私たちが住んでいる家の所有者である、夫の父が亡くなったので、2年後の夫の定年を目途に住み替え先を探しています。
賃貸に住み続けるということも考えているのですが、朝日新聞の声欄に「高齢者が部屋借りられないのか」という投書をみて不安になりました。
どこか賃貸を借りたとして、高齢になってから大家さんの都合などで住み替え先を余儀なくされた場合、住むところがなくなっては困ります。
高齢者の入居はなぜ断られるのか、断られた時はどうしたらいいか、あるいは、その場合は賃貸には住めず、持ち家を考えなければならないのか、それらの大事なところを調べました。
スポンサーリンク
「高齢者は部屋借りられない」?投書の内容
書き手は山口県の80歳女性。おそらく手書きで送られたものでしょう。筆記を含めて投書ができるくらいなので、しっかりした印象を受けます。
しかしさすがに、女性は一人暮らしで広い家と土地、つまり、家の片付けや庭木の管理などが重荷になってきた、といいます。
子どもさんが居ても遠方住まいなので、家を売って娘さんの近くに行きたいとのことで、賃貸物件を探すことになりました。
ところが、借主が80歳以上だと、大家さんが貸すのを渋る。そこで不動産屋さんが、私のことを元気だし、何でも自分でできる、娘さんが近くに居て面倒を見る」と告げたのだそうですが、面会もなしに2件とも断られ、「高齢者が一人住まいすることはわがままなんでしょうか」と結んでおられます。
せっかく転居をしようと思ったのに、残念な内容ですね。
新聞に投書ができるくらいしっかりした方なのですが、それでも賃貸が借りられなくなってしまうのでしょうか。
高齢者の賃貸問題へのお答え
これについて、宅建業を含む4名の意見が掲載されました。
「80歳は老人」
宅建業77歳男性の方は、たいへん丁寧な口調ながら、高齢者が賃貸物件を借りる難しさを次のように説明します。
宅建業の立場からは、「ご希望には添いかねる」とお断りすることになると思います。
貸主から見れば、80歳は老人とみなすのが妥当です。
それは差別ではなく、現実です。家主が住居を貸すのは、「営業」のためです。
あらゆるリスクを考えた結果、お断りするのは仕方ないと思います。
もっとも、この当初の中では、「たいへんひどいことを申し揚げるようですが」と相手に向かって話している体なので、高齢者が借りられない理由は何か、が明記されてはいません。
高齢者の「孤独死」の心配
高齢者が賃貸物件を借りられない理由は、なぜか。それを次の投書は大家さんの立場から述べています。
79歳、賃貸物件を持つ男性。
大家はなぜ断るのかをお考えになったことはないのだろうか。「一人暮らしの高齢者が、病気で苦しんでいるかもしれない」「死亡していても何日もきづかないかもしれない」などを心配してのことだろう。
やはり、考えられるのは「孤独死」の問題でしょう。この方は、投書の最後に「契約後のことは仲介不動産屋さんは責任を持ってはくれないのだ」とありますので、やはり、大家さんがすべて対処をしなければならない以上、リスクが高いという考えのようです。
子ども名義で賃貸契約の例
対して、高齢者の娘の立場の方からは「決してわがままではありません」と励ましの声が寄せられました。
この方は愛知県に住む61歳女性で、母上が他界後に、84歳の父上が近くに住みたいので部屋を借りたいと探したところ、難色を示された。そこで、契約者は自分として、娘さんが契約をすることとなった。その場合は、家主は家賃の滞納が心配だったのではなかったか、と推測しています。
なので、このような場合なら、支払いをきちんとするという約束や、保証人などをはっきりさせることで、問題はなくなる、そのような経験談です。
社会的支援の必要性
ただ、4人目の83歳男性は、かつて不動産屋に断られた経験から、賃貸料よりも、「孤独死でもされて気づかずにほったらかしになると、かなりの費用をかけて処理しないと使い物にならない部屋になるからだ」といいます。
借りたいという方には酷な内容のようですが、その上で、「人は死ぬときは誰でもが孤独が、独り住まいになっている可能性が高い。社会的な支援を考えるべき」との提言で投書を結んでいます。
高齢者が賃貸を借りられない時の対策
しかし、実際に部屋を借りられない高齢者ばかりではありません。自治体でも既に支援を行っているところ、それから先日のテレビ番組「たけしのTVタックル」では、高齢者専門の不動産屋さんも登場しました。
関連記事:
「持ち家価値が1円に⁈」たけしのTVタックル番組内容紹介 日本の住宅政策 空き家を高く売るコツ
「文京スマイルプロジェクト」の自治体の支援
実際にもこのような支援を行っている自治体があるということで、東京都文京区の例が、文京区の福祉施設担当課長から、区が支援の上、92歳でも入居した例があると知らせています。
「文京スマイルプロジェクト」というもので、高齢者や障碍者、ひとり親を対象として、区が入居者を見守ることで、家主の不安を減らす取り組みをしているといいます。
高齢者の賃貸利用の際の支援内容
その仕組みは、下の通り。
- 高齢者に貸してもいいという家主を登録しておき、区費で居室に緊急通報装置を設置する
- 委託業者が週1回電話で安否確認、他の専門職が定期的に相談を持つ
- 家主に、月1~2万円の謝礼を支払う
そして、これまで、92歳含め32件が成約したそうです。
高齢者専門の不動産屋も
さらには、一般の不動産屋さんにも高齢者を対象としているところがあります。
前の記事でご紹介した、「たけしのTVタックル」の中に「高齢者の駆け込み寺」と紹介された不動産屋さん、R65不動産です。
借主に変わって交渉をしてくれる
自分のところの物件はもちろん65歳以上OKのところですが、それ以外にも他の不動産サイトに掲載中の物件は、借りたい人の代わりに「高齢者でも借りる事ができるか」の確認や相談、交渉を行ってくれるというのです。
物件不足の一方、入居希望者からの電話は毎月40本以上、そして、「1件成約するまで200軒の不動産会社に電話する」ということなのですから、その熱意はすごいとしか言いようがありません。
大家さんを安心させる方法とは「入居希望者には必ず連絡が取れる緊急連絡先を複数確認し、家賃の支払い方法も聞き取り、入居後も見守って、安心してもらえるよう努めている」。
そして高齢者の利用が、空室の増加に悩む大家さんとの仲立ちをするということにもなっています。
まとめ
朝日新聞の投書に見る、高齢者の賃貸が利用できないという問題とその対処法や、自治体支援、不動産屋さんについてお伝えしました。
これから先はさらなる人口減少が進み、賃貸住宅はさながら「激戦」の状態になるとも言われています。今は、まだ借りにくい状態であるかもしれませんが、高齢者が部屋を借りる例もさほどめずらしくなくなる気がします。
夫は家探しにあたって「高齢になったら住み替え時に家が借りられない」と言いますが、私自身が高齢になるのはまだ先のことなので、当面は住み替え先として賃貸も視野に入れておくつもりです。