フラット35不正、住宅ローンを不動産投資に悪用した問題で、住宅金融支援機構が把握した113件に加えて、別に30件超あることが朝日新聞の調査でわかりました。
しかし、単に投資用住宅のローンを、住宅ローンで融資させた、業者間でいう「なんちゃって」の不正というだけではありません。
中にはさらに悪質な業者が居り、マンションの売値は倍、リフォームローン加算の挙句、賃料保証が支払われず、業者と連絡が取れなくなり投資者が自己破産した例を朝日新聞が取材しました。
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フラット35を投資用ローンに用いる不正
フラット35は、本来住宅ローン用のもので、投資用の住宅取得には利用できない決まりになっています。
今回のフラット35の不正というのは、業者用語で「なんちゃって」と呼ばれるもので、普通の住宅と偽ってそれを投資用ローンに用いるものです。
しかし、投資用に偽ったというだけではなく、この方法を勧める不動産業者には、そもそもかなり悪質な業者がいることが、朝日新聞の取材でわかりました。
フラット35を不正に用いて、様々な業者やブローカーなどが投資者を勧誘、被害を拡大しているという実態があります。
朝日新聞が伝えたかったのは、住宅金融支援機構の調査に漏れた不正のケースが30件超あるという、単なる数の増加だけではありません。
それ以前の不動産投資の悪質な業者に引っかからないようにということです。
朝日新聞は、フラット35をマンション投資に不正に使った複数の業者の顧客名簿や賃貸管理表などを入手することに成功。
2014年以降に不正にフラット35で投資された50件超の実態を調べたところ、30件超が機構の調査対象外だったことがわかった他、下のようなケースを紹介しています。
埼玉県内のマンション投資にフラット35を悪用した例です。
フラット35を利用した悪質なマンション投資
朝日新聞が把握したフラット35を利用した、悪質なマンション投資のケースです。
20代男性会社員をマンション投資に勧誘
東海地方の20代の会社員男性Aさんは、自己資金ゼロの投資、サブリースで家賃収入が保証されるという勧誘文句で、マンション投資をすることになりました。
当初は「オイシイ話だと思った」と回想しますが、結果は、賃料収入が途絶えたためにローンが支払えず、マンションは競売。
おそらくそれでも借金は相殺できず、場合によっては自己破産も検討しなければなりません。
というのは、業者は本来の価格の倍近い価格で、埼玉県内の中古マンションを売りつけたからです。
中古マンションの価格は倍値
Aさんは、業者から築20年超で広さ約60平方メートル、最寄り駅まで徒歩十数分という中古マンションを投資目的で購入、3年前に3300万円で購入しました。
しかし、それは不動産業者が1800万円で、競売で落札した中古マンションでした。競売物件だったので、記録が残っていたとみえます。
マンションのリフォームローンも
さらに、そのマンションは賃し出す前にリフォームがなされ、そのためのリフォームローンも別途組まれました。
しかし、今となってみると資金の流れもはっきりしておらず、不動産業者が大半を受け取った疑いもあるということです。
というのは、その業者も会社も連絡が取れなくなっているからです。
融資の審査では業者が「転勤して住む」
フラット35の融資をする金融機関に出向いての融資の審査では、中古マンションを販売した不動産業者が同席。
Aさんの住むのは、そこから新幹線で3時間離れた地域でしたが、業者自らが、「(Aさんが)自分で住む」「転勤する」と説明し、Aさんはうなずくだけで、審査が通りました。
さらにAさんは、埼玉の別の中古マンションも3千万円台で購入。こちらも、別の民間銀行の住宅ローンで居住用と偽って借りたそうです。
住民票は、いったん埼玉県のマンション所在地に移動して辻褄を合わせたといいます。
賃料収入の支払いが途絶える
Aさんは年収は400万円台、別のリフォームローンと合わせて借入額は計7千万円超になり、返済額は月30万円超。
賃料収入は最初はありましたが、1年経ったところで、業者からの支払いがなくなりました。
そもそも、そのマンションは、貸し出されてもいませんでした。つまり、賃料収入は実質的にはゼロだったのです。
Aさんに不動産投資を勧めた業者は、マンションを高く売った、その差額と、リフォームローンで懐に入ったお金を持って、そのまま行方をくらましたとみえます。
当初から、融資された資金が目的であり、投資物件の管理で収益を上げようとは思っていなかった疑いも出てきます。
こうなると、単に、住宅ローンを投資ローンに悪用したというだけではなく、低金利のフラット35で投資者を増やすよう勧誘し、その資金を持ち逃げする業者も実際に出てくることになりかねません。
朝日新聞では、このケースを紹介する記事を新聞第一面に掲載し、被害の拡大を告げるとともに、金融機関も含めて、投資者に警戒を呼び掛けています。