空き家を売ろうとして売却前に解体をすすめられたら、更地にすべきでしょうか。
不動産業者に解体をすすめられて更地にしたら、ますます負動産化してしまった例があります。
空き家の解体をしない方がいい理由は何か、それと不動産業者が解体をすすめる理由を考えます。
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空き家が売れない「不動産相続難民」
相続した空き家が売れない、あるいは、これまで住んでいた家を売ろうとしたが、買い手がつかないというような例は今に始まったことではありません。
地方にはざらにあることですが、多くの人は、それが自分の身に起こるとは思っていません。
「地価は下がっているが何とかなるだろう」という見通しでいるのですが、それが楽観的過ぎるとわかるのは、実際空き家を相続ししてしまってからのことが多いのです。
そのために悲劇が起こってしまいます。これは誰にでも起こり売ることなのです。
それらの思わぬ事態に陥った人々を「不動産相続難民」と新語を交えながら、幻冬舎ゴールドオンラインのコラムに、その最も悲劇的な例が紹介されていました。
空き家が売れなかったばかりか、大切なお金を失ってしまい、その後も費用も倍増してしまった例です。
どのような経緯でそうなったのか、難民にならないためにはどうしたらいいのかをご一緒に考えてみましょう。
相続した実家が「負動産」になった例
新潟県の男性52歳、Yさんは、5年前に実家を相続。周辺は田んぼや畑の中に家が点在しているような場所であったようです。
ご自身は東京に住んでいることもあって、新潟にはもはや住まないと思いながら、そのままにして5年間が経ってしまいました。
小さい頃から暮らした両親との思い出もたくさんある実家をいきなり手放すことへの躊躇があったのではないか、と書き手の司法書士の先生は、推測しています。
不動産業者は解体して更地を勧めた
その家の固定資産税はというと、年間3万円弱。
関東の主要都市よりはずっと低い金額ですが、まったく不要な家のために、税金を支払い続けるのも大変なので、家を売却することにしました。
売却を依頼した不動産業者は、建物を解体して更地にすることを勧めたといいます。
「家屋がかなり老朽化していたので、このままでは買い手がつきませんよ」と言われて、Yさんは言われた通り素直に解体。
200万円かけて土地が塩漬けに
費用は200万円強かかったというのですから、東北地方の家に多いように、かなり大きな家であったのでしょう。
土地の広さは80坪ほどで、Yさんは300万円で売却できると考えていました。
そして、この話にこの先はありません。
・・・すなわち、これが土地の”塩漬け”という状態です。
売りに出しても売れないとなると、そこでもう止まってしまい、話は終わってしまうのです。
固定資産税も倍以上に
もちろん、Yさんは、家の売値を100万円まで下げましたが、欲しいという人もいなければ問い合わせも全くない。
しかも、家を壊してしまったので、固定資産税が倍額の6万円以上になってしまいました。
解体をすすめた不動産業者はそれを説明しなかったのでしょうか?
いずれにしても、Yさんは、土地がすぐに売れると考えていたのでしょう。
司法書士に相談も手立てなし
横山さんは、空き家に詳しい司法書士に相談、その司法書士の書いていることはというと
Yさんは私の事務所に駆け込んでいらっしゃいました。けれども残念ながら、もはや手立てはありません。すでに相続をしてしまっている以上、今更相続放棄はできないのです。「200万円の解体費用を回収することはもう諦めた。もう、タダでもいいから誰かに引き取ってもらいたい」。それはYさんの偽らざる本音なのですが、その土地に興味を示す人は未だ現れていません。
ということで、文字通り、この記事は終わっています。
司法書士の先生が言うのですから、もうこれはあきらめるしかないのでしょうか?
空き家を相続した場合にやってはいけないことは「解体」
司法書士は、そもそも相続や空き家の登記が専門ですので、相談する先が違います。
空き家の処分の相談先はそう多くはないので、ここから先は独特のノウハウと、それを自分で探す努力が必要にになります。
空き家を相続した場合にやってはいけないことはというと、下のようなことです。
・年単位で放置しない
・売れない空き家なら相続しない
・建物は解体しない
売れない空き家なら相続しない
そもそも、売れない地域である場合は、家を相続しないということです。相続しなければ何の苦労もありません。
もっとも、相続放棄の際には、家や土地だけの放棄ということはできないので、その他の資産も相続ができないことになります。
多額の資産があるという場合は、生前贈与など、相続以外の方法も考えるべきです。
いずれにしても相続が発生するより、もっと以前に考えなければならないことで、これらについては、相続が発生してしまってから3か月間を過ぎると無効になってしまいます。
親が生前から売却を試す
しかし、空き家とは言っても、親の大切な財産です。
相続物件を自治体に丸投げする相続放棄はできるだけ避けて、最低限売却の努力をするべきです。
家屋が売れれば、いくらかでもお金が入ることもありますから、自分でも売る努力をして、無理ならあきらめもつくでしょう。
それには、親の生前中から家を売りに出すのが良いのです。
なぜなら、そうしてみて数か月経っても、不動産屋の仲介でまったく問い合わせがなければ、相続放棄をするか、他の方法を考るというように、相続が発生する前の余裕があるからです。
更地にすると固定資産税が上がる
更地にするとよく、固定資産税が6倍になると言いますが、最大で4.2倍だそうです。
建物を取り壊せば、建物の固定資産税はなくなりますが、古い家屋の場合は評価額が低く、元々土地のほうの固定資産税額のほうが高いため、税額は必ず上がるということを忘れてはいけません。
また、空き家の状態が悪く、特定空家というものに指定されてしまうと、それだけで固定資産税の特例が利かなくなってしまい、その場合も固定資産税が上がってしまうこともあるので、注意が必要です。
その場合は、空き家を解体して更地にするほか方法はありません。
空き家の建物は絶対に解体しない
しかし、多くの場合は、空き家が残っている方が売却には有利であることは言うまでもありません。
さらに固定資産税とは別に、建物を残しておいた方がいい理由があります。
地方の0円の空き家を買うという人は、決してお金持ちの人ではありません。貧困層相手のビジネスという人もいるくらいです。
その場合、更地にしてしまうと、土地がタダでも家を建てるのに1千万円はかかってしまいます。
格安住宅を求めている人は、そんなにお金を出しません。あったとしても、駅からも遠い畑の真ん中に、その地域に全く何のゆかりもない人が、家を建てたりするでしょうか。
格安の空き家の家を欲しいという人は、タダで住めるなら買ってもいいが、という考え方なので、古家であっても、家は必須なのです。
逆に、きれいにリフォームをして格安価格で売り出せば、買いたい人が見つかる場合もあります。
固定資産税の金額が上がる上がらない以前に、家は絶対壊しては駄目なのです。
まずは、家がある状態でできる手立てを考えて、ダメなら壊すという順番で考えるのが一番良い方法です。
不動産業者が解体をすすめる理由
ではなぜ、不動産業者は建物を解体するようにというのでしょうか。
それは、ずばり、その分の「儲けが入るから」です。
たいていの業者なら、都会の土地でない限り、畑地の真ん中を更地にしたら、ますます売れないということはわかっています。
解体業者を紹介すれば200万円の話です。家を売るより大きなお金で、これは確実に入るのです。
不動産業者は仲介よりも、解体またはリフォームを進めることがありますが、それが必ず売却につながるかどうかは、よく考える必要があります。
けっして鵜呑みにして、解体してしまってはいけません。売り手が見つかってから解体したとしても遅くはなく、たいていの家屋は、そのような但し書きを付けて売却をしています。
もちろん、すべての業者が、無理に勧めているわけではなく、中には解体の必要な家もあるでしょうが、この点はくれぐれも気を付けて、必要な場合は第三者に相談するなどして、売却前にかける費用については、慎重に出費なさってください。
「不動産相続難民」にならないようにするにはどうしたらいいのか。この後も引き続き考えて行きましょう。