スマートデイズ社運営のシェアハウス問題が発覚、金融庁が一部業務停止命令を下すと同時に、他の不動産投資に関わる銀行への監視が厳しく行われることとなりました。
「氷山の一角」とも言われる、資料改ざんをめぐる不正な融資、今はアパートの施工・管理会社タテル(TATERU)と西京銀行への関心も高まっています。
ビジネスジャーナルの記事から、不動産投資の今についての問題点を、まとめてお伝えします。
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タテルが西京銀行の融資で不正
山口県に本店がある地方銀行、西京銀行のアパート向け融資の資料が改ざんされていた問題で、東証1部上場のアパートの施工・管理会社TATERUは昨年12月27日に、31人の社員が不正にかかわったことを公表しました。
不正の内容は、建設資金の借り入れ希望者の預金残高を水増しするなどが、銀行から多くの融資を引き出すために書類の改ざんが、350件見つかったということです。
特別調査委員会が発足し、実態の解明が進められています。
タテル調査報告書要旨
調査報告書(要約版)による内容の要点は次の通りです。
不正を行った人数
不正に関与したのは全社員の6%にあたる31人の営業社員
不正の数
アパート成約棟数(2269件)の15%にあたる350件
不正の内容
顧客のネットバンキング画面を偽造するなどして貯蓄額を水増して提出
いつから不正を
資料の改ざんは10年ごろから始まっており、15年末の東証マザーズ上場後も継続
融資を受けた銀行は
報告書内では明らかにしてないが、西京銀行とみられている
改ざんが多発した原因
・パワーハラスメント、販売目標達成必至・率直に物が言えない企業
・成約に際しての歩合給の存在
タテル内部のパワハラなど企業風土についての報告
「営業本部長らは、営業部長らに対して不正行為禁止の通告をしながらも、増加する販売目標を達成させるため、営業成績の良くない営業部長を強い口調で叱責するなどのパワーハラスメントが認められ、目標未達成が続いた場合には、営業部長が部長代理や課長に降格されることもあった。
営業部における厳しい上下関係が看取されるとともに、部下から上司、特に営業本部長に対してネガティブな意見や情報を伝えにくい風土があった」
タテルへの具体的な影響
シェアハウス投資で不正が見つかったスルガ銀行の場合は、一部業務停止命令となりましたが、タテルの場合はどういう影響があったのでしょうか。
取締役の処分
まず、上記の調査結果を受けて、取締役の処分が発表されました。
古木大咲CEO(最高経営責任者)ら10人の取締役が、3~6カ月間、月額報酬の10~50%を返上することとなったということです。
アパートの施行への影響
不正発覚後に、受注キャンセルが出たほか、工事の遅れもあり引き渡し棟数は当初計画より2割減の720棟となる。
売上高予想は前期比8%増の722億円と、43億円引き下げ。純利益は15%減。
西京銀行との取引停止
書類の改ざんについては、西京銀行の銀行員が、改ざんに関わった報告は今のところありません。
しかし、TATERUは今後、西京銀行などの金融機関からアパート融資を受けられなくなり、他に引き受ける銀行がなければ、これまでのようにアパートを建築できなくなります。
タテルの株価の急落
いちばん大きな問題は、上記の状況を受けての株価の急落で、10分の1までに暴落しているということで、東証1部上場の企業であったことが、影響を大きくしています。
国土交通省は実態調査へ
さらに注目すべき点は、国土交通省は実態調査に乗り出したことで、今後、他のアパートなどの施行を扱う企業にも、調査の手が及ぶことです。
他の会社にも、今後同様の例が見つかるのでしょうか。
「もしかしたら」が事実に
そもそも、タテルの問題とは、スルガ銀行問題が明らかになったところで、そのニュースを見ていて、自らの取引に不審を感じたことがきっかけです。
「融資がスムーズにおりたが、もしかしたら自分もそうなのではないか」と、ある投資者オーナーが自力で調査を始めたことで発覚しました。
タテルとの契約を解除
このオーナーは無事に、TATERUから、手付金の倍額を返却してもらい、契約を解除するに至っています。
その際の手順については、下の記事に。
関連記事:
【TATERU】書類改ざん 西京銀行に融資申請の預金残高 オーナー気付いて契約解除
「氷山の一角」と「第2のタテル」から株安へ
元々、スルガ銀行の不正発覚の際にも、「氷山の一角」という言葉が聞かれました。スルガの場合は、内容が詳しく報道されましたから、それまでは、融資の仕組みについて知らなくても、不動産投資は、アパート経営の自己資金と銀行からの融資の仕組みについて、誰もが詳しくなったことがきっかけでした。
また、金融庁や国土交通省に関しても、認識が新たになったという点は、これもあるいは同じことかもしれません。
不正がそこまで常態化しており、文字通り「氷山の一角」なのであれば、他の会社にも次々に同様の例が見つかるという次第にならないとも限りません。
アパートマンション等の物件に投資した投資者オーナーもさることながら、不正には関わっていなくても、株式市場では第2のTATERUが出てくるのではないかと疑心暗鬼が広がっています。
不動産投資に関わる企業の株安は、しばらくは回復しそうにありません。サブリース全盛をねがうわけではありませんが、明るいニュースが聞こえてこないものか願うばかりです。