シェアハウス融資の不正問題を起こしたスルガ銀行(静岡県沼津市)が27日、創業家の岡野光喜元会長ら旧経営陣を追加で提訴する方針を固めたという報道がありました。
さらに、スルガ銀行は、創業家のファミリー企業への寄付を借金返済に充てるなどの不正があったとする報告書を、同時に公表しました。
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岡野会長がファミリー企業へ「寄付」名目で
スルガ銀行が公表した内容は、創業家のファミリー企業への寄付を借金返済に充てるなどの不正があったということです。
岡野家関連企業へ8回47億円の寄付
調査報告書によると、2012~17年に計8回にわたり計47億円が美術品購入などの名目でファミリー企業に寄付されたということで、そのうち38億円が、ファミリー企業がスルガ銀行への借金返済に充てたということです。
つまり、ファミリー企業はスルガ銀行からの借金があったが、それをまたスルガ銀行から引き出したお金で返済に充てたということになります。
岡野喜之助 元副社長の指示
その名目上の寄付を行ったのは、岡野光喜元会長ではなく、その実弟の岡野喜之助・元副社長であり、主に、岡野副社長がそのような不正なやりくりを行っていたらしいです。
調査委は「銀行への返済資金などを融通することが目的だったことは明らか」としています。そもそも、47億円というのですから、相当多額です。
しかし、今回のシェアハウス関連の銀行の不祥事が明らかにならなければ、これもわからないままになったのでしょう。
第三者委員会の最初の報告書にもあった通り、創業家との関連がいちばん大きな問題でした。そして、この47億円、実際はもっと不明金もあったのかもしれませんが、それは丸々銀行の損額となったのです。
岡野光喜元会長、喜之助氏らへ不明金
またファミリー企業が持つスルガ銀株について、同行からの借金の担保設定を15年に解除する際、回収すべき資金を求めず、6億円超の損害が出たといいます。
ファミリー企業への融資残高は、金融庁などからの指摘を受けて減少。「02年の1200億円から直近で488億円に縮小した」といいますので、それまでは、文字通り一桁多い莫大なお金の融資があったわけです。
さらに、ファミリー企業間で融資金の転貸が繰り返されていたといいます。
そのうち69億円は創業家個人、岡野元会長にも流れました。銀行がいわゆる「お財布がわり」となっていた状況でした。
岡野光喜創業家の刑事責任は?
69億円の内訳は喜之助氏が61億円、岡野前会長が7億円など、兄弟間で配分されました。
これら、創業家の行状は、モラルとしてだけでなく、刑事責任が問われないのか、というところがかねてからの疑問だったわけですが、これについて報告書は
「(喜之助氏は)特別背任罪の疑いはあるが、全容解明できず認定は困難」「(岡野前会長は)資金の流れを認識していたと認定できず、刑事責任は認定できない」
などとするにとどめています。
岡野元会長は説明を拒む
喜之助氏は死去したので、受け取ったお金をどう使ったのかは「不明」であり、岡野前会長も転貸された資金使途などの説明を拒んだといいます。
また、会見した調査委の弁護士は「調査には限界があった」と述べています。
損害賠償請求の金額の内容
報告書で認定された損失をもとに、スルガ銀は岡野前会長と喜之助氏(請求先は相続人)のほか、白井稔彦前専務、望月和也前専務、八木健取締役を提訴。請求額計約32億4400万円のうち、岡野前会長は13億円分、喜之助氏は30億円分、他の3人は2億~3千万円分の連帯責任があるとした。スルガ銀はすでにシェアハウス融資不正でも岡野前会長らに計35億円の賠償請求訴訟を起こしている。
スルガ銀1千億円超の純損失
スルガ銀はファミリー企業向け融資での焦げ付きに備え、18年9月中間決算で134億円の与信費用を計上。その影響もあり、19年3月期は1千億円超の純損失となる見通し。
岡野元会長に全額返済の求め
銀行側は、創業家に対して、ファミリー企業向け融資の全額返済を求めているのは、前からお伝えする通りです。創業家の保有株式の売却だけでは返済できない見通しだが、創業家から返済計画はまだ提出されていないということです。
まとめ
岡野元会長の刑事責任については、不正を行っていたのは、弟の喜之助氏であり、喜之助氏がなくなっている以上、「刑事責任は認定できない」とのことなのですが、この点はどうも、疑問が残ります。
また、会見した調査委の弁護士は「調査には限界があった」と言っていますが、それこそ刑事責任を追及するとして、該当機関できちんと内容を調べるべきではないでしょうか。
弁護士その他の職権を持っている機関であれば、通帳はもちろんその他の書類なども当たることができます。責任のある人は本当に亡くなった岡野喜之助副社長だけなのか、その部分を残したまま損害賠償だけを請求するのか、疑問の残る内容ではないでしょうか。