茨城県日立市と茨城大工学部が連携し、空き家の再生プロジェクトに取り組んでいるというニュースです。
学生たちが共同で暮らすシェアハウスとして有効活用を目指しており、市と大学側は「空き家対策のモデルケースにしたい」と話しているということです。
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日立市で「空き家利活用プロジェクト」
今回報道されたのは、昨年から企画されていたプロジェクトで、日立市と市内の茨城大工学部が連携し、同学部の学生グループが空き家を改修して共同で暮らす「空き家利活用プロジェクト」というものです。
茨城大工学部都市システム工学科の熊沢貴之准教授と同学科の学生有志が中心になり、候補物件の改修プランを作成し、実際に改修も行いました。
築44年の木造住宅
日立市の西成沢町にある空き家は築44年の木造2階建て住宅。所有者は、台原町に居住している60代男性です。おそらく、親御さんが居住していたものと思われます。
約3年前から空き家になっており、所有者の同意を得て、学生たちがリフォームに着手したものが、完成しました。
改修の内容は、学生たちが県建築士会日立支部の会員から技術指導を受け、部屋の畳を取り除いてフローリングにするなど内装のリフォームを手がけたという本格的なものです。
学生が賃貸で利用
来年4月から学生4人が賃貸で入居することが決まっています。住居は、壁を取り払って2室をつなげた交流スペースを設けるなど、いわゆる「シェアハウス」の形態で、交流スペースでは、地域の子どもたちが立ち寄り、学生が学習支援することなども想定しているということです。
プロジェクトの一員で来年4月から入居する同学科4年の鎌田吉紀さん(22)は「地元に溶け込みながら、地域のまちづくりについて学べるのが楽しみです」と述べる通り、この空き家の所在地は、大学から近い地域にあるため、利用者にとっては利便性の良い場所となっています。
このあと利用者が途絶えることもなさそうです。
日立市は補助金200万円「空き家対策のモデル」
市は今年度予算に補助金200万円を計上。「全国的にも珍しい取り組み。空き家対策のモデルにしたい」と意欲を見せています。
熊沢准教授の挙げるプロジェクトの内容は
(1)増加する空き家の利活用の課題を見つける
(2)地域住民と空き家問題を共有する
(3)まちづくりを考える拠点にする
空き家の所有者にとってのメリットは
今後、学生が賃貸で利用するとのことで、空き家の所有者は、家賃収入が得られます。
また、その賃貸収入で、固定資産税の負担軽減になるという利点もありますね。
さらには、大学の学生が改修を請け負うということで、リフォーム費用が低額で抑えられるという利点もあると思われます。
喜ぶ空き家の所有者は
空き家を所有する同市台原町の川上久雄さん(68)、睦子さん(67)夫妻は「空き家のままだと不用心。学生さんに快適に住んでもらい、地域の活性化につなげてもらいたい」と期待を寄せているということです。
茨城県日立市内の空き家状況
同市が2016年に実施した調査で市内に2878戸の空き家が確認。
今年5月現在では約3100戸の空き家があり、2年間で200戸以上も増えています。
空き家率は4・1%
空き家率は4・1%にとどまるものの、市域の山側には1960〜70年代に開発された13カ所の大規模団地があり、今後はさらに高齢化が進み、空き家が急増するとみられています。
山側団地というのは、低山の上、または傾斜地に作られたこの地域特有の住宅地であるため、坂の上り下り等が困難、スーパーまでの 距離が遠い、バス路線が廃止されたり、十分でないなど、平地以上に高齢者には生活がしにくい場所となっているためです。
大学に近い空き家の活用 まとめ
学生グループは当初、徒歩や自転車での通学を前提に、同市中成沢町4丁目の同学部から半径2〜3キロの5戸について現地調査を実施、間取りをはじめ、トイレやエアコンなどの設備、建物の構造などを調べて候補を絞り込んだのがこの家だということです。
まず、何よりも、大学に近いということが必須の条件だったわけで、大学に近いところは、学生を対象にした空き家の活用もあり得るということが、これでわかりました。
また、記事内には書かれていませんが、業者ではなくて学生がリフォームをするということで、業者に頼むよりも費用が抑えられるという点が、空き家の所有者にとっての何よりの利点ではないでしょうか。
駅に近い、大学、病院、空港など、地の利点と周辺施設の見直しによって、空き家活用に道が開かれることもあるかもしれません。
地方では、どうしても売れずに「塩漬け」になってしまう空き家も増えますので、このような活用の道を、自治体の協力の上、共同で進めていくことがこれからの課題となると思います。