2017年、国交省の「先駆的空き家対策モデル事業」が始まり、27団体が登録。
その中で住みたい田舎全国1位となったのが栃木市です。
調べてみたら、人口16万人台の小さな町なのですが、いったいなぜ栃木市が成功したのでしょうか。
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空き家バンクでの驚くべき成約率
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移住者向け専門誌「田舎暮らしの本」においてのランキング、「子育て世代が住みたい田舎」「若者世代が住みたい田舎」の2部門で第1位が、栃木市なのだそうです。
栃木市は県内3番目の人口約16万人、東京までは電車で約1時間半、「蔵の町」と呼ばれ、観光客の多い町でもあります。
そのため古い街並みを保存しようと建物は壊さずに、できるだけ空き家に住んでもらうようにと、定住促進と空き家対策が当初から同時に行われてきました。
自治会と連携して早い対応
「自治会と連携して空き家の早期発見・活用事業」という名の通り、空き家ができると市に知らせてもらう。つまり自治会というのは名簿の管理もしているので、その家が空き家になったかどうかがすぐわかります。 そして所有者不明にならない早い段階で、空き家の所有者と接触し、活用方法などを相談する、そのようなネットワークを考案したそうなのです。
ネットを利用してHPでアピール
そして、そのようにデータベース化したものをホームページで公開しています。 当初はおそらく観光地の建物保全のための住み替えの情報提供であったのでしょうが、ホームページを外に向けた作りにしたことで、移住したい希望者も増えたのです。
栃木市の近くには、移住者に人気を保ち続けているつくば市がありますが、どちらも都心からも近い距離であることが幸いしたのかもしれません。
移住者への補助金の充実
さらに、移住者に対する補助金が事細かに設定されています。
移住をした家庭には、新築なら30万円、中古で20万円、多世代なら20万円、耐震補修に100万円、他には移住の前に1か月の移住体験も設置しているということで、新しく来る人への心配りが行き届いている感じがします。
その結果、2017年は、市内の2007軒の空き家のうち、目標の200軒以上に買い手が見つかったそうなのです。驚異的な数です。
整ったHPに空き家とは思えない物件も
HPを見てみますと、自治体のというよりも、企業のHPかと思うような美しさに驚かされます。
そして中には2016年築オール電化2380万円、2015年ロフトつきという物件まであって、空き家とはまったく感じさせない優良の中古物件もあります。
ネットだと県内だけではなく、近くも遠くも広範囲にアピールできます。
しかもネットの利用者というのは、おおむね若い世代ですから、単身もあれば家族での移住も大いに期待できそうです。
栃木市の例を見て思ったこと
上を見て思ったことですが、企業なら、販売に当たって、このくらいのアピールはするだろうと思うことが、多くの自治体だと不足しているのではないかということです。
たとえば、ネット上に物件を並べるなどは、どこの不動産の販売会社でもやっています。 しかし、うちの自治体で、地域のどこに空き家があって、それをアピールするようなものは、今のところありません。
そしてHPをハイセンスなものにするのもそうです。
私は普通の販売サイトも常々見ていますが、栃木市のHPの方が数段きれいです。
掲載するHPがきれいだと、物件が空き家とはいえ、印象はかなり違ってきます。
不動産の販売会社なら心配もあるし、体験宿泊はおろか、買った後の補助金はもちろんありませんが、そこは自治内ならではのフォローがあるわけなのです。
だったら、自治体が仲介の販売の方が比べようもなく良いわけなのです。
中古物件と空き家の違い
もうひとつは、空き家が「本当の空き家」になってしまってからでは、実は遅いのだということに気が付かされます。
これは自分で売る時も仲介の時もそうですが、空き家になる家はそもそもが古いので、放置すればするほど、年数はもとより、状態が変わっていってしまいます。
空いたらすぐに売る、という場合は、事実上「空き家」ではなくて、普通の中古住宅です。 物件の質を落とさないために、自治体が持つ元々のネットワークである自治会に空き家が出たら知らせてもらう、というのは、稀なるアイディアではないでしょうか。
同じことを不動産業者がやるとしたら、営業マンが常に巡回していなければなりませんし、見知らぬ営業マンに、「売りませんか」といわれても、たいていの人は用心して敬遠してしまうでしょう。
多くの自治体は、役所だからできるというメリットをフルに使っていないように思います。
役所でないとできない部分こそをもっと活用できないでしょうか。
ぜひ、当県の自治体にも、栃木市に倣うところを倣い、これからの空き家対策に役立てていただきたいと思う次第です。