スルガ銀行(静岡県沼津市)のシェアハウス投資向け融資で多数の不正があった問題で、同行の第三者委員会(委員長=中村直人弁護士)は7日、調査報告書を公表しました。
不動産投資向け融資で資料改ざんなどの不正が横行し、役員や支店長、多くの行員が関与したことが第三者委員会の調査で明らかになり、その実態に驚きが広がっています。
今日は創業家出身の岡野光喜会長兼CEOが、スルガ銀行の全社員に、直接、異例のメールを送っていたというニュースです。朝日新聞のコラムよりお伝えします。
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岡野会長が全社員にメールを
そのメールが送られた時期は、7月中旬だということです。メールは、岡野会長から、全社員に宛てて直接送られました。
岡野会長のメールの内容は
岡野会長は30年以上、経営トップの座を占めていましたが、現場の仕切りは実弟の故岡野喜之助副社長に任せることが多く、こうしたメールが届くのは異例だったといいます。
内容は次のようなもので、お詫びと呼びかけ。また今後の社内の訪問についての意思などが記されていたようです。
「経営者として心よりおわび申し上げる」「スルガ銀行で働いていることを誇りに思い、安心して仕事できるよう経営が責任を持ってこれからの道を必ずつくりあげていくことを約束する」
「創業以来幾多の困難を乗り越えて今日に至ったように、全社員の心をひとつにし、共に歩みを進めていこう」
「順次皆さまのもとに伺い、忌憚(きたん)のない意見、おもいを聞き、未来への行動や変化に反映していきたい」
メールを受け取った行員の一人はは「米山明広社長(当時)は辞任させても、自分は経営トップに居座り続ける意欲のあらわれ」と受け止めたといいます。
岡野氏がそれまで営業現場に来ることなどはなく、上のような意欲は記されても、実際の現場訪問はないままに、この後間もなく、岡野会長は辞任が決まることになりました。
第三者委員会の岡野会長についての記載
第三者委員会の調査報告書には、岡野会長の責任については、「関係者の法的責任・経営責任の有無」の項には、善管注意義務違反と「最も重い経営責任」が、次のように記されています。
個別の不正、又はシェアハウスローンに係るリスクを具体的に知り又は知り得た証拠はない。
一方で、以下の点(以下、併せて「本件問題発覚後の諸行動」という。)に関しては、善管注意義務違反(一部法令違反)が認められる。
2017 年 7 月 5 日に開催された第 4 回サクト会議の結果、シェアハウスローンのリスクや問題が判明し、会社に著しい損害を与えるおそれがある重大な問題が発生していることを認知したにもかかわらず、取締役会を開催して報告・付議をすること、及び監査役に直ちに伝達すること(会社法 357 条)を怠ったこと。
同年 10 月 19 日の取締役会で、上記問題について、担当取締役に十分な説明を求めず、また自ら説明もしなかったこと。
同年 10 月 19 日の経営会議で、融資の基準(業歴 5 年以上、完成時一括実行等の条件)が改定されたにもかかわらず、同月 31 日の社内会議で事実上それが覆されてしまったことについて、経営会議決議違反を認識しつつこれを是正しなかったこと。
「本件の構図」として述べたような会社の仕組みを構築してしまったことについて、法的責任は認められないが、その諸要因について、故岡野副社長と同等の最も重い経営責任がある。
第三者委の中村直人委員長(弁護士)は、米山社長他のトップの多くを含めて、「大事な情報は何も上がってこない。(経営陣は)雲の上で下界を見ていた」と言い表しました。
岡野会長が受け取った金額の推定
また、一部週刊誌では、岡野会長が受け取った金額を類推して、「30年間毎年、億に近いカネを受け取っていても不思議はない」と報じています。
スルガ銀の有価証券報告書によると、岡野会長の役員報酬は13~17年度で毎年約2億円に上ることが記録されているためです。
また、スルガ銀の株式を24万5000株も保有。年間で約515万円の配当金を得ていたのも間違いないようです。
家賃150万円のマンションと沼津の『沼津御用邸』
岡野氏は、その資産にふさわしく、32階建ての高級賃貸マンションの高層階に居住。
静岡県沼津市の自宅「本家」は敷地面積約220坪。
周囲を石垣で囲われ、正面は重厚な門で閉じられています。純和風のお屋敷は、明治時代に市内に建てられた『沼津御用邸』にそっくりと言われています。
所有者は、沼津市の高級住宅街「スルガ平」を開発・分譲などをしている岡野会長の弟が社長を務める不動産管理会社だということです。
岡野会長の役員報酬や退職金についてスルガ銀行に問い合わせたが「辞任の事実自体、会社として把握していないのでコメントできない」と回答を避けているということです。
親族がスルガ銀行の株を保有
問題は、岡野会長の親族が関与する資産管理会社などが発行済み株式の約15%を保有していることで、未だ一定の議決権を一族が握っている状況です。
それがある間は、経営の実権を岡野一族が握り続けているということになりますが、これら株式についても、今後、何らかの沙汰があると思われます。
というより、株式以前に懸念されるのは、スルガ銀行それ自体がどう存続するかということですが、それについては、また別な記事に記載します。