スマートデイズ社のシェアハウス投資、サブリースの家賃未払いによって、スルガ銀行に大半の融資を受けた投資者オーナーが多額の支払いに困窮している事件で、スルガ銀行の書類の改ざんなど不正な融資の内容が第三者委員会よって調査が進んでいます。
一昨日は、不正融資をめぐり、第三者委員会の調査概要が公表されました。同委は8月末にも詳しい中身を公表する方針です。
これまで「地銀の優等生」と言われてきたスルガ銀行が、なぜそのような不正融資、不適切な融資にこれほどまでにかかわるようになってしまったのか、今日は日経新聞の記事より考えてみます。
一昨日公表の第三委調査概要の内容については下の記事:
スルガ銀行 不適切融資は不動産融資の半分を占める1兆円 行員300人関与 三委調査概要
スルガ銀行が不適切融資へ暴走した3つのポイント
日経新聞があげているスルガ銀が不適切な融資を増発した理由3つは以下のようなものです。
(1)過剰なノルマで職員を駆り立てる
(2)他の銀行はスルガ銀の個人客に借り換え攻勢
(3)創業家が君臨、独自路線を主導
ひとつひとつを考察します。
1.過剰なノルマ
融資総額のおよそ3分の1にあたる1兆円規規模の投資用不動産融資が、不適切な手続きによって実行されていたということが一昨日第三委の調査によってわかりました。増収増益を至上命令とする経営陣のもとで、営業マンは不動産などの有担保ローンで「毎月1億円」の新規融資といった厳しいノルマを課されました。本来は対象外であるはずの、年収や金融資産が少ない人にも融資しなければノルマを達成できません。年収や金融資産の裏付けとなる資料の改ざんを誘導・黙認するなどして、属性の低い顧客にも融資していました。
営業部が審査部より強い
営業が審査部より優位に立ち、営業部門の幹部が融資の実行に難色を示す審査部担当を恫喝するという事実が記されています。
一方、銀行内で審査を通りやすくするために、審査部の目をだますような手法も様々報告されています。
融資の前に、審査部や支店長による「現地調査」の確認があるため、空き室にもカーテンをかけたり、電気を通したりして、入居者が居るように見せかける「偽装」が、書類の改ざんと共に、業者と結託して行われていました。
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改ざんを黙認する土壌
「ノルマの厳しさ」については、「改ざんを黙認する土壌」があったと語られています。
それこそ毎日毎日パワハラの形で、思い切り詰められるわけです
「おまえ(融資額)8億って言っただろう。なんで6億なんだ。今すぐ2億持ってこい持って来るまで返ってくるな」と(上司に)言われる。(元スルガ銀行社員談話)
他にも
まず融資を引っ張って出すこと、自分の成績を上げること、そこが第一になるので、将来的なリスクなどについて 考えて扱いをやめるとか、そういったことはなかったと思いますよ。多大なノルマでガチガチに縛られている土壌があるんですね。(元スルガ銀行幹部社員)
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(2)他の銀行はスルガ銀の個人客に借り換え攻勢
超低金利下で法人融資の利ざやが縮んだ有力地銀や大手銀行は、スルガ銀の個人客に激しい借り換え攻勢をかけました。法人と違い、個人客は借り換えをためらいません。スルガ銀の投資用不動産融資は金利が3~4%台と高く、低い金利での借り換え攻勢に脆弱でした。営業マンを新規融資へと駆り立てた背景には、こんな自転車操業的な収益構造もありました。周回遅れでスルガ銀をまね始めた他行にもリスクは広がっています。
ゼロ金利の時代に、地銀の経営はスルガ銀行ばかりではなくどこも厳しく、他行がスルガ銀行の高い金利に目をつけて、借り手を誘引する動きがあったようです。
それだけ、スルガ銀行のお客が減ってしまっていたわけで、そのため、スルガ銀行はリスクの高い物件も融資を引き受けていました。
それも「スルガスキーム」の一部としてもてはやされる一方、実情はノルマをいったん達成したかに見えても、他行への借り換えが増えれば増えた分、新規の顧客を獲得しなければならない「自転車操業」であったようです。
(3)創業家が君臨、独自路線を主導
創業家の岡野光喜会長兼最高経営責任者(CEO)が1985年に頭取に就いて、個人に特化した金融にカジを切りました。静岡県沼津市に本店を置くスルガ銀は、西を静岡銀行、東は横浜銀行に挟まれています。全国有数の地銀2行に東西を挟まれた立地。有力企業との取引は2行の牙城です。見向きもされなかった個人に活路を求めた「オンリーワン」の路線にたどり着きました。創業家が力を強めるなかで、取締役や監査役は営業マンの暴走に不作為のままだったと、第三者委はみています。
スルガ銀行の副社長は、現CEOの弟の岡野喜之助でしたが、3年前にスマートデイズ社の資質を告げる文書が届き、岡野喜之助副社長が、スマートデイズ関連の融資を止めるようにと指示を出しました。 しかし、岡野副社長は、その後急死。
これについて、スルガ銀関係者は
「喜之助氏はかぼちゃの馬車を運営するスマートデイズ社の不正を見抜き、一時は出禁扱いにした。会長に物が言える数少ない1人だったが、急逝で全て先送りされた」
と悔いています。 岡野光喜CEO会見なし 米山会長の会見と謝罪、株主総会での謝罪の言葉はありましたが、スルガ銀の最高経営責任者である岡野光喜会長兼CEOの会見や謝罪は、いまだ行われておりません。
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まとめ
このうち2番目の「他の銀行はスルガ銀の個人客に借り換え攻勢」、つまり、地方銀行同士の競争がここまで激化しているというのは、初めて聞く話でした。
ただし、多く相続によって、地方銀行のお金がメガバンクに積み替えられることへの地銀の警戒は、実際にも地方では見聞きしています。
それらは銀行だけの問題でなく、地方の衰退に根があり、地銀にとってはこれからも厳しい状況は続くでしょう。
また、地銀のこのような問題も、地方の土地が売れないと同じように、地方経済の衰退が背景にあるといえます。