積水ハウス地面師事件に新展開です。西五反田の土地所有者が旭化成不動産レジデンスに土地を売却したというニュースです。
そして、積水ハウスには、裁判所から地面師事件に関わる調査報告書の提出命令が下されました。
これで、地面師事件の全貌が明らかになることが期待できるでしょうか。
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積水ハウス地面師事件の旅館跡地が売却
積水ハウス地面師事件の舞台となったのは、西五反田にある、旅館「海喜館」の跡地というところ。
JR五反田駅から徒歩3分の立地、約2000平方メートル606坪。坪単価は1000万円以上、積水ハウスとの売買では、70億円もの値がつきました。
高額の土地だから地面師のターゲットになったわけです。
買ったのは旭化成不動産レジデンス
ところが、その土地を旭化成不動産レジデンスが所有者から買い取ったことが判明しました。
『旭化成不動産レジデンス』は旭化成系列の不動産会社。戸建ての「ベーベルハウス」といえばわかるかもしれません。
地面師事件から3か月後に売買契約
売買契約は17年11月と登記簿に仮登記が記載されているそうですので、地面師事件17年8月から3ヶ月後の事です。
積水ハウスの地面師事件に世間が大騒ぎをしている間に、売買契約の交渉が進んでいました。600坪のまとまった土地であるため旭化成は「今後はマンションを含めた開発を検討している」ということです。
積水ハウスと明暗を分ける
不動産関係者いずれもが「喉から手が出るほど欲しい」土地の行くえがこれで決まったこととなります。
一方、地面師達に55億を騙し取られた積水ハウスは、地面師たちは逮捕には至っているものの、支払った土地代金の回収はやはりおぼつきません。
金銭的な損害だけでなく、大きなイメージダウンを余儀なくされました。
その上、今回は裁判所が積水ハウスに文書提出命令を下したのです。
地面師事件で裁判に
積水ハウスは、一部株主から裁判所に訴えを起こされています。
積水ハウス代表取締役会長の阿部俊則氏と代表取締役副会長の稲垣士郎氏を相手に、地面師被害を招いた善管注意義務違反を追及するというものです。
「調査報告書」の提出命令
その裁判での重要な資料として、積水ハウスが社内に保存をしている「調査報告書」を提出せよという命令が下されました。
その「調査報告書」というのは、積水ハウス自身が地面師事件について、独自に初代の調査を行ったというものでした。
しかしその中身は一部のみが公開され、積水ハウスはこれまで全文開示を拒否していました。
調査報告書の内容とは
その調査報告書を公開するにあたって、都合の悪いことはなんだったのかというと、これを既に手に入れた「現代ビジネス」によると、どうやら、「不動産稟議書(購入) マンション土地購入用」の判の日付の部分にあるようです。
以下にその部分を時系列で追ってみます。
・17年4月18日 積水ハウスの東京マンション事業部がこの「稟議書」を起案
・同日 マンション事業本部長が判
・同日 阿部氏が現地を視察
・4月20日 阿部氏が「承認」の判
・4月24日 地面師と契約 手付金の14億円を支払う
・4月24日~26日(推測)稲垣副社長、内田隆専務、仲井嘉浩常務、東京支社長が賛成の判
問題は社長決裁と「事後回付」
この、何が問題かというと、通常ならば稲垣副社長、内田隆専務、仲井嘉浩常務(肩書はいずれも当時)と東京支社長の4人が、「回議者」として審査をし、その「賛成」を持って社長決裁を得るはずが、実際には彼ら4人が審査する前に社長が決裁する「事後回付」の手続きが取られたという点です。
最初に社長が判を押して、決定してしまった。なので、話はそこで決まってしまい、副社長以下、他の人物が反対する余地はなかったというこです。
他に、同記者の報告では、『4/18本部長ご案内にて社長現地をご視察済です』との鉛筆書きの記載が抹消されているということです。
責任を追及した和田会長が辞任
内容としてはそれほどの問題があるようには見えませんが、現在の阿部氏率いる積水ハウスがこの調査報告書を公開したくないというのは、人事上の出来事に関係するようです。
積水ハウス前会長の和田勇氏は、阿部社長の折に起こったこの不祥事を解明しようと、調査委員会を発足。
委員会が出した調査結果では地面師事件による損失は阿部氏に重い責任があるという結論が出されたたので、和田氏は阿部社長を解職させようとしたわけですが、上記の3名がそれに反対。
最終的に辞任に追い込まれたのは和田氏の方でした。
稟議書に判を押した社長他3名
代わりに阿部氏が、代表取締役会長に就任、他の3名 稲垣副社長(現・副会長)、内田専務(現・副社長)、仲井常務(現・社長)が皆取締役に昇格した、そのような事情があるようです。
この人物たちは、皆上記の稟議書に判を押した人たちです。
簡単に言うと、責任のある人が残って、責任のない人が解任となった、それを示す報告書であるから公表したくないということだったのでしょう。
しかし、誰がどこに判を押したと調べないまでも、土地の売買契約に乗ってしまった経営陣の責任は免れることはないでしょう。
また、この調査報告書が即地面師事件の解明に役立つともいえるかわかりませんが、何らかの解決に結びつくことを祈ります。
それにしても、世間の騒ぎを尻目に売買契約がなされた五反田の土地に、いずれ立派なマンションが建つ日も遠くはないでしょう。