私道の通行権とはどのようなものでしょうか。
家の近くの私道には、「私道につき車両通行禁止」と書かれた札と、横木を渡したコーンが置かれるようになりました。
これまでは皆が通行に利用していたわけですが、そもそも、私道というのは所有者の都合で通行を禁止できるものなのでしょうか。
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私道の所有者は通行を制限できるのか
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上の橋のある私道については、「車両通行禁止」なので、徒歩で通るのには制限はないのだろうと思います。
私自身はそこを通らなくては特に困るというほどではないのですが、自転車で向う側の公道まで移動したい時には、「車両通行禁止」と書かれると、自転車も軽車両ではあるので、なんとなく通りにくいことになります。
このような場合、所有者は私道の通行を制限できるものなのでしょうか。
私道の通行のトラブルと傷害事件
昨年11月には、大阪府堺市で同様のケースで私道の通行を巡るトラブルから、所有者が傷害容疑で逮捕される事件がありました。
所有者が私道の通行を妨害し、自転車で通過しようとした男性を押し倒したというものです。
行為を加えた所有者が、傷害容疑で逮捕されるに至りましたが、このように私道を通る通らないのトラブルは結構あるようです。
「私道」にも種類がある
個人の土地であれば、通常は他人が入ることは許されません。
ただ、一概に「私道」とはいってもいろいろな種類があります。
建築基準法で認められた幅4m以上の接道「位置指定道路」や、4m以下の「2項道路」と呼ばれるものなどです。
そして、それらに関しては、公益の保護の適応となり、私道ではあっても、所有者の意向で「通さない」ということはできなくなります。
囲繞地通行権はあってもトラブルも
実家の私道の例を考えてみます。こちらは、旗竿地と言われる行き止まりの私道になります。
売却を終えた実家の道路です。赤い色が実家です。
ここは普通の分譲地なのですが、ここに接道する4軒の家は、いずれもここが私道であるということを、まったく知りませんでした。
要するに、これまでは行動であると思って皆が利用していたわけですが、私が売るにあたって私道だったことが皆にわかったわけなのです。
囲繞地通行権とは
このような形状の場合は、この私道、すなわち他人の土地を通らないと生活できないうちの実家とAさん宅は袋地または、旗竿地と呼ばれ、囲繞地通行権というものが保証されています。
なので、所有者の意向で通れなくなるということは、法律的にはありません。
しかし、万が一私道の所有者とトラブルになった場合、あるいは、私道の所有者が変わって関係が変わるなどした場合、道路とはいっても他人の土地なので、心情的には通行は難しくなるかもしれません。
私道の「持分」の有無
あるいは、その分譲地にうちが後から入居したとして、私道の権利を持っていない、つまり私道に金銭的な負担をしておらず、私道がAさんとBさんとCさんのみの持分を持っていたとします。
そうなると、いくら法律的には通行権があるのだといっても、やはりおもしろくなく思う人がいる場合、通行を妨げられる可能性もあります。
「持ち分」で私道の権利を共有
上記のような困った事態を避けるには、その道路を通行する必要のある4軒皆が、私道の権利を買うことが、そこに住む以上必要となります。
4軒皆が持ち分4分の1ずつで取得した場合、誰か一人の土地ではなくて、4軒皆が持ち主となり、共有する土地となるわけです。
これは登記簿のその道路の欄に持ち分として名前も記載され、代が変わっても相続されます。
もし買おうとしている土地についている道路がこのような形状の時は、いわゆる団地や分譲地であっても、購入の際は必ず確認の必要があります。
物件の説明事項にはたいてい、「持ち分なし私道」または「私道持ち分8分の1」などと記載されますので、そうなっていれば安心です。
持分なし私道の問題点
持ち分あり私道であっても、あるいは 公道であっても通行や駐車のトラブルは時々起こります。
隣の家の工事車両が道路をふさいでいるとか、車が配慮なく停められて、家の車が出られないなどです。
あるいは、自分の家でも家族の引っ越しなどで、車両を駐車する場合などもあります。
これが公道、または自分も法律的に所有する道路であれば、相手への申し入れも自身での使用も問題ありません。
しかし、権利がなければ、通行権はあっても文字通り「他人の土地」であり、通行以外の用途にも、いちいち許可が要ります。
ガス管や水道の補修時の掘削権
たとえば、道路の部分にはガス管や水道管が通っているのが普通ですが、それも私道の持分のうちに入るのです。
厳密には、私道の持ち分を持っていない場合は、ガス管が壊れたからと言って、そこを勝手に掘ることは難しくなります。
持分なし私道の土地は担保価値がない
私道で最も困ったことが、接道が私道のみの家土地は、担保価値がないということです。
生活するにも支障がある上、権利なし私道では、担保価値がないためローンが使えませんので、改築や建て替えの時、そして、売却の時がひじょうに困ることになります。
ローンが使えないと資産価値がない
ローンが使えなければ家を建てることが難しくなるため、誰も買ってくれないことになってしまいます。要するに、そのような場合は、その土地には資産価値がないということなのです。
道路は思う以上に、その土地の条件として重要なのです。
そもそもが、ある程度年数の経った家で私道持ち分なしという方が、過去何らかの問題があった可能性もあります。
隣近所が全く知らなかったという場合は、取得そのものに関して意見をまとめるのにも困難が予想されます。
そこで意見が合わず、そのあとが通るの通さないのとなると、後々まで大変です。
土地を買う前には私道かどうか確認を
土地の購入の際には、家に接道する道路の幅、種類、私道であれば持ち分があるかどうかを、不動産屋さんを通して必ず確認してもらってください。
万が一、道路が所有者不明など、持ち分の取得ができない可能性がある時は、価格が安くても見合わせた方が無難だと思います。
接道するのが公道であれば、上記のような心配は要りません。
くれぐれも要らない苦労を負うことのないように、注意を払うようにしてくださいね。