西日本豪雨では、河川が氾濫、多数の人が流されて命を落とすというショッキングなニュースが繰り返し伝わりました。
また、命が無事だった人たちも、家に浸水が起こるという大変な被害にあいました。不動産を買う場合には、浸水の起きやすい地域では、売り手側に説明義務があれば、知らないで購入した際にも賠償義務が生じますが、このような被害に関しては、どのような取り決めがなされているのでしょうか。
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購入したばかりの新築住宅が浸水したら
深刻な浸水被害があった岡山県倉敷市では、新築後間もない住宅も含まれており、2年前に家を買ったばかりだったという住民の中には、
「契約時に知っておきたかった」
「家の購入を真剣に考えているときに教えてほしかった。知っていれば、補償を手厚くした保険に入り、家具の置き方も違ったと思う」
という声も聞かれました。
それに対して、岡山県宅地建物取引業協会の大森明彦副会長は「ハザードマップの配布に取り組んでいるが、法的な縛りはなく対応に差は出てしまう」と話す。「浸水で亡くなった方も多く、今後、重要事項に加えることも必要かもしれない」と述べましたが、宅建業法を所管する国土交通省によると、今のところ浸水リスクを説明義務に加える検討はしていないといいます。
この場合の購入時の自然災害に関する説明とは、不動産購入時の「重要事項説明」と呼ばれるものになります。
不動産購入時の「重要事項説明」とは?
宅地建物取引業法においては、不動産の売買時に、宅地や建物の取引をする事業者が、不動産取引に関する知識が 不足する購入予定者に対して、取引対象物件に関して提供することを義務づけるよう14種の事項が定められています。
これは、取引するかどうかの判断を適切にできるようにするためのもので、取引に重要な影響を及ぼす事項としては、具体的に以下の事項が挙げられます。
(1)宅地又は建物の所在、規模、形質に関する事項
(2)将来の利用の制限に関する事項
(3)環境、交通などの利便に関する事項
(4)代金、賃借などの対価の額に関する事項
(5)支払方法、その他の取引条件に関する事項
(6)宅建業者、取引の関係者の資力、信用に関する事項
浸水被害については、このうちの3に当たり、降雨などによって過去に浸水したことがあったり、土砂崩れがあった場合は、重要事項説明書に記載しなければならない項目となっています。
しかし、これから起きるかもしれないリスクについては、判断が難しい場合もあり、項目には入っていないのが現状です。
冠水で仲介業者を訴えた例
裁判になった例としては、購入した土地が頻繁に冠水することを知った個人買主が、瑕疵(欠点)がある土地について土地の販売を仲介した業者の調査や説明が足りていなかったとし、債務不履行を主張して仲介業者を訴えた例があるそうです。
しかし、裁判所は、地域のハザードマップを調べるなどの行為は「信義則上の義務」とはしたものの、法令に基づいた義務ではなく、「業者はその土地の浸水リスクを知り得なかった」と結論付けました。
また、その土地限定ではなく付近一帯が冠水していることから、場所や環境による土地の性状は価格評価に織り込まれている可能性があり、この土地に瑕疵があるとはいえないと買主の訴えを退けられました。
この例を見ても、浸水に関しては、不動産業者に確認の上で、自分で判断する他ないのです。
ハザードマップで土地を調べる
自分での調べ方としては、ハザードマップを見るということが第一の方法です。
ハザードマップ、被害予測地図とは、国土地理院が制作したもので、自然災害による被害を予測し、その被害範囲を地図化したものです。
予測される災害の発生地点、被害の拡大範囲および被害程度、さらには避難経路、避難場所などの情報が既存の地図上に図示されます。
ネットで簡単に参照できますので、これからは、土地や住宅購入の前には、目を通すことをおすすめします。
他の「重要事項説明」チェックポイント
他にも周辺環境に関することで「重要事項説明」に上がっているもの、同時に、買主の方も積極的に確認した方が良いものには次のようなものがあります。
■周辺からの悪臭・ばい煙・振動・騒音がないか
■日照がよい物件、○○がよく見える物件、悪臭・ばい煙・振動・騒音を受けない物件を希望しているが、将来も問題はないか
■降雨などによって過去に浸水したことがないか? 土砂崩れがあったことがないか
■高圧線が物件の上空を通過していないか? 電波障害はないか
■当該物件や近隣で過去に自殺や事故がなかったか? 近隣に争い事がないか? 近隣に暴力団事務所がないか
すべてを満たす理想的な物件ばかりではありませんが、最低、これだけは自分で希望したいというところを、購入前に項目を設定してみましょう。
また、場合によっては、自分ではわからないこともありますので、できるだけ専門家を探して意見を述べてもらうのもいいでしょう。
今回の浸水例のように、万が一の場合には家ばかりか命の危険が生じることもあります。
特に、浸水や冠水に対しての説明やチェックは、重要事項に含まれていない以上、決しておろそかにせず、想定できるリスクをきちんと確認することが必要です。