スルガ銀行は12日、不正融資問題で多額の損失を招いたとして、創業家出身の岡野光喜前会長ら旧経営陣9人に総額35億円の損害賠償を求める訴訟を静岡地裁に起こしたことが報道されました。
請求額は35億とされましたが、岡野光喜元会長の弟、故岡野喜之助元副社長に関する損害額だけでも300億円を越えるとされており、今回請求された金額はその一部に過ぎないことが、続いて報道されています。朝日新聞の記事よりお伝えします。
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スルガ銀訴訟 請求額は損害の一部
スルガ銀行がシェアハウス融資の不正問題を巡り、現旧経営陣に損害賠償を求める訴訟を起こした。ただ請求額は損害の一部にとどまり、有国三知男社長や監査役らは請求されなかった。
旧経営陣への請求理由
スルガ銀は12日、静岡地裁に訴訟を提起し、創業家出身の岡野光喜前会長ら計9人の現旧取締役・執行役員に総額35億円の損害賠償を求めた。9人は2016年以降、シェアハウス向け融資で損害が出るリスクを認識できたのに、必要な対応を取らなかった責任が問われている。
岡野一族の経営体質の脱却の狙いも
スルガ銀は9月、第三者委員会の調査結果を受けて経営陣を刷新し、10月には金融庁から業務の一部停止命令を受けた。旧経営トップらを提訴し、不正を起こした過去の経営体質から脱却する狙いがある。
岡野副社長の損害は300億超
しかし今回の請求内容には「甘さ」も見える。12日公表された「取締役等責任調査委員会」の調査報告書(要約版)では、過去の営業部門トップとされた岡野喜之助元副社長(光喜氏の実弟で故人、賠償請求対象は相続人)と因果関係の深い損害額だけでも300億円超と認定。総額35億円の賠償請求額との差は大きい。
有国社長の責任なし
また、不正当時に取締役だった有国・現社長や現旧の社外取締役、監査役はいずれも問題を認識するのが困難だったとして、訴訟対象から外れた。
賠償請求額を増額の可能性
スルガ銀は賠償額について「現実的な回収可能性なども勘案し、損害額の一部を請求することにした」と説明。責任調査委は今後、創業家のファミリー企業への不適切融資についても追加報告を行う予定で、スルガ銀は「賠償請求額を増額することがある」としている。
シェアハウス被害者弁護団の反応は
スルガ銀から多額の借金を抱えるシェアハウスオーナーの弁護団は「責任追及が不十分」とし、株主代表訴訟も辞さない構えだ。
シェアハウスオーナーの被害弁護団は有国社長ら16人の取締役・監査役らに717億円を請求することを求めてきた。
河合弘之弁護団長は「損害に比べて賠償額が少なすぎるうえに、社長や監査役らの責任を問わないのは不十分だ」とし、株主代表訴訟も検討する考えを示した。
金融庁長官のコメント
金融庁の遠藤俊英長官は12日、大阪市内で地元金融機関向けに講演し、スルガ銀行のシェアハウス融資不正問題について、「リスクがいかに大きくなっているかを(事前に)把握して検査に入れず、問題を見抜くことができなかった」と、監督官庁として反省点を述べた。
スルガ銀取締役等責任調査委員会 調査結果の概要
◆岡野元副社長は2016年1月末時点、岡野前会長は17年7月にはシェアハウスローンの実行差し止めや調査をする義務があったが怠った
◆米山前社長ら他6人の現旧取締役も17年7月までにはローンの差し止めや調査を求める立場にあったのに怠った
◆麻生元専務執行役員は、ローンの停止や、危険性を取締役会などに報告するなどの義務があったのに怠り、融資を継続した
◆有国三知男現社長と現旧社外取締役・監査役に義務違反は認められなかった
◆今回の調査結果はシェアハウス融資に関するもので、ファミリー企業への不適切融資問題については追って調査報告書を提出
訴訟を起こされた経営陣一覧
報告書に基づき訴訟を起こされたのは岡野光喜氏(前会長)、岡野喜之助氏(故人、元副社長、請求対象は相続人)、米山明広氏(前社長)、白井稔彦氏(前専務)、望月和也氏(前専務)、岡崎吉弘氏(元専務)、柳沢昇昭氏(前常務)、八木健氏(取締役)、麻生治雄氏(元専務執行役員)の計9人
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今日のスルガ銀関連のニュースは以上です。