『未来の年表』」という本、これはすべての人に目を通していただきたいと思います。
このブログで書いているのは土地と不動産の問題が焦点ですが、それらはこれからの日本の情勢に関わる氷山の一角でしかありません。
問題の根本には、動かしがたい少子高齢化社会、すなわち人口の減少があります。それについて詳しく書いた本が『未来の年表』で、少し前から話題になっている本です。
今日はその本の内容についてご紹介します。
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『未来の年表』起こるべき日本の危機
この本の著者 河合雅司さんは日本のジャーナリスト、産経新聞論説委員です。
人口減少にまつわる日々の変化に、確実に日本国民一人一人の暮らしがむしばまれていくとして、この事態を「静かなる有事」と名付けました。
時間順にあげられる数々の項目は「人口減少カレンダー」と名付けられ、人口の減少と高齢化によって、これからの日本にどのような問題が起こってくるかを詳しく述べるのが、この本の主な内容です。
年代別人口減少とイベント
これは、2018年に予想できる項目から記されていますが、来年以降のイベントについて、以下に記載します。
2019年 IT技術者が不足し始める
2019年というのは、来年に迫っていますが、まずはインフラ設備、電気や水道といった基本的なものさえ値上げになると言われています。
というのは、このようなインフラを支える技術者が人で不足になるという予想からです。
2020年 女性の2人に1人が50歳以上に
これこそが、「消滅可能性都市」に直接に関わることです。
出産できる女性がたくさんいればいるほど、減少した人口の分をカバーすることもできますが、出産できる女性それ自体がいないということになれば、もはや期待はできません。
昔は5人兄弟などと子だくさんが当たり前の時代がありました。
核家族になってそこで生まれた子供が晩婚であるということになって、少子化は、思うよりも長い時間をかけてここに至ったのです。
2021年 介護離職が大量発生する
高齢者が多い。しかし、それを支える人手も若者も足りない。となれば、少ない人で介護を担うことになり、職業との両立ができなくなってしまいます。
それは家庭内の問題ではなく、同時に、職場の人材が失われることも意味するのです。
2022年 「ひとり暮らし社会」が本格化する
このひとり暮らしとは、独身の人たち、ではなくて高齢者の独居です。
配偶者がいても、同時に亡くなるわけではないため、独居世帯は1/3を超えるとされ、さらには老後のたくわえが十分でない人がいることが問題です。
孤独死というのは、もはや珍しい特殊なことではなくなりつつあります。
関連記事:
単身世帯増加に誰もが孤独死の可能性 別居の親の孤独死を避けるには
2023年 企業の人件費がピークを迎える
団塊ジュニア世代が50代となり、企業の人件費はピークを迎えます。
人手不足で人件費が値上がりし、若い世代が雇えない。
既に年を取った従業員が若手の分も負担が増えることになります。
ひいては、社会全体が機能不全になり、当然企業も町も活気がなくなり、消費も低迷します。?
2024年 3人に1人が65歳以上
団塊世代がすべて75歳以上となります。当ブログで書いている土地の面では、相続が多発して、地価は下落します。その時になっては売るに売れません。
他に社会的には、社会保障費が大きく膨らみ、自治体の財政を圧迫し始めます。
2025年 地方だけでなく東京都の人口も減少始まる
今はまだ地方の心配が大きいですが、東京の人口は、1398万人がピークで、それからは東京も減少することになると言われます。
当然、東京の地価も変わってくることでしょう。
2026年 認知症患者の激増
医療は進み、体のケアは良くなりました。それが高齢者を増やす原因の一つとなっているのですが、精神面の衰えの予防はできません。それが認知症であって、肉体の衰えと同じように、毎日のケアと人手が必要となります。
老夫婦二人なら「老々介護」ではなく、介護する方も認知症の「認認介護」、子どもが居れば介護離職、いなければ、孤独死が近づくことでしょう
2027年 輸血用血液が不足
人工的には作れない血液に関しては、献血必要量が不足し、手術や治療への影響が懸念されるようになるといいます。受けたくても手術が受けられない。あるいは、病院に運ばれても手立てがないなど、これまでは当たり前に思っていたものが不足するのも怖いところです。
2030年 百貨店も銀行も老人ホームも地方になくなる
今更言うまでもなく、地方というより、田舎ではすでにそうなっています。
「シャッター街」というのは、シャッターの内側に人が住んでいるわけですが、人がいなくなれば、ゴーストタウンということです。
団塊の世代の経営者が多い地域では、広がって行くでしょう。そうなれば、銀行は撤退するほかありませんし、老人ホームも不要になります。
2033年 全国で3戸に1戸が空き家になる
このブログでも既に書いていることで、空き家が2167万戸を数え、3戸に1戸は空き家になります。
これまでの供給過剰のつけが回ってきてしまったのですが、そうなってからでは土地は売れません。
しかし、この本の内容を見ると、それが氷山の一角であるということは、伝わっているでしょうか。
関連記事:
人口の減少が土地が売れない原因 いずれは3軒に1軒が空家になる
2035年 未婚大国となる
男性の3人に1人、女性は5人に1人が生涯未婚という「未婚大国」になると言われますが、これも案外大きな問題です。
経済的には、子どもが生まれない、少子化が進むということがいちばんの懸念ではありますが、金銭の問題ばかりではなく、家庭や家族という基盤が失われるということが心配です。
2039年 深刻な火葬場不足
死亡者数が167万9000人とピークを迎え、火葬場不足が深刻化するということなのですが、都会でも地方でも既に予約が取りにくい状態です。
とりあえず安置ということになりますが、お金もかかる上に、その場所の確保も必要です。それと共に、単身者の死亡や孤独死の場合の埋葬方法も検討する必要があります。
2040年 自治体の半数が消滅の危機
今は地方の中でも限られたところが話題になるくらいですが、いずれは全国の自治体の半数近くが「消滅」に近づきます。
いくらそこに家があっても、そうなっては暮らすことができません。行政サービスがはたらかなくなるためです。
関連記事:
自治体が破綻したらどうなる?第二第三の夕張市を防げ!消滅可能性都市はどこ?
2040年 団塊ジュニア世代退職後の後継者不足
定年の年齢は昔は55歳だったと聞きますが、今は60で定年になり、65までは勤める例も多いようです。
最近身近に聞いたの例では、71歳なのに、そのまま部長職を継続してくれという例がありました。
ところが、その方は義理の父が90歳で存命していたために、その介護のために辞めざるを得なかったそうです。まさに時代を表す実例です。
2042年 高齢者数が4000万のピーク
高齢者向けのサービスが一番限界を迎えるということなのですが、いかに介護離職をしようとしてもカバーできる数ではなくなります。
単身の高齢者は、ヘルパーの人で不測の際はどうなるのか。お金がありさえすればいいという単純な話でもなくなりそうです。?
2045年 東京都民の3人に1人が高齢者に
高齢者介護の人手不足は、最初は地方から始まりますが、その後はやはり東京もその状態を免れられません。
地価の下落にしても、空き家率にしても、今地方で始まっていることは、やがて、東京にも起こると考えた方がよさそうです。
ただ、東京の方はそれが若干遅れる、そして程度が弱い、少なくても即「消滅可能性」とはならないメリットはあるでしょう。地方の方が短時間で立ち行かなります。
2050年 日本も世界的な食料争奪戦に巻き込まれる
世界人口が97億3000万人となり、これは日本だけの問題ではなくなりそうです。その前に食料品の値上がりもあるでしょう。
そしてこの頃には、現在の居住地の約20%が「誰も住まない土地」となるそうです。
2053年 日本の人口が1億人より下の9924万人に
億よりも一けた下がるということは、大変な減少です。食い止めることは無理でも、少しでも人口の維持をこれから考えるべきです。
2065年 外国人が無人の国土を占拠する
驚くことに、日本の人口は減っても、世界レベルでは、増加は変わらないということです。
ゴーストタウンに他国の人が移住をしてきて、映画で見たような無法地帯のような治安の悪化も懸念されます。
『未来の年表』 河合雅司 朝日新聞の書評より
本書を読むと、楽観の数々は徹頭徹尾、ことごとく打ち砕かれる。著者は「今後の日本の高齢社会とは、『高齢者』の高齢化が進んでいく社会でもあるのだ」と書く。74歳以下の前期高齢者は企業も政府も雇用の即戦力として未来に期待しているが、この層の人口はいったん増加に転じるものの、2040年代以降は減っていってしまう。また現状は都市に人口が集中し、地方の過疎化が問題視されているが、東京でさえも25年をピークに減少に転じる。そして地方のひとり暮らしの高齢者が東京に流入するようになり、東京の福祉は崩壊に瀕(ひん)する。
本書が非常にすぐれているのは、ただ危機を煽(あお)るだけでなく、最後に明快かつリアリティーを持った処方箋(せん)が提示されていることだ。サービス過剰な「便利過ぎる社会」から脱し、非居住エリアをきっちり定めてコンパクトシティー化を進める。遠く離れた自治体の大規模合併も考え、市町村単位の生き残りは求めない。国際分業を徹底し、よけいな産業は捨てる。都市と地方を移動しながら暮らすライフスタイルを定着させる。過激ではあるけれども、どれも具体的で実効性を信じられる。「江戸に戻れ」「みんなで貧しくなればいい」などの空疎なスローガンではなく、今こそ本書のような具体的な議論を始める時期が来ている。
この本には、これら起こることに対しての対策も示されています。それについてはまた後に記します。
『未来の年表』 河合雅司
講談社現代新書。
幅広い層に売れているが、若い人の関心が高いという。「へたなホラー映画よりもこわくて、おもしろい」との反響もあった。
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