アパート建設会社レオパレス21が建てたアパートに建築基準法違反の疑いが出ている問題で、レオパレスが7日に法令違反の物件が1,324棟あり、入居者1万4443人に引っ越しを求め、補修工事をするということで、その説明会が10日に行われました。
レオパレス21の深山社長は出席せず、アパートオーナーらの怒りの声が飛び交いました。説明会の様子からお伝えします。
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レオパレス、アパートオーナーと入居者向けの説明会
昨日10日、東京都内の本社で説明会が行われました。
ニュースで報道された内容を聞く限りでは、アパートの所有者オーナーらの出席者を、十分安心させるものとは言い難かったようです。
レオパレス21の深山社長は出席せず
レオパレス21の深山社長は姿を現さず、説明会に出席したオーナーたちからは、批判と不満の声が噴出しました。
社長が出席していないことについては、
「やっぱり無視してきてたでしょ。真剣に対処してこなかった」
「今回の代表責任者である社長はどうなってるんですか」
「こういうことが起きるということは、役員の方が常々直接オーナーの前に行って、顔を出して、生の声を聞いていないから、こういうことが起こるんだと思うが、いかがですか」
また、今後のアパート経営を不安に思うオーナーからは
「われわれは(レオパレスに)全財産を預けているんですよ」
という悲痛な声もありました。
アパートオーナーの損失は?
今回のようにアパートに補修が必要な個所が出てしまい、一時的にではあれ、入居者が退去しなくてはならないとなると、アパートの所有者の方にはどのような困った問題がおこってしまうのでしょうか。わかりやすく解説します。
アパート経営の収入の仕組み
今回の問題では、天井が建築基準法の耐火性能を満たしていない、界壁が未設置、基準に合わない発泡ウレタンが外壁に使われているなどの施工不良が多数発見されています。
それら、建物の不良な箇所が適切に補修され、住民の安全が保障されない限りは、アパートを賃貸物件として利用することはできなくなります。
アパートの所有者であるオーナー達は、アパート建築の際、その多くが、手持ちの資金の他に、銀行から融資を受けています。アパートですから、普通の住宅と違い、一棟の金額が億を超えることも普通です。
通常の大家さんの場合、オーナーは、その一部 の資金を銀行から融資してもらい、 その分をローンとして、入居者から受け取る家賃でそのローンの支払いをしています
数字を簡単に上げて説明しますと、たとえば、1室7万円の家賃の部屋が10室あるアパートで、70万円の家賃収入があるとします。
その中から、50万円を銀行のローンの支払いとし、20万円が大家さんの手元に残る収入となります。
この家賃収入が、魅力であるため、資金や土地に余裕のある人が、アパート経営を始めるというのが、近年の不動産投資ブームだったのです。
アパートの家賃収入がゼロに
しかし、アパートを補修して、部屋が使えないでいる間は、そのアパートには誰も住むことができませんので、その間の家賃収入はゼロとなってしまいます。
すると、大家さんは、銀行のローンを手持ちのお金で支払わなければなりません。
資金や他の収入のある大家さんは払い続けることができるかもしれませんが、アパートの賃料収入にだけ頼っていると、支払いが出来なくなってしまいます。
その場合は、アパートを手放さなくてはならなくなったり、アパートが売れない場合は、自己破産となることも少なくありません。
アパート経営のサブリース契約の仕組み
一方、レオパレスの運営するアパートの多くは「サブリース契約」というものです。サブリースの場合は、建物と家賃の管理を含めて、全て管理会社が行います。
大家さんは、家賃の収入70万円から、建物の補修や管理費用、銀行ローンを差し引いた金額を、管理会社レオパレスから受け取っています。
入居者がいてもいなくても、毎月決まったお金を賃料収入として受け取れるというのが、サブリースという仕組みなのです。
サブリースの収支の例
これもわかりやすく簡単な数字の例で説明します。
自分で管理をするとすると、入居者が少なくなったら、すぐに大家さんの収入に響いてしまいます。
例えば、全部の部屋で70万円の家賃収入で、ローンが50万円、手元に20万円が残るとして、部屋が2つ空き室になったとしたら、大家さんの収入は14万円も減ってしまい、手元に残るのが、20万円から14万円を引いた6万円になってしまいます。
サブリース契約の場合は、空き室があっても、毎月20万円を固定収入として受け取れますよ、というのが約束事です。
アパートの管理も管理会社がやってくれるし、入居者の募集も何もしなくてもいいのです。
大家さんは何も心配せずに、最初のアパート建設の費用だけを負担すれば毎月収入が受け取れる、それがサブリースの大きな魅力であり、多数の人がアパート経営に乗り出した大きな理由でした。
レオパレス側の対応への懸念
なので、レオパレス側の建てた物件に施工不良があった場合は、もちろん、大家さんは、その補修中であっても、同じ金額を受け取れるはずです。
しかし今回のように、入居者が全ていなくなった場合でも、レオパレスがその賃料収入を大家さんに支払ってくれるのかということは、切実な問題です。
アパートの補修と家賃保証
施工不良が出たのが、一棟だけならば大家さんとレオパレスとの間の話し合いで解決しそうですが、今回のように1千棟を越すアパートの全てで入居者が退去、賃料収入が途絶えてしまった場合、レオパレスは毎月の賃料収入を、支払い続けるほどの資金があるのか、またそれ以前に、全部のアパートの補修がなされるのかどうか。
そして、仮にアパートの補修が済んだとしても、今回、レオパレスのアパートに入居者の安全を脅かすような施工不良が出たということが、これほど大々的に報じられてしまっては、今後レオパレスのアパートに入居したいという人の数が減ってしまうかもしれません。
それが入居率の低下ということで、そうなってはいくらアパートが立派に改築されたとしても、この後の大家さんの家賃収入が期待できなくなってしまいます。
そもそも、レオパレスには、 以前からこのサブリースのアパート経営において訴訟問題が起きており、あまりにも問題が多いことから、オーナーからは「詐欺だ」という非難の声も上がっています。
アパートオーナーにとって切実な問題
転居を迫られるアパート入居者にとっても、アパートの施工不良は大変な問題ですが、それ以上に投資者であるアパートオーナーにとっては今回の問題は大変に切実な問題なのです。
スルガ銀行の融資したスマートデイズ社のシェアハウス「かぼちゃの馬車」でも同様に、資金繰りに困ったオーナーの中からは、自己破産以外に自殺者も出てしまいました。
今後、レオパレス側の対応が心配されるところです。今回の説明会に社長が来ないということは、アパート所有者の不安を煽ることとなってしまったのは当然です。真摯で十分な対応が 求められます。