スマートデイズ社運営の女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」のシェアハウス投資の不正融資問題で、スルガ銀行が創業家出身の岡野光喜前会長ら旧経営陣9人に総額35億円の損害賠償を求める訴訟を静岡地裁に起こしています。
請求額は35億とされましたが、スルガ銀行・スマートデイズ被害弁護団は、あまりにも少ない金額だと批判。一体どのような金額が妥当なのか、賠償額を含めて、旧経営陣の提訴についての詳細を毎日新聞の記事を元にお伝えします。
スポンサーリンク
スルガ銀行側の算出した賠償額
訴訟を起こされたのは岡野光喜氏(前会長)、岡野喜之助氏(故人、元副社長、請求対象は相続人)、米山明広氏(前社長)、白井稔彦氏(前専務)、望月和也氏(前専務)、岡崎吉弘氏(元専務)、柳沢昇昭氏(前常務)、八木健氏(取締役)、麻生治雄氏(元専務執行役員)の計9人です。
金額を決めるにあたっては、外部の弁護士と社外監査役で構成する「取締役等責任調査委員会」(委員長、小沢徹夫弁護士)が調査報告書をまとめ、それを元に調査委員会と現経営陣が協議をして決めたということです。その最終的な金額が35億円というものです。
スルガ銀行旧経営陣が与えた損害額は
各人が与えた損害の金額を算出したものは次の通りです。
最も多額なのは営業・審査両部門の最高責任者だった岡野喜之助元副社長で、銀行に与えた損害額を約307億円との計算でした。
岡野光喜前会長は損害額は約34億~43億円にとどまる。その理由は、通帳改ざんや融資リスクに明確に気づくことができたのは17年7月時点だという時期が遅いためです。
また、融資の陣頭指揮を執り、審査部門を脅して融資を認めさせていた麻生治雄・元専務執行役員については、銀行に与えた損害を約220億~298億円と算定。
残る6人については損は約34億~86億円というものです。
支払い可能性などを考慮
損害額が上の通りなら、上の金額で請求すればいいのではないかと思われますが、個人に対する請求としては非現実的な金額であるとのこと、実際の支払い可能性などを考慮し、それがトータルで35億という数字になったということです。
これは、取締役等責任調査委員会の小沢委員長が「相当と認められる金額にしたつもりだ」と説明しました。
被害者弁護団は1000億円を主張
これに対して、被害者弁護団である、「スルガ銀行・スマートデイズ被害弁護団」の団長を務める河合弘之弁護士は、少なすぎると批判。
旧経営陣が不正融資を放置していたためにスルガ銀行が被った損害は「1000億円を下回らない」と指摘。損害賠償請求額を1000億円程度に増やして株主代表訴訟を提起する考えを表明しました。
岡野会長のファミリー企業からの回収は
それ以前の報道では、岡野光喜ぶ会長の創業家関連企業への融資の総額は488億円とされていました。また、岡野会長がそこからさらに、69億円の融資を受けていた。
そして、その両方が、全額返却、回収されるとされていたのですが、その話はどうなったのでしょう。賠償額よりもはるかに大きな金額です。
また、そもそも訴訟そのものが、岡野家の影響力を排除するという目的でもありました。
スルガ銀行では、岡野家ファミリー企業向け融資の焦げ付きに備え、貸し倒れ引当金134億円も計上されています。
スルガ銀行社長の有国氏の方針は
有國社長は中間決算では、次のように。
ファミリー企業向け融資はできるだけ早く回収する。(ファミリー企業は)依然として株式を保有している。そこも解消したい。今回の問題の一つの原因は、創業家が株式を所有して影響力を行使し、そこがガバナンスの緩みにつながった。資本関係を断ち切ることがスルガ銀行の再生に必要だと考えている。できるだけ早く資本関係を整理したい。
岡野関連企業融資は12月に公表予定
ファミリー企業への不適切な融資の問題は、9月に設置された取締役等責任調査委員会と監査役等責任調査委員会が調査中で、この日、両委員会とも「12月中に結果をまとめ公表する」と説明しています。
まとめ
銀行でお金を借りた人が、返済ができなくなった場合どうすればいいかは、一般の人以上に銀行の方が良く知っていることでしょう。
関連企業所有の資産も項目に入れるべきではないでしょうか。銀行が融資をしたお金の金額だけではなく、その使い道も追及して、できるだけ回収すべきだと思います。
被害者弁護団としては、それらの資産が目に見えて残っている間は、納得できるはずもありません。岡野会長からは現時点で謝罪もない以上、せめて創業家としての潔い解決を期待します。