夫の父は、賃貸アパートと賃貸住宅を2軒持っていました。
賃貸住宅の方は、ガレージ軒住宅であった建物を解体、跡地は駐車場として、いわゆる「土地活用」をしています。
もう一つのアパートの方は、まだ入居者がいる状態でしたが、2005年頃に売却したといいます。
先代から相続した土地でもあったのに、父はなぜアパートを売却してしまったのか。収益不動産の売却について記します。
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父が所有した賃貸アパートと住宅
賃貸住宅の方は、ガレージ軒住宅、借り手を募らなくなってからは、物置として使っていましたが、数年前に200万円をかけて解体。
この土地は区画は小さく、自宅の隣にあるので、自宅を売却する時にそのまま駐車場として利用できるスペースです。
そして、もう一つの賃貸アパート、そして、街を取り巻く状態は当時はどうだったのでしょうか。
相続でもらった土地に賃貸アパート
このアパートは、夫の父が 相続でもらった土地にアパートを建築。26年間賃貸住宅として貸出ていましたが、2005年頃に売却。マンションの駐車場として、マンション所有の会社の買い手がつきました。
夫の父のことなので、よくはわかりませんが、そのままアパート経営を続けなかった理由は何なのか、夫と推測してみました。
衰退する地方都市の町
夫の実家とアパートのあった市は、県庁所在地です。かつての人口は30万人でした。
家もアパートも、駅周辺の極めて便利の良いところにあったことになります。
シャッター街となった町
まず、夫の父が居住していた家は、駅からまっすぐの大通りにある電気関係の店舗です。ですが、他の地方の都市と同じく、現在はシャッター街となっています。
夫の父も、 その後は店も事務所も閉めておりますので、自営業をしながらそこに住んでいて街の景気や、衰退が目に見えたことが、アパートを手放した一番大きな原因だと思います。
賃貸住宅15000戸が空き家
当市は、県庁所在地なのですが、それだけに賃貸物件も多く、2013年時点の、賃貸の空き家数は15000戸であり、県で一番多い数字でした。
現在は、賃貸空き家率は14%、戸建ても含めた空き家総数では、16%の空き家率です。
夫の父が所有していたアパートとあった土地に関しては、駅からも徒歩13分ぐらいと、大変立地は良いところでした。
またその時点で入居者も居たといいますが、相続した土地を手放してしまったのは惜しくはなかったのでしょうか。
町の経済状況に詳しかった父
おそらく父は商売をしていたため、街の経済動向に敏感であり、また26年経ったアパートを、建て替えするか維持するかと考えた時に、もはや収益は見込めないとして売却することにしたのでしょう。
実際どのくらいの金額で売れたのかということまでは、夫も聞いていませんが、土地はもともと相続した土地で元手ががかかっているわけではなく、 アパートの取り壊し費用を引いたとしても 、ある程度の額が手元に残ったように夫は言っています。
ただ、母が後ほど私に話したところでは、まず言ったことが「売れて良かった」であり、「お金が入って良かった」ではないので、やはり、手離せるかどうかを、まず心配していたようです。
78歳の父の「終活」でアパート売却
また、父は若く見えたものの、売却時が78歳でした。なので、おそらく自分の亡くなった後のこともいろいろ考えてくれていたに違いありません。
その頃はそういう言葉はまだありませんでしたが、いわゆる「終活」であって、貸家とアパートの両方を終活に向けて準備をしたこととなります。
裕福な両親でもそれほどお金は残らない
夫の両親は人を使って会社をしていたため、当時は収入も預貯金も十分ありました。
また年金暮らしになっても、 夫の母も同じように仕事をしていたため、 父とほぼ同じ額の年金を受け取っていましたので、現在80歳を過ぎており、その年代の人としては条件はかなり良い方だと思います。
そこに、上記の土地を売って、収入はあったはずなのですが、それでも老後になってしまいますと、最後に母の面倒を見られるかどうかという程度の金額しか残っていないと夫はいいいます。
もし賃貸アパートを相続していたら
もし、夫の父がこのアパートを残していたとしたら、どうなっていたでしょうか。
その時は、夫か夫の兄かが相続することになったと思うのですが、売ってしまったのが、少々もったいない気もしますね。
でも、アパートがあったら収益を得続けることができたかどうか。
兄弟は空き家2軒どちらも相続したくない
母が現在住んでいる実家と私たちが住んでいる父名義の家2軒は、これから売却処分しなければならず、売れるか売れないかも危ぶまれています。
空き家が2軒あっても、夫も兄も要らないのですから、もし、そこに老朽化したアパートが残っていたとしたら、相続の際にひじょうに大変なことになったと思います。
夫は、家が売れなければその時は相続放棄をしたいと言っているくらいですから、そこに賃貸物件があったらそれ以上にたいへんだったことでしょう。
私のように実家の空き家が残ったところの話ではありません。ならば、まだ土地の値段がそれほど下落していない時に、使った投資物件をきちんと父が処分したことは、息子たちにしてみればありがたい話だったと思います。
収益物件のアパートも早めに売却を
高齢になって、相続税対策ということで、アパート運営を始める人が非常に多いのですが、順調に運営ができていて、また土地も値上がりがしないまでも維持が見込めるというエリアであれば 、そのまま相続してもいいかもしれません。
しかし、明らかに入居者が少なくなったり、街の衰退が目に見えるようになったりしたら、やはり早めの売却をお勧めしたいと思います。
土地が「負動産」なら建物は建てない方がいい
地方のアパート経営は、多く相続税対策のために行われたわけですが、普通の戸建であっても売却する時には、ゼロ円でしか売れない時代です。せっかく、相続時の対策をしたのに残念ですが、その場合はやはり土地を売るしかありません。
私たち夫婦にしても、2軒あるうちのどちらでももらおうと思えば、そのまま無償で相続できます。しかし、土地が既に負動産となることが分かってるのであれば、そこにそれ以上のお金をつぎ込むべきではないと思います。
仮に1500万の家を建てたとして、20年経って不要になった場合、土地の立地が良くなければ、いくら家が良くても誰も住みません。 多少安くても良い家なら遠くても住もうという考えそのものがなくなってきているからです。
その場合の土地の値段はゼロ円、そして家屋の解体費だけが200万かかります。
更地にして手離せればいいですが、買う人がいなければ、固定資産税と維持費がかかるだけになります。
負動産となるだろう土地には基本的に家は建てられません。賃貸物件に至っては言うまでもないでしょう。
もはや土地を売っても利益にはならない
ちなみに私が自分の実家を売った市は、同じ2013年での賃貸空き家率が30%、父が空き家を売った町の14%の倍以上でした。
戸建てを含めた空き家率が18%というもので、県内では最悪のエリアでしたから、いかに人口が急激に減ったか分かると思います。そこで、条件の悪い空き家を売るということは至難の技でした。
皆様にはそうならない前に早めの売却をお勧めしたいと思います。
もはや土地を売っても利益にはなりません。しかし所有をしているよりは、はるかに良いのです。