをめぐって争いになることがあります。
姉妹間で遺留分減殺請求を行った例
思い出される身内の例を書いてみます。
障害のある叔母とその介護者の甥に遺産を与える遺言を書いた祖父
私の母は4人きょうだいです。母が長女、次女A子、長男、三女B子がいます。
A子は子どもの時から身体と精神に障害があります。なので、祖父母はすべての財産をA子に与えるという公正証書遺言を残しました。
私の母とその弟はそれを不服として、遺留分減殺請求の調停を行いました。調停の場合は特に必要はありませんが、弁護士も依頼しました。
その結果、母と弟は、自分の遺留分を受け取ることができました。
両親の遺言通りにはならなかった
一方では、それは遺言を残した両親の意は通らなかったということになります。
障害のある、A子は、末の妹B子に介護を受けていました。もしB子が亡くなった場合は、B子の子どもが叔母に当たるA子の面倒をみるように、A子と養子縁組をし、家督を継ぐということで、改姓もしました。
両親、特に最後に残った祖父は90歳まで生きましたが、その介護もB子がしていました。
しかし、遺留分として受け取ったものは、親と妹の介護に関わらなかった母とその弟、二者の介護をしたB子とも、皆同じ金額でした。
結果、A子は障害のある子に残そうとした親の遺産を、その希望通りの額では受け取ることはできませんでした。
もし、この場合間違いなく、一人の子に遺産を渡したいということなら、贈与税がかかったとしても、生前贈与とした方がよかったのかもしれません。
親の愛情が不平等だという思いが争いを生む
母と叔母は、一時は共同で家を建ててそこに一緒に住もうというくらい仲が良かったのです。
上記のような争いになった結果、つき合いがなくなってしまったのは、残念なことでした。
そもそもがお金のことだけではなく、一人の子どもだけが可愛がられている、という不平等感が、遺留分を請求した側の根底にあったのだろうとも思います。
長い年月に渡る不満が相続の時に現れるということで、根が深いものだけに、仲を取り持とうとしても難しいものがありました。
売れない土地によるきょうだいの不和
私は上記の例を見ていて、遺留分は、どんな理由があれ、必ず兄弟には渡さなければならないのだということを知りました。
なので、きょうだいの不和は必ず避けたいと固く心に誓い、父の死後できるだけ早く、預貯金と株式は二等分して弟に送りました。
しかしそれにもかかわらず、すぐには処分できなかった土地家屋のおかげで、いわゆる財産争いとも違ったすれ違いが生まれてしまうことになったのは残念なことだと思わざるを得ません。