南青山に区が施設を児童相談所を建設を計画、その説明会において、住民の強い反対に遭ったことが報道されました。
見出しの「青山ブランド」の文字にびっくりしましたが、反対した人はいったいどんな意見だったのか、その場合の「青山ブランド」とは何か、また実際の施設建設に伴う、ブランドに対するリスクなるものがあるのか。
土地の周辺環境にそれらの問題が実際に起こりうるのかを調べてみました。
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南青山で児相建設に大荒れの説明会
東京・港区は15日、南青山の一等地に児童相談所(児相)を含む複合児童施設の建設を計画していました。説明会は今回で6度目ですが、反対する住民との間で、話がまとまらないという事態が起きました。
区の担当者に対して、「まじめに答えろ」と怒声が飛んだと言いますから、何となく気が進まないというような程度ではなく、住民は署名運動までして、絶対反対の姿勢を貫こうという構えであるようです。
反対する人の意見の内容は
反対する人の意見の内容とは、いったいどういうものなのかというと、次のような内容です。
- 在住女性 青山のブランドイメージをしっかり守って欲しいし、世界に発信していく町。土地の価値を下げないでいただきたい
- 中年男性 青山の中でも一等地でなぜ作るのか。子供とつければなんでもいいのか
- 若い女性 (建設費から母子施設の入居数、税金などを自ら試算し)1世帯の月の家賃は約83万円。支援が必要なのはわかるが、とても納得できない
- 在住の高齢女性 入所した子供が1歩外に出ると、そこには幸せな家族、着飾った人、おしゃれなカフェ。その場面と自分を見たときのギャップ。そんな状況が心配
- 在住の中年男性 子を持つ親として、こんな理由(ブランド低下)で反対したとは、将来子供にとても言えない
- 30代の在住男性 建設反対は、虐待を受けている子供を見捨てる、虐待に加担している行為
理由の一つは、青山の「ブランドイメージ」という、いわば心理的なものでしょうか。児童福祉施設が建つことで、それが低下するという考えです。
次に、母子施設入居者にかかる費用が多額であり、その費用負担についての意見。
それから、相手を思いやって(と便宜上述べておきますが)、児相利用者にとって、住みやすい町ではないのではないか。
残る二者は、建設を支持しようとする意見です。
「青山」の心理的なブランド価値
これらの意見をまとめるとすると、まずは、心理的な「ブランド」という問題。
これは、各自の心の中にある問題なので、実際的なものではなく、主観的にそれが損なわれたと思えば、その人たちにとってはそうなるという問題です。それを損なう要因が、児童施設の建設というわけです。
地価というのは需要によって価格が上がる、いわば「相場」ですので、皆が「ブランドが損なわれた」ということになれば、実際に地価が落ちるということもないとは言えないかもしれません。なので、どれだけの人がそのような考えをするかということが、今回の点でもっとも気になるところです。
実際にも地価が下がる?
それによって、さらに大きな問題は、施設建設によって、実際の資産価値が落ちるのか、あるいは、どの程度落ちるのか、という点です。
地価の下落と治安の変化については、実際に児相がある世田谷区では、「世田谷は、都の職員が野良猫まできちんと管理してくれる。人の目があって逆に安心」という女性の意見があったそうです。
地価については、児相建設後に戸建て購入の男性は「この一角だけ(物件が)安いとかはなかった」。
千歳船橋駅付近の不動産業者は「(児相に限らず)児童施設の周辺物件は『騒がしいから』などと、入居や売却が遅れるケースはある。ただそれが地価に直結するかというと、そこまでではない」と、地価への影響を否定しているということです。
もちろん、新築の施設の外観の点では、廃ビルや、放置された空き家や空き地などより、はるかに見栄えは良いものでしょう。
またタワマンができて、いきなり日照などの実際に環境的な問題が起こるというようなものでもなさそうです。
もちろん、住民すべてが反対しているわけでもなく「児相があることを知らなかった」「存在を気にしたことない。逆にいうとそれだけ自然」「住んでいるところにできるのか、あるところに住むのかは全然違う」という賛成を含めて中庸な意見も挙げられています。
子どもの声などの騒音については
もう一つの問題は、児相でなくても、家の隣に保育園があって、子どもの遊ぶ声がうるさいとして、神戸市の男性が近隣の保育園を相手取り、慰謝料100万円と防音設備の設置を求めた訴訟のケースがあります。
既に訴えた男性が敗訴が確定していますが、自宅の隣に突然騒音が生じるかもしれないものが建設されるとなった場合の反対意見は、予想されるものであるかもしれません。
それが妥当なものかどうかはともかく、自分が建ててしまってからの変化については、嫌なら引っ越す他手立てがありません。こういった周辺環境の変化は避けられないものもありますが、反対すればあるいは避けられるというのであれば、あまり考えずに反対に回る人もいるでしょう。
税負担の問題
施設ができ、その後、そこに区の支援を受けながら生活する人が居住することで、自分たちの負担が増えるのではないかという意見。
この辺は、土地の問題ではないので、私の方に知識や準備がないため、何とも言えませんが、税金と福祉施策の公平性の問題については特に、やはり建設をする区の方で、例証を挙げながら辛抱強く説明していく他はないと思われます。
そして、案外実際に起こるべき問題よりも、心理的なこと、いわゆる「イメージ」といった漠然とした事柄の方が、主観的であり、払拭するには難しい問題だとも思われます。
おそらく、自ら青山にブランドイメージをもって移ってきた人ほど、それを正すのは難しいものがあるかもしれません。