スルガ銀行(静岡県沼津市)のシェアハウス投資向け融資で多数の不正があった問題で、同行の第三者委員会(委員長=中村直人弁護士)は7日、調査報告書を公表しました。
不動産投資向け融資で資料改ざんなどの不正が横行し、役員や支店長、多くの行員が関与したことが第三者委員会の調査で明らかになりましたが、スルガ銀行の今後はどうなるのでしょうか。
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不正融資の件数や関与した行員数は不明
現在は、11月発表の中間決算をめどに、行内で査定を続けている状態だそうです。
不正融資の件数や関与した行員数は未だに不明であり、早急にそれがどのくらいだったのかを見積もらなくてはいけません。
それによって見通しが付くのは、引当金の増加の金額です。
引当金の増加
引当金というのは、貸し倒れに備えて銀行が自己資本で積み上げるものです。
スルガ銀は、引当金を2018年3月期決算で580億円積み、今期の第1四半期で88億円積み増ししました。
一方、不動産投資向けの融資残高は1兆9000億円(18年3月期末)もあり、有國三知男新社長は「査定で不正があったものを確認し、必要ならば引当金を積む」と言いましたが、「不正がない案件など全体の1%程度」(行員アンケート)と言われるありさまで、引当金が幾らになるかが、未だに不透明です。
引当金増加の影響は
引当金が膨れ上がる可能性は大きいですが、それによる影響がいちばん懸念されるところでしょう。
資金を調達するとなると、次のようなことが言われます。
増資以外では、「数年後の売却をもくろむ投資ファンドが手を出す」(大手銀行OB)可能性が挙がるが、「彼らは拒否権を発動できる3分の1超の株式取得に動くだろうが、まだ創業家や関連会社が大量の株式を保有していて調整が要る」(同)と課題が多い。
他の地銀との連携は
また、他の地銀との合従連衡(がっしょうれんこう)、つまり合併ということでしょうが、地銀関係者は
「(まだ株主の)創業家の岡野光喜前会長は、周囲の横浜銀行や静岡銀行の経営陣との折り合いが悪く非現実的」
と言われており、当面その話は出ていないようです。
創業家の関連会社への不適切な融資は?
スルガ銀行が自己査定すべきことの一つには、岡野会長が親族の会社へ、どのような融資を行ったのか、あるいは、それがどこに流れたのかの解明が必要です。
これについても資金の流れはいまだ不透明です。
いずれにしても、スルガ銀行には金融庁の行政処分、一部業務停止命令は避けられないという見方が大半です。
金融庁は更なる実態解明へ
今後懸念されることのもう一つは、19日、金融庁が、スルガ銀行の問題を受け、再発抑止のために大手銀行や全国の地方銀行を対象に、投資用不動産向け融資について実態解明に乗り出すことが決まったというニュースです。
公表予定の「金融行政方針」概要によると、金融庁の調査ポイントは、次の点だそうです。
・顧客が過大な債務を負わないような融資審査態勢
・無担保ローンの抱き合わせ販売の有無
・顧客の返済能力を考慮しているか
・融資後の賃料収入や空室率の推移などを適切に把握しているか
・リスク説明を顧客に十分に行っているか
まとめ
今後の調査は必要ですが、前金融庁長官が「優等生」呼ばわりをしていた失態は、それで消えるわけではないでしょう。
もっと早く行っていれば、顧客も、そして銀行もこのような混乱は避けられました。業務内容をチェックできる第三機関は、今後も必ず必要です。
また、サブリースそれ自体は、投資用アパートなどの建築ラッシュの後、家賃保証の期限が揃って切れる時期のため、このあと次々にローンが支払えなくなるオーナーが続出するとも言われており、厳しい状況になるのは他の銀行も変わりません。
4番目に「融資後の」とありますが、「100年経っても返せないようなそんな感じのローンが粗製されていた」プライムニュース座談会との意見もあり、「30年」という長期のサブリース契約の仕組みも、考え直される必要があるのではないでしょうか。
金融庁のチェックも入らない、銀行の担当者は話を進めるだけ、だとすれば、当てになるチェック機関は投資者自身をおいて他にありません。