前の記事で、国土交通省の基準地価が27年ぶりの上昇、上位3位を荒川区が独占したことをお伝えしましたが、それに関連した興味深い記事を見つけました。
荒川区が上昇するということは、地価下落の前兆だという内容です。
はたして本当のことなのでしょうか。
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基準地価は上昇したが
基準地価は都道府県が取りまとめた7月1日時点の地価で、土地取引の指標となるものです。
そして、荒川区の上位独占については、国土交通省は、「上野東京ライン開通など都心方面へのアクセスのよさから住宅地としての選好が高まっている」と分析をしています。
また、訪日観光客の増加も目に見えるものとなっています。とにかく、上野近辺を歩いている人たちは、日本人よりも外国人の方がはるかに多い。
こんなに日本に人気があったのかと驚くくらいです。
ただし、この基準地価については市区町村単位が多く、もっと細かく見てみないと同じエリアでも必ずしも同じではない。
そのため、東京都の住宅地769地点の分析を元に、東洋経済誌が分析を行ったその結果を見てみると、どうも基準地価が上がったからといって、単純に喜べるような事態ではないようなのです。
「荒川区」が地価上昇の真の意味
上位3位を独占した荒川区なのですが、住宅地として人気が出てきたのは、この1~2年に始まったことではなく、これまでも徐々に伸びてきてはいた、そのため、「上昇率1位という実感はない」と地元西日暮里の不動産屋さんさんは言うそうです。
そして、荒川区が上昇したことについては、次のような見立てが。
「荒川区の地価はジェット機の後輪と同じ。離陸するとき地面から離れるのは最後で、降下するときは真っ先に下がる」
(東京・町屋駅近くの不動産業小林商事社長)
これだけでは、一種のジンクスのようにも思えますが、何やら聞き捨てならない意見です。
「しかも、1980年代のバブルのときも、2006年から発生したミニバブルのときも、荒川区の地価が大幅上昇した直後に全国の地価が下落し始めた」というのですから、荒川区、しかも上位3位独占というのは、明らかに土地下落の前触れといえるでしょう。
都内の上昇率の上位30地点を見てみると
もう少し詳しく記しますと、東洋経済誌が独自にデータを作成した上での根拠のある話です。
表は東洋経済のサイトからお借りしました。ヤフーニュースだとこの表が転載されていないため、いまいち話が良く伝わりません。
あらためてそれを参照しながら見てみると、2018年都内の上昇率の上位30地点のうち7割以上が城北地区です。
逆に城南地区は11位の大崎1地点のみと、明らかな偏りが見られるといいます。それはどういうことか。
城北、城南の地価上昇の分布
城北、城南は大まかにいって、下のような区分です。
城北:北区・豊島区・板橋区など。練馬区の東上線に近い北部。
城南:目黒区・大田区・品川区など。世田谷区の東急沿線など南東部。
つまり、いわゆる住宅街とされていたところ、比較的地価の安いところが城北で、これまで地価が高いとされていたところが、城南です。
そして、その城南地区は、まったく地価が上がっておらず、上昇が急にストップしてしまったということなのです。
大雑把に言ってしまうと、これまで東京でいちばん地価が上がっていたところがもう伸びない。
そしてそれは1箇所2箇所の限定的な話ではなく、軒並みそうなっている。つまり、それは、日本の地価はもう上がらないというのと同義なのです。
千代田、中央、港区、いずれも地価は上昇なし
他にもポイントをあげて見ると、同時に次のようなことが言えます。
・都心3区(千代田、中央、港)は30位内に含まれてもいない。つまり、これまで高騰を続けてきたこれらの地区は、地価が上昇していない。
・住みたい街ランキングトップ常連の恵比寿や吉祥寺は上昇余地が乏しくなっている。
荒川区上昇の真の意味は他が落ちたため
そして、その代わり、これまではたいして顧みられることのなかった、荒川区が上昇している、ということなのです。
言い換えれば、これまで右肩上がりに伸びてきたところが皆横這いになってしまったので、荒川区が突出してきたということのようなのです。
他の地点も皆そろって上昇を続けているのに、それを超える勢いで荒川区が、という話ではなかったのですね。これでは単純に喜ぶわけにはいきません。
どうなる日本の地価?
こうなるといよいよ日本の地価が心配になるところですが、しかし、よく考えてみると、これは地方では、もうずっと以前から起こっていたことなのです。
今、それが東京にも及んできたということだけのような気がします。
地方の駅は、駅前の地価上昇が激しかったところもシャッター街というところが少なくなく、郊外の土地は値下がりどころか、まったく売れなくなっているのです。
東京はまだ人口が多いですので、いきなりそれと同じにはなりませんが、徐々に地価が下がり始めているといっても不思議ではありません。
東京の土地の値段よりも、地方の土地はこれからどうしたものか。
27年ぶり基準地価上昇のニュースにいったんは喜んだものの、これからの動向が心配されるところです。