西武信用金庫に金融庁が業務改善命令を下されたニュース、高い業績を上げて「信金の雄」と呼ばれていた西武信金に業務改善命令の行政処分が決まりました。
そして“信金の麒麟児”と呼ばれた落合寛司理事長が辞任となりました。関係者の間の「第二のスルガ銀行」とのささやきが現実になってしまったのです。
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西武信金に行政処分で”第二のスルガ”
金融庁は24日、信用金庫大手の西武信用金庫(東京)に対し、投資用不動産向け融資の審査体制などに不備があったとして業務改善命令を出しました。
落合寛司理事長は辞任、高橋常務理事が謝罪の言葉を述べました。
森金融庁前長官が西武信金を“信金の雄”
それまでは、西武信金は好業績を上げ続けており、“信金の雄”としてもてはやされていました。
名付けたのは誰かというと、スルガ銀行を「地銀の優等生」と褒めたたえた、森信親前金融庁長官だといいます
2016年11月に開かれた第5回産業金融フォーラムで、森長官は基調報告で西武信金を褒め称え、続けて森長官と落合寛司理事長の対談も行われたといいます。
落合氏は、森前長官の後ろ盾を得てからというもの、金融庁金融審議会専門委員、中小企業庁中小企業政策審議会委員、経済財政諮問会議の政策コメンテーター委員会委員となり、母校の学校法人亜細亜学園の理事長にも就くという躍進ぶりでした。
西武信金「第二のスルガ銀行」のいわれ
しかし、西武信金の急成長の要因は、不動産投資向けの融資でした。
すなわち、スルガ銀行のビジネスモデルと酷似していたことから、シェアハウス問題の発覚後は「第2のスルガ銀行」とささやかれてもいたようです。
それだけ突出した躍進ぶりであったのです。それを成し遂げたのが、落合寛司理事長でした。
“信金の麒麟児” 落合寛司理事長
落合氏が2010年6月に理事長に就任してから、西武信金は爆発的に業績が向上。
それまでは、東京・中野区から多摩方面であった業務範囲を転換。千代田区初の神田支店を皮切りに、資金需要が旺盛な都心部に打って出たため、貸出金増加額がトップクラスに躍り出たのが始まりでした。
投資用融資が拡大
貸出を牽引したのは、投資用アパート・マンション向けの融資。で、不動産向け融資割合は信金平均が22.8%のところを、西武信金は57.19%の突出した数字でした。
信金の職員が「まるで不動産業者のよう」と自らの業務内容を表現した言葉も聞かれるほどで、投資物件を職員が紹介するなどして投資用不動産向け融資を拡大。
他の有力信金からも「実態は不動産ファンドそのものだった」と言われるくらい、貸出金と不動産投資が直結したものでした。
改ざんから反社会的勢力への融資発覚
しかしその内実は、融資書類は不動産業者によって改ざんされたものでした。この業者はスルガ銀行にも出入りをしていた不動産業者ということで、スルガ銀行にもあったような顧客の預金額などを水増し、職員はそれを黙認したようです。
そこで金融庁が立ち入り調査に入り、反社会的勢力への融資が発覚。支店長クラスの信金幹部が自ら飲食接待。それが落合寛司理事長の指示であったこともわかり、今回の行政処分に至ったわけです。
スルガ銀行に続いて西武信金の、不正な融資、ガバナンスの欠如とモラルハザードが明らかになるにつれて、浮き彫りになるのは地方銀行、地域金融機関の超低金利下の厳しい経営状況です。
いかんともしがたい時代の衰勢ですが、金融庁はこの先もいっそう厳しいチェックを行うことになると思われます。
「第三のスルガ銀行」が出ないことを祈ります。