スルガ銀行の不正融資問題、第三者委の報告の後の、朝日新聞の今日の社説です。
不正がここまで蔓延していた以上、スルガ銀行は「解体的出直しを図るしかない」という内容です。
スポンサーリンク
スルガ銀不正 解体的出直しが必要だ 朝日社説
まるで小説かテレビドラマのような出来事が、「優等生」とされた地方銀行を舞台に繰り広げられていた。驚くしかない。
スルガ銀行の第三者委員会が300ページに及ぶ報告書を公表した。行内のメールのやりとりや役職員へのインタビューをもとに描き出されたのは、おおむね次のような惨状である。
創業家がトップに君臨する取締役会は、業務を執行役員に丸投げし、営業成績だけを求めてコンプライアンスには目をつぶる。営業を担う執行役員は、融資に慎重な審査部門を恫喝(どうかつ)し、シェアハウス向けなどの危うい不動産融資に突き進む。
過大なノルマを課せられた支店では、上司が「数字ができないならビルから飛び降りろ」と部下を叱責(しっせき)。パワハラで精神的に追い込まれた行員は、書類の改ざんにまで手を染める。
揚げ句に積み上がったのは、顧客を窮地に追い込み、銀行にとっても焦げ付きの危険が高い融資の山だった。
今回の調査には時間的制約もあり、不正融資の総額や関与者の数など、全容は明らかではない。さらに解明が必要だ。はっきりしているのは、これだけ不正が蔓延(まんえん)していた以上、銀行業を続けるのであれば、解体的出直しを図るしかないことだ。
創業家の岡野光喜会長以下、5人の役付き取締役が退任したのは当然である。第三者委は、取締役としての善管注意義務違反や、一部の法令違反などを指摘した。スルガ銀は退任者を含む取締役や監査役の法的責任の有無を調べ、しかるべき措置をとるという。不正に関与した従業員の処分とともに、厳正に対処すべきだ。
有国三知男・新社長は、トップダウンの企業文化や業績至上主義を改め、首都圏など都市部の不動産融資偏重も見直す意向を示した。いずれも必要な措置だが、実行は容易ではない。
目先のもうけや規模を追う姿勢と決別し、顧客と社会の信頼をどう取り戻すのか。有国氏自身、第三者委に一定の経営責任を指摘された立場でもある。背水の陣との自覚が必要だ。不正融資で損を被った顧客にも、誠実に向き合わねばならない。
金融庁も、これだけの不正を見過ごし、高収益の銀行として持ち上げてきた責任を感じるべきだ。検査を徹底し、厳正な処分で臨む必要がある。
スルガ銀は極端な例だとしても、日本の組織や金融ビジネスのあり方を考えるうえで、今回の報告書は示唆に富む。企業人や不動産投資を考える人には、一読をすすめたい。
解体には金融庁の慎重論も
不正問題でスルガ銀の株価はピークの5分の1程度まで下落。
18年3月期決算の純利益は、シェアハウス融資の焦げ付きで前年同期比8割減となった。
今後、問題がある不動産関連融資の焦げ付きで、さらなる貸し倒れ損失も出かねない。
銀行には現在も利用客がいるのはいうまでもなく、金融庁幹部の一人は、「銀行をまっとうに立ち直らせることが行政処分の狙いだ。悪質な不祥事があったから重い処分を下せばよいわけではない」と言っています。
地元、沼津市の反応は
スルガ銀行は1887年、旧青野村(現沼津市青野)で前身の貯蓄組合「共同社」として創業。
辞任した岡野光喜前会長の曽祖父にあたる創業者の喜太郎氏(1864~1965)は多額の寄付や奨学金開設の功績で沼津市初の名誉市民となり、同行は市の指定金融機関だ。
市幹部は「沼津にとって大切な企業なので立ち直ってくれるよう期待する」と語る。