鉾田市にある旧別荘地大洋村に関する新聞記事に、興味深い内容が伝えられました。
最近時々広告に出ている別荘地。その価格の低さを見ると、さぞかつての所有者は困っているのだろうと思っていたら、売買が増加して、かつてのリゾート地に思わぬ買い手増を招いているというのです。
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茨城県鉾田市の別荘地とは
茨城県鉾田市の別荘地、その土地の名前は、旧大洋村、というところです。
1990年前後のバブル絶頂期に大々的に開発、販売されたそうなのです。
しかしバブル期に建設された物件は、2000年代半ばからは、他の別荘地同様、荒れが目立つようになったといいます。
放置されている鉾田市の空き家
鉾田市の担当者は
当時の購入者の高齢化が進み、相続がされなかったり、地価が下がったり売れなくなったりし、放置する人が増えた。
相続がされない、というのは、相続登記がされないということで、高齢者の所有または、高齢者の死亡後も、亡くなった人の名義のままになっているということなのでしょう。
そして、東日本大震災で福島原発事故の風評被害で、隣県である茨城も被害を受け、手離す人が一気に増えたといいます。
おそらく主要産業が農業、それから海に近いということで、他の海沿いの町と同じく、観光客の減少などの被害があったのかもしれません。
今まで住んでいた人も流出して人口は減少。地価の下落。加えて同じタイミングで皆が売りに出そうとすれば、希少価値もなく価格も安くなります。
ほとんど無料に近いような価格で取引されたのではないかと推察します。
しかし状況は一転して、今はさかんに売買されている人気の移住の土地というのです。
いったい何が起こったのでしょうか。
大洋村別荘を業者がリフォーム
鉾田市内の不動業者は、それを安値で引き取った物件をリフォームし、ネット経由で物件情報を首都圏に発信。
すると予想以上に買い手が殺到し、震災前までは年間10軒程度だった別荘の売買は、何と13年に70軒に急増したといいます。
落ち着いた今でも年間30~40が売れ続けているということなので、驚いた取引件数ではないでしょうか。
別荘空き家を買うのは移住希望の高齢者
どういう人が買うのかというと、別荘としての利用ではなく、今はそこを終のすみかにしたいという高齢者が多いといいます。
「野菜の品質も良い。生活しやすいし、定住するつもり。廃屋には慣れた」(現居住者)
この廃屋というのは、この方が買って今住んでいる家ではなくて、その周りにある空き家のことでしょう。
価格は、90坪に2階建の中古住宅とで650万円だといいます。
不動産サイトを見ると100万円台も多く見つかります。
利便性については、東京には比べるべくもなくても、首都圏から越してきた方がいうのなら、かつての別荘地とはいえ、それほど不便ではないということなのでしょう。
大洋村に鉾田市の空き家の数の8割
市の方は、大洋村にある2687戸をデータベース化。この数は鉾田市内の空き家の数の8割だそうです。
そして、特定空き家などの整理、改善を図りながら、そのうえで、空き家バンクを立ち上げる予定だというのですから、村は古くて新しい町として生まれ変わりつつあります。
現在では、まだ人口減を食い止めるまでには至っていないものの、世帯数は13年が4929だったところが5110世帯に増えたといいます。
地域が活性化すれば、若い世代にも購入希望者が広がっていくかもしれません。
鉾田市大洋村は空き家販売のモデル
これは大洋村だけでなくて、既存の郊外型大型住宅地の多くに当てはめるべき姿ではないでしょうか。
古い住宅を放置せず、とにかく引き取ってくれる値段で売る。買った方は安く仕入れた分でリフォームをして希望者に売る---
そのようないわばリサイクル住宅のビジネスモデルとも言えると思います。
手離したい所有者にとってはありがたい話に間違いありません。
では、なぜ大洋村は中古住宅の販売に成功しつつあるのでしょうか。
大洋村成功の要因は何か
町によって多少の浮き沈みがあるのは不思議ではありませんが、大洋村の成功は明らかです。その要因を挙げてみます。
物件が安い
写真を見ればわかりますが、あくまで別荘として建てられた住宅なので、平屋などコンパクトな作りです。そして別荘なので、普段住まいの住宅より、仕様が最低限で軽微なものが多いです。
普通の住宅ですと、どうしても二階2部屋以上、設備も豪華に、となると、リフォームするにも、扱う不動産業者の方でお金がかかってしまう結果、売り出すときにも安く売れないことになってしまいます。
元々がコンパクトな住宅だから価格が十分に抑えられたのだろうと思います。
価格が安ければ、買う人はどんなところにもいる、これは「空き家いちば」で既に実証済みです。
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「家いちば空き家売ります掲示板」土地処分もできる買いたい人と出会えるサイト
購入希望は高齢者の移住者
家が一定数以上売れ始めたというところは、前にご紹介した栃木市もそうですが、必ず、よそから人が移ってきているところです。
その地域の中で、ぐるぐる家を回しているということではないのです。
よしんば、同じ地域内で土地が売れたとしても、住み手が変わるだけであって、商店街の売れ行きもこれまで通り、税収もそれほど変わりません。
外から人が入ってくるということが町の活性化の大前提です。
稼ぎ手であればなおいいですが、高齢者であっても十分です。
そもそも今の高齢者は寿命が長く余力も十分あります。その人たちが住んでいる間に、次なる施策を考えればいいのです。人が集まらなければ、何も始まりません。
ネット経由で物件情報を首都圏に発信
外から人を集めるのには、ネットを使う、これがひじょうに大事だと思います。
これから書こうと思っていましたが、私の実家を買ってくれた会社も、購入を申し出てくれたもう1社も、どちらも都内の会社なのです。
地方の不動産会社の数などは知れていますが、東京には不動産の会社は比べるべくもなくたくさんあります。
アウトレット不動産を扱うだけのノウハウや資本を持っているところ、資金繰りの十分な会社もたくさんあるということです。
地方の不動産事情は軒並み低迷しており、売買がないため、不動産会社の収入も激減している。
なので、私の実家のように買い取ってリフォームをして儲けを得る、というのは資金がなければ、中央に資金を蓄えている大手不動産のチェーン店でもない限り、地方の不動産業者ではそもそもできないのです。
必要なデータベース化
不動産の買い手もそれと同様に、経済の衰退して人口と買い手の絶対数が少なくなった地方のみではなく、少なくても関東圏なら首都圏に向けて、空き家をアピールできるように考えていかなければなりません。
いまだにデータベース化ができていないところは、考えものです。外部業者を頼んででも早急に整えなければ乗り遅れます。
ふるさと納税で獲得できる金額などは知れています。
鉾田市はメロンの産地でもありますが、一回切りのメロンを売るより、土地が売れてそこに住んでもらえる方が、はるかに良いではありませんか。
わが町も、大洋村の成功に続きますように。