マンションに所有者不明の空き室が増加しているというニュース、これまでは空き家問題は、戸建てを中心に語られてきましたが、マンションとて例外ではありません。
それどころか、集合住宅の場合は、建物の維持管理を住民皆が共同で行うとあって、戸建の近所迷惑などよりももっと深刻な自体が起こります。日経新聞の記事より考えます。
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居室の一割以上が空き室に
埼玉県内で起こった事例で、24戸のうち3戸の区分所有者の氏名と住所を特定できないという事態が起こりました。
それまで空き室のままで管理費などの滞納が続いていたといいいます。
支払期日から5年近く経過し、支払請求権の消滅時効も迫っていたことから、管理組合は家庭裁判所に対し、不在者財産管理人の選任を申し立てる決議をしたといいます。
不在者財産管理人の選定とは、相続放棄の時にも行う手続きの一つで、管理人が選定されれば、その管理人の権限でその部屋の売却ができるようになるというものです。
しかし、同管理人に部屋を売却してもらっても、滞納分に見合う売却代金を得られるかは判らないといいます。
その場合は、その時期の滞納分は埋まらず、マイナスということになってしまいます。
なぜ空き家ができてしまうのか
戸建てと同様空き家のできる理由は、相続時にあります。
相続人がわからない
高齢化の入居者が多くなると、死亡する人も当然増えます。
ところが相続人がわからない、いわゆる孤独死のケースとなった場合は、家はそのまま空き家になってしまいます。
管理組合が、弁護士に依頼して相続人を見付けても回収できない場合も多く、運よく相続人が支払いに応じて回収できたとしても、多大な労力やコストがかかり、連続すれば資金が足りなくなるでしょう。
相続放棄のケース
また売れない家は相続したくないという意向で、相続がされなかったという場合も戸建てと同様に増えています。
それ以前に管理費の滞納があるということになると、それを聞いた相続人が放棄をすることもあります。
戸建てであればそれまでですが、マンションの場合に困るのは、その欠落分の負担が、他の居住者に回ってくるということです。所有者不明土地同様、マンションの場合は一層深刻な問題となります。
空き室に予想できる問題
マンションの空き家問題としては、
・管理費が徴収できない
・周囲の住環境が悪化する
・建物に関する意思決定の賛否が得られない
というのが今回の記事内に提示されているところです。
価値が下落する
それ以外にも、空き室が多ければ、まず、そのマンションは売れにくくなるということが、売却の際のもっとも大きな問題でしょう。
あちらもこちらも空き室です、となれば、買い手には魅力がないマンションと思われてしまうことになります。
管理費の負担が大きくなることも予想されるため、結局、売れないことになり、売却価格も下がります。
滞納された管理費は既に負の遺産となって、売却時には、その分も値引きしなければならなくなります。
建屋の管理は引き続き行わなくてはなりませんので、あまりにも空き室が増えれば、管理費の負担が大きくなることも考えられ、いずれにしても管理がむずかしくなる事態が起こります。
建物の維持管理に必要な同意
そして、極めつけは建て替えということになったときに、住民の約5分の4の賛成が必要になるために、所有者不明の空き家では賛否の可決が取れません。
もし相続人が見つかって同意が取れても、5分の1の修繕積立金が未納のままでは、修繕や建て替えが、他家の分まで住民が負担するのではなくては、そこでとん挫して、半永久的にできなくなってしまうことも考えられます。
全員の同意が必要な解体
さらに、建て替え以前の解体については、民法の規定により、区分所有者全員の合意が必要です。
所有者不明の空き家マンションが一つでもあれば、金銭の負担で解決することではありませんので、その場合は、マンションがゴーストタウン化しようとも、そのまま解体できずに放置するしかないという事態に陥ります。
国土交通省の調査では14%だが
国土交通省が16、17年にマンション管理組合を対象に実施した調査によると、回答した639組合のうち、連絡がつかない所有者らが存在するのは87組合(14%)に達した。87組合のうち築30年以上40年未満が24%、築40年以上のマンションが29%を占める。
飽くまでこれは現在の数値であり、これから一層高齢化が進めば、所有者不明の問題は戸建てや土地ばかりでなく、当然マンションにおいても増加すると予想されます。
望まれる法改正
その改善点として
不動産法制に詳しい吉田修平弁護士は「マンション住人の自治を前提とした区分所有法は実態に合わなくなっている」と指摘。「区分所有法の見直しや新たなルールも幅広く議論していかなければならないのではないか」と語る。
戸建ての土地と同じように集合住宅でも、所有者不明の区画がある場合には、残る住民で意思決定ができるように法律を改正することが望まれるでしょう。
まとめ
今回はマンションの所有者不明問題について述べました。住み替えを予定している私たちも今後はおそらくマンションに住む可能性が高いです。
とりあえず、このような実態があるということを踏まえて、住み替え先を探す際に役立てていきたいと思います。
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