不動産鑑定の評価業務の問題点、茨城県の市町村は土地の評価業務を不動産鑑定士に委託していますが、県内の44市町村の1地点あたりの平均単価に最大で4倍超の開きがあることが判明しました。
茨城県の事例が朝日新聞に続いて、東洋経済誌にも掲載されており、問題点が明らかになっています。自治体の不動産鑑定の契約の問題点をまとめます。
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茨城県の不動産鑑定の評価依頼
3年に1度、固定資産税の評価替えのための不動産鑑定の評価業務の依頼が、茨城県内でずさんな契約手法で行われているという情報、これは最初に朝日新聞が、1月末に伝えたもので、2月28日の東洋経済誌が同じトピックで報告をしています。
ローカルな話題ですが、繰り返しの報道で内容が明らかになりました。
固定資産税の評価替え
固定資産税は3年に1度評価替えがあります。その際、税を集める市町村の税務課が、全国約40万地点の評価を不動産鑑定士に発注するわけですが、記事によると茨城県の44市町村のうち、30市町村は県不動産鑑定士協会と契約、随意契約で発注先を決めるということになっています。
随意契約で不動産鑑定
随意契約とは、複数の参加者が価格を競う競争入札によらず、適当と思われる相手を選んで結ぶ契約方式で、鑑定士の決定は、協会に”丸投げ”となるということです。
問題点は、その際に支払われる報酬額が、最大で4倍超の開きがあることがわかったのです。
鑑定士に支払われた委託金の県内平均は4万8832円。最も高かったのは随意契約で委託している鹿嶋市で、6万7740円。一方、最も低かったのは今回から一般競争入札を実施しているかすみがうら市の1万6774円。両市の間には、4倍以上の開きがあった。―朝日新聞 https://www.asahi.com/articles/ASP1V71MKP1KUJHB007.html
不動産鑑定に6億4千万円
茨城県の県鑑定士協会の会員は約60人だそうで、6億4000万円を60人で割ると、単純計算で1人1400万円になるという計算で、関係者はそれを自らが「ボーナス」と呼んでいるとのことです。
東洋経済誌ではそれについて
複数の鑑定業者が作った見積書が市町村ごとに同額か近い金額でそろっている。
朝日新聞も
開示資料を分析すると、複数の業者がほぼ同じ金額で見積もるケースが目立っている。
と報告しています。
複数の業者がほぼ同じ金額を提示
ざっと金額の例を拾い上げるとすると、水戸市の業者の上げる見積金額は8人が5万9000円、4人が5万9500円。
水戸市の8人の内、同じ業者を含む2人が、那珂市に提示した見積金額は4業者が4万8500円の同額。
さらに、鉾田市の見積もり金額は4万9000円。
すべてが同じ業者ではないため、
「それぞれが業者間でまるで申し合わせたように金額を決めているようにも見えなくない」(東洋経済)
という指摘を受けています。
そして同じ業者が、競争入札の笠間市では約2万9000円で落札したというのです。
つまり、入札なら、半額の業者見積となるところを、「随意契約」でその倍額を支払っているところが問題なのです。
そもそも、土地の鑑定には、それだけ高額の報酬を支払うだけの手間がかかるのかというと、なぜかこのあたりも一律でなく、比べると4倍から6倍の報酬額の差があるというのです。
しかも、「取引事例を入れて、評価地点の条件を入れれば自動的に評価額を算出するパソコンソフトもある」というのですから、いったい何にそんなに時間や手間がかかるのかも疑問なところといえます。
常陸太田市と北茨城市の担当者のコメント
常陸太田市の担当者は、朝日新聞の取材に
「見積額が一致したのは結果でしかない。取りまとめを協会にお願いするのも問題ないと聞いている」
と回答。
他に、北茨城市の担当者は
「他市町村との比較をしたことがなく気づかなかったが、かかる時間の違いは大きすぎる。1日でできるのであれば金額も下がる。次回に向けて精査したい」
とコメントしたということです。
このような出費を避けるには、上記の随意契約ではなくて、公共工事に用いられるような競争入札とすればいいわけなのですが、なぜそうならないのか。
このようなずさんな発注は、茨城県の不動産鑑定士、永井義久さんが、「でたらめな契約に愛想が尽きた」として、調査に協力したということで、不動産鑑定士の内部でもひそかに問題になっていたことのようです。
取材を受けた方の自治体では、「周囲の市町村に比べて価格が高いので、今後入札も検討する」(鹿嶋市ではの担当者)という意見もあり、今後は報酬額を適正な金額にできるように選ぶことが望まれます。
以上は、私たちの固定資産税評価に直ちに反映するようなことではありませんが、いずれにしても、費用の掛かり過ぎは押さえたいところ、自治体にもできるだけ、適正な見積もりをお願いしたいところです。