日本銀行が17日に発表した「金融システムリポート」で、不動産向け融資が1980年後半のバブル期並みに「過熱」していると指摘しました。
一方地価その他不動産市場全体に関しては、「過熱状態にあるとは言えない」と状況の把握を述べています。
リポートの内容について、朝日新聞を元にお伝えします。
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不動産向け融資「バブル期並み」
日本銀行は17日に発表した「金融システムレポート」で 、金融機関による不動産業向け貸出が、1980年代後半のバブル期並みに加熱していると指摘しました。
不動産向け融資 GDP比で14.1%。
昨年10月から12月の不動産業向け貸出残高は、国内総生産(GDP)比で14.1%。
「トレンド」といわれる過熱でも停滞でもない範囲、12.8%を大きく上回ったということです。
バブル経済の崩壊する前、90年末以降初めての急激な増加です。
不動産市場全体については
さらに、日銀は不動産市場全体と地価に関する指標については
不動産市場全体のバブル期のような、過度に楽観的な成長期待に基づく過熱状態にあるとは考えにくい
とも指摘しています。
地方銀行の不動産向け融資増の背景
不動産向け融資がそこまで増加したのには、 低金利が続く中、利ざや求めて地方銀行を中心に不動産向け融資を増やしたことが背景にあります。
地銀は10年後に赤字に
リポートは、中長期的な地域金融機関の経営状態の試算も公表しましたが、そこで地方銀行の低迷の予測もあります。
企業などの借り入れがこれまでのペースで縮小すると想定した場合、10年後に全国の地方銀行の58%、信用金庫の53%と半数以上の金融機関で、純損益が赤字に陥るとしています。
地方銀行の賃貸物件バブル
地方銀行の賃貸物件バブルは、これまでもずっと指摘され続けてきていました。
地方の企業が衰退し、超低金利下の「カネ余り」ながら融資先のない地銀は、家賃保証の賃貸物件サブリース業者と組んで、地元の親への賃貸アパート建設資金の融資を増やし、地方の賃貸アパートバブルを生み出したのです。
畑地にアパート40棟の「レオパレス銀座」
現在、施工不良が問題になっているレオパレスもその一つです。
三重県における、アパート40棟が立ち並ぶ様子を表す「レオパレス銀座」なる言葉も記憶に新しく、地域によっては、畑地の真中にもアパートが林立。
そのおかげで、地方の賃貸アパートは完全に供給過剰に陥っており、いつバブルがはじけてもおかしくない状態だとこれまでも言われ続けてきました。
賃貸アパートのバブルがはじけた後は
盛況であった間は、融資をする銀行、不動産業者や建設業者も業績を伸ばしてきたわけですが、バブルがはじけたとしたら、どのような状態が予想されるのでしょうか。
アパートの空き室率が上昇
賃貸アパートのバブルがはじけた地方は空き室率が上昇、賃貸アパートはスラム化すると言われています。
アパートのオーナーは収益が望めなくなり、市町村の主要な税収である固定資産税も滞納が増え、実質破綻状態の地方が続出するとも言われています。
また、それに伴って、返済が滞った地方銀行も次々に窮地に陥るでしょう。
不動産投資のブームは減速
リポートの数字の上では、「バブル」が続いてはいても、不動産投資のブームに関して言えば、既に減速の動きを見せています。
これまで急速な右肩上がりであった、個人の不動産投資ブームの減速が鮮明になってきたためです。
スルガ銀行は新規融資ゼロ
スルガ銀行のシェアハウス融資での不正発覚後、 金融庁は不動産融資への監視を強化。
他の金融機関に対しても、融資姿勢への厳しいチェックが入ることとなりました。
スルガ銀行のその後
一部営業停止を命じられたスルガ銀行は、16年度に4000億円近くあった不動産投資向け融資が、現在はゼロとなりました。
12日に営業停止が期限を迎え、5月から新規融資も再開されることになっていますが、再建のための提携も進んでいるとは言えず、今後の回復が懸念されています。
不動産の新規融資は16.4%減
2月においては、金融機関全体の個人の貸家業向け融資の新規貸出額は、前年比16.4%減の、2兆8348万円となり、2年連続で減少を続けています。
減少率は調査を始めた2009年以降で最大です。
アパート着工戸数は70年ぶり減
また、アパートなど賃貸の新築着工戸数も、18年は前年比5.5%減と、70年ぶりに減少しています。(2月の日銀統計「貸出先別貸出金」)
不動産投資物件の情報サイト「健美家」によると、マンションやアパートの平均価格は、13年頃から上昇傾向が続いたが、17年末前後から下落基調になっているということです。
アパートを売却しても借金が
そうなったときに困るのは、アパートに市場価格が下がることです。
物件の価格が下がれば、保有物件を売って借金を返すのは難しくなります。
多額の借金を背負う個人投資家の破綻リスクは大きくなり、貸し付けた銀行などにも、次々に影響が及びかねません。
アパートバブルで活気を見せた地方も、この後は、地銀とアパートオーナー、そして地方そのものの衰退を呼ぶことになります。
そもそも人口減で、賃貸業はこれまでになく、競争が激化するとも言われており、レオパレスの施工不良問題だけでなく、個人投資家やアパートオーナーにとって、もっとも厳しい時期が到来すると言えるでしょう。
賃貸バブルの崩壊は、単に一つの業種だけでなく、様々な面に影響を及ぼしそうです。