スマートデイズ社運営の女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」の投資者オーナーらに不正な融資をしたとして、金融庁に行政処分命令を下されたスルガ銀行が創業家岡野家のファミリー企業に対しても、不正な融資による資金調達を行っていたことが明らかになりました。
またそれらの企業がスルガ銀行の株を多数所有することで、断ち切るといわれている岡野家のスルガ銀行に対する影響力が続くことが懸念されています。
しかし、シェアハウス一連の問題を受けて株価は急落。株の資産価値の下落は、ファミリー企業にどのような影響を及ぼすのか。また、そもそもスルガ銀行という後ろ盾を失ったファミリー企業は今後存続ができるのか。
毎日新聞のプレミア記事を元にお伝えします。
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スルガ銀行の高株価・高配当で維持できた岡野家ファミリー企業
そもそも、株主としてスルガ銀行の株式を18%という高い割合で占めていたファミリー企業は、これまで高い株価のスルガ銀行から、高配当を受け取っていました。ファミリー企業の経営がその利益によって支えられていたのは間違いありません。
毎日新聞のプレミア記事は、このファミリー企業の盛衰の影に、スルガ銀行の体質との関連を挙げいます。すなわち、
岡野家の権力の基盤であるファミリー企業が崩壊せずに存続してきたのは、スルガ銀行が高収益を上げ、高株価・高配当が維持されていたからこそという構図が透けて見える。
そして、スルガ銀行が高収益をあげなければ、それらファミリー企業が維持できない。そのために、銀行の特殊なパワハラ体制が強化されたという見方です。
銀行そのものは高収益を上げていました。それこそ、金融庁の森元長官に「地銀の優等生」とほめそやされるまでに。
しかし、銀行幹部は、高い営業ノルマを緩めることなく部下に課し続け、銀行にあるまじき収益至上主義に走ったのはなぜか。
これを、毎日新聞では、ファミリー企業の維持と関連があると見ています。
パワハラとノルマに追われたスルガ銀行員
営業目標を達成するために、横溢していたパワハラの事例は世間を驚かせました。不動産業ではない、銀行ですが、銀行員のマインドも「不動産業者化」しているように見えた、という証言もあります。
一見、熱心で勤勉ではあるのですが、ノルマにとことん追い詰められていたということだったのでしょうか。
審査部より営業が強い構成
そして、ずさんな審査、疑わしい融資までも、通してしまう営業部が審査部を凌駕する力を持っていた特殊な力構成も同様です。
結果として、シェアハウス投資がこれほどまでに拡大してしまったのは、その源を探ると、スルガ銀行とファミリー企業とのつながりがあったのではないかということです。
岡野喜之助会長が銀行と企業両方を采配
スルガ銀行の実質的な経営者が、岡野光喜前会長の実弟、岡野喜之助氏であり、その喜之助氏がまたファミリー企業をも保有していたということが、スルガ銀行の資金が自由に采配できる「私物化」を進めていたのは間違いありません。
一銀行としての収益としてなら、何ら問題のない十分なものでした。赤字であり収益を上げなければならないのは、銀行のためではなかったのではないか。
岡野ファミリー企業への巨額の融資
岡野家のファミリー企業は、02年の段階でスルガ銀行から総額1208億円の融資を受けていました。融資は不良債権化しており、スルガ銀行は改善計画を策定して、融資回収を図ったといいます。
15年3月末時点で融資残高は522億円まで減り、スルガ銀行は残高圧縮目標が達成されたとして改善計画を終了。つまり、融資はこの数字において、もう改善する必要もなく、その金額を維持してもいいということとなったということなのです。
スルガ銀行の高株価維持の源泉
その際の、岡野家ファミリー企業の保有していたのは、スルガ銀行の株式が3671万株、総額で915億円、配当金は年7億円超というものでした。
そのために、スルガ銀行はそれ以上融資を回収しなくても済み、ファミリー企業の存続が可能となっていました。その基盤は、ノルマに追われた営業部の担当者が、がむしゃらに働いて何としてでも契約を取り、融資を実行する――それこそが、その数字を維持できる源泉であり、岡野家のファミリー企業の存続基盤であったと、毎日新聞は伝えています。
スルガ銀株価下落で収益ゼロに
その後の顛末は、よく知られる通りです。シェアハウスをめぐる不正融資の発覚でスルガ銀行は巨額の損失を計上し、株価は急落。
銀行自体の存続も危うい中、もはやファミリー企業を支えるものはなくなりました。
問題が明らかになってからの株主総会は、詰めかけた株主との間でひと悶着ありましたが、もはや株主のフォローどころではなく、もっとも損害の大きかったのは、スルガ銀行のもっとも多い割合の株を保有していた岡野家ファミリー企業でありましょう。
ファミリー企業向けのスルガ銀行の融資残高は、報告されたものだけで488億円です。
配当も9月から停止する中、融資の返済に追われるファミリー企業は存続できるのでしょうか。企業はどうでも、その場合の巨額の不良債権の行方はどうなるのか。今更ながら、これを褒めたたえていた金融庁の失点があらためて問われることになるでしょう。