国土交通省が19日公示地価を発表、地方の地価が27年ぶり前年比0.2%上昇という結果に、驚いた方もおられたのではないでしょうか。
東京など一部の地域の地価を押し上げたのは、観光客需要が主な要因とされますが、地方の地価の上昇を招いたのは、駅近マンションであると住宅ジャーナリストが述べています。
地方の駅近マンションの動向について、毎日新聞緒経済プレミア記事を元にお伝えします。
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「公示価格」で地方の地価が上がった?
そもそも、土地バブルの東京はともかく、バブルとは無縁、衰退が目立つ地方の土地の価格が上がったということには、すこぶる疑問を感じていました。
観光客が増えている、松本市や沖縄などはむしろ一部の地域であって、地方都市は、いくら町おこしをしたくても、呼び物が見つからないことも多いです。しかし、それらの地域も含めて地方が上がっているということには間違いがない。
それでは、いったいどこの地価が上がっているのかというと、住宅ジャーナリストの櫻井幸雄さんは、「地方でも駅近マンションが増えたことが地価上昇の大きな理由となっている」と明言しています。
駅近マンションが地方の地価を上げた
言われてみると、当県の県庁所在地前の駅前近くに、1年前に総戸数158戸の大型マンションが完成。しかも、完成前に完売したくらいの人気でした。
言うまでもなくマンションは上に伸びるわけなので、戸数が増えたことも気がつきにくいのですが、郊外型住宅団地の大きさはゆうにあることになります。
その分が売れたということになれば、それはやはり、地価上昇に大きな影響を与えることになるのは間違いなさそうです。
東京でも、最近話題に上がった豊洲のマンションは、駅近4分。その際たるものでしょう。
東日本大震災後に地方のマンションが盛況に
当市については、東日本大震災の影響はそれほど大きくはありませんでしたが、実は、マンション建設は、震災にも大きな関連があります。
沖縄のタワマン「リュークスタワー」
沖縄の大規模超高層マンション「リュークスタワー」は、「完売まで7年はかかる」との予想を裏切って、4年までに完売。2000万円から、最高で1億3000万円だったそうですが、このマンションが売れた要因というのが、なんと東日本大震災。
沖縄と震災と何の関係があるのかというと、直接に地震の影響があったわけではなく、逆に「大地震がなく、原発もないので安心。花粉症もない」との触れ込みが効を奏したというのですから、わからないものです。
そしてこの場合の需要は、多くセカンドハウスとしての需要であって、購入した多くは富裕層。そして、今では、このマンションは、中古でも新築時の倍だそうですから、当時購入した人は、先見の明があったといえるでしょう。
お金がお金を生む例の最たるものです。
札幌市にセカンドハウス避暑用マンション
同様に、セカンドハウスとしてマンションを購入する動きが増えたのは札幌市のマンションが挙げられています。
北海道であるだけにこちらの目的は「避暑」用セカンドハウスだということです。
セカンドハウスに1億円超のマンションですから、普段のお住まいはどれほどか。ため息の出るような話です。
地方では実需の居住用マンションも増加
一方で、震災後はセカンドハウスだけではなく、実需のマンション、すなわち実際に住むためのマンションも売れたといいます。
東日本大震災後の被災地仙台にマンションブーム
家を失った被災者が安全なマンションを求めたのが、津波の影響が大きかった宮城県仙台市。
そもそも、地方都市というのは、地価が安いため、マンションよりも戸建てが一般的なのですが、震災後は、家を持つべきでないという風潮もあり、安全ですぐに移り住めて、駅前で利便性の高い地域のマンションが人気が高まったようです。
マンション開発が東京から地方へ移った
このような動きを見て、マンション開発会社の方も、首都圏では分譲マンションは頭打ち、地方都市でマンションが好調に売れるようになったのを見計らって、11年以降は、地方での建設が進んだということなのです。
マンションの確固たる駅近需要
そしてやはり、最近の「駅近需要」には、確固たるものがあり、7分以内、あるいは5分以内でないと資産価値が低下するといわれ、近ければ近いほど良いマンションとのお墨付きがつきます。
そして、この場合は、ニューカマーではなく、元々の地元住民も、戸建てを捨てて移り住むという需要が十分にあります。私たち夫婦も同様の考えです。
高齢者は車がなくても住める駅近マンションへ
特に地方では、車がないと生活できないという地域が大半なので、家の父の場合も、86歳くらいまでは車の運転をしていました。
とんでもない危ない話ですが、最近は高齢者の車の事故も増加しており、高齢者が免許を更新しない例も出てきました。
そうなると、車で移動をしなくても住める、徒歩ですべての用事が住むようなところでないと住めない。そういう集約された地域というのは、実際鉄道を使ってどこかへ行くということではなくても、やはり駅前だということになります。
そして、駅近であれば、戸建てに比べて、やはりマンションの価格は安いのです。高齢者になってからではローンを組めないことが多く、今までの家を売って、その差額でマンションを買うということになります。
その方が、売れない空き家を残すより、相続の時にも断然安心です。
地方の地価上昇は続かない?
しかし、櫻井さんは、この動きがずっと続くわけではないと、駅近マンションの人気と、地価上昇に対しても、楽観できないことを述べています。
その一つの理由は、東京の開発業者が、地方でマンション開発をしようと思っても、用地の取得や、周辺との折衝が難しいということ。そして、マンション自体が、既に飽和状態である福岡や広島のような例もあること。
また、このブログでも書きましたが、新築マンションは、価格が高すぎるというのも、最大の難点でしょう。
櫻井さんの見方だと、今回の公示価格の地価上昇を進めたマンション開発、そのブームもそろそろ終わりを迎えているとのこと。
それに伴って、地価上昇がこれからも続くとは言いがたい様子です。
地方のマンションもやがて供給過剰に
ああそうだろうなと思います。郊外型住宅地の住民が、駅前に移ってしまったら、あとは人口が増加しない限りは需要はありません。
つまり、空き家があるのに、新築戸建てがどんどんできている現象と同じく、そこにマンションが加わったということになると、供給過剰を招くだけです。
来年の公示価格は果たしてどうなるのか。あるいは、来年の公示価格があらためて、地方のマンションブームの終焉を伝えるものになるかもしれません。