少し前に、東洋経済オンラインに「25歳になったら賃貸に住むのをやめるべきだ」という記事があり、コメント欄に批判が起こりました。
賛成した人はあまりいなかったようですが、著者の主張はどういうものだったのでしょうか。
「独身こそ自宅マンションを買いなさい」の本
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著者は、沖有人(おきゆうじん)さん。
不動産コンサルタントとして、マンション情報サイト【住まいサーフィン】を主催され、各誌に執筆でお馴染みの方です。
その記事に先立って、『独身こそ自宅マンションを買いなさい』という本を出版されました。
コメントを書き入れている人の中には、著者が突飛なことを書いているのは、本を売ろうとして、家を買うようゴリ押しをする記事を書いているといううがった見方を述べる方もいます。
若いうちから資産形成を
しかし、そもそも沖さんのいう「25歳になったら家を買え」というのは、何も25歳ということではなくて、「若いうちから資産形成をしなさい」ということなのです。
資産形成に関することは、うちの夫も息子に言っており、そう突飛なことではないと思います。
もっとも、夫の場合は、そもそも家を所有していないので、勧めているのは貯金やそれにつながる投資信託などと言ったもので、いきなり家を買えということではありませんが、家も資産のひとつであることは言うまでもありません。
沖さんの言うことの論旨は、突き詰めて言えば、日本は賃貸に比べて、税法上持ち家が圧倒的に有利なので、それを使わない手はないということなのです。
だったとしたら、それは25歳の若者よりも、「持ち家か賃貸か」論争の一つの答えにもなりそうです。
持ち家が将来を安泰にする「14の理由」
沖さんの述べるその理由を改めて見てみますと
・日本の持ち家率が非常に高いのは、持ち家促進税制で優遇しているからだ
・持ち家と賃貸では、超低金利と優遇税制で持ち家が圧倒的に有利である
・直近10年間の持ち家と賃貸の資産格差は3400万円に及ぶ
・都市圏の単身者の約半数が地方出身であり、実家が首都圏にない
・定年は60歳で、ほとんどの人に退職金は出ない
・定年後再雇用を希望すれば65歳が実質定年になるが、年収は約半分に下がる
・年金支給年齢は68歳が検討されており、金額も多くはない
・90歳までは生きる可能性が高い
・まともな賃貸に住み続ける財力・年収が老後にはない
・定収のない高齢者は、賃貸の入居審査で落ちることが多い
・実家に帰っても、居場所があるとは限らない
・実家は築年が耐用年数を超えていて、住むには状態が悪い
・社会人の間に培った友達は、働いてきたエリアに集中する
・老人ホームに入るには、かなりの現金が必要となる
これを読まれた方はすぐ気がつかれると思いますが、これらは、むしろ若い人のことというよりも、むしろ老後を踏まえたシニアの「持ち家か賃貸か」または「地方か都市移住か」につながるような命題であるように思います。
そもそも、20代の人が、自分が90まで生きるかどうか、その頃の年金収入を含め、身に迫って考えられるとはあまり思えません。むしろ、リタイア後の老後を「持ち家か賃貸か」を悩む、私たち夫婦のようなシニア予備軍にとってこそ、目の前の問題として読まれるべき14カ条かもしれないと思いました。