当ブログのスルガ銀行関連の第三者報告書の記事がまた読まれているので、何か新しいニュースがあったのかと思ったら、ダイヤモンドオンラインの不動産業関係者の「地下座談会」で、シェアハウス投資とスルガ銀行についてが話題に上がっていました。
興味深い内容なので、ご紹介したいと思います。
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不動産業界関係者「地下座談会」
ダイヤモンドオンラインのこの記事は、週刊ダイヤモンドの特集「覆面座談会」というものです。この初回はダイヤモンド誌の紙面で「マンション価格は本当に暴落するか」というものでした。
その続きで紙面に収められなかった座談会部分が、続く6回シリーズです。これはネットで無料で読めます。
原文のサイトのページはこちら。
「スルガの中の人のメンタルが不動産屋、詰め方がすごい」不動産業界インサイダー地下座談会(4)
不動産業界関係者の見るシェアハウス投資
座談会に登場するのはネットの「全国宅地建物ツイッタラー協会」という架空の団体の方々だそうです。
団体こそ架空ですが、メンバーはいずれも専門職他の不動産に詳しい方々です。
その一部に、スルガ銀行のことが取り上げられていますが、コメント欄に「やや難しい」という言葉が見られましたので、若干の補足を入れておきます。
「かぼちゃの馬車」とスルガ銀行について
スルガ銀行についての部分だけを、下に抜き書きします。
スルガ銀行の「後釜」はない
あくの: 今スルガの後釜みたいなとこってどこなんすか。
グル: 難しいすね、西武信金とかでも2割(手付を入れろ)って言われるようになってきたし。
スルガ銀行は、投資家にとってはいろいろな点で融通が利く銀行であったのは間違いありません。
「自己資金ゼロ」でも融資をするという銀行がなければ、シェアハウスビジネスは成り立ちませんでした。
リスキーな融資をしようという銀行は他にはいない。それがスルガスキームの一端でした。
また「エリアが広かった」というのもポイントで、発祥地が静岡でもあり、東日本から西日本どちらも掌握していたということも、顧客にとっては便利な点であったようです。
そのような意味で、投資家にとってどうように融通の利く銀行の「後釜」はいないというのが結論のようです。
スルガの第三者委員会報告書について
スルガ銀行の調査をした、第三者委員会の報告書についての部分です。
かずお:それにしても、スルガの第三者委員会報告書は面白かった。文学でしたね。
あくの:あれ0円で読めるのすごくないですか。
この第三者委員会報告書はどこで読めるんだろうということで、当ブログにお越しになった方がおられるようですが、スルガ銀行のサイトで誰でもDLして読めるようになっています。
ただし、300ページありますので、読むのはそれなりにたいへんだとは思いますので、要約を下の記事に掲載しています。
スルガ銀行員のメンタリティー
以下が、原文記事のタイトルとなっている部分で、おもしろいところです。
のら:中の人のメンタルが銀行員じゃなくて不動産屋でしたね。詰め方がすごい。
スルガ銀行社員が、銀行員のような精神性ではなく、不動産屋に近いメンタリティーという意味で、銀行の人というより、不動産屋寄りになっているという意味合いのようです。
銀行としての信用や用心深さは二の次で、リスキーなことにも自分からどんどん動いて営業成績を上げていくという、ある意味銀行員とはかけ離れたメンタリティーになっていたということではないかと推察します。
スルガ銀行のパワハラが報道されて驚かされましたが、あるいは、そのような職場環境でおのずと形成されたものであったのかもしれません。
スルガ銀行員へのキックバックについて
それだけリスクのあることをして、案件を増やしていったスルガ銀行行員の「報酬」や業者からの利益についても話題に上がりました。
哲戸: スルガの担当者レベルで、融資実績ごっつう伸びた人ってどのくらいボーナスついたんだろうね?
かずお:第三者委報告書でも、KB(キックバック)はそんなにもらってませんでしたよね。交通費くらい?不動産屋さんは自分の利益のために不正するんですけど、銀行員は出世のために不正しますよね。
キックバックについては、調査報告では、受け取っていた行員は、ごく一部の限られた人のみであったとされています。
スルガ銀行の多くの社員は、個人単位の金目当ての不正行為ではなかった。しかし、融資を多く引き受けることでノルマの達成や、成績が上がるなどのメリットはなくはありませんでした。
また、成績に応じて、ボーナスでその分もいくらかもらえるということはあったようですが、総じて個人の利益が目的とは言いがたかったようです。
長期的には出世云々もあったかもしれませんが、短期的なノルマ達成についても次の発言が示唆しています。
パワハラでも辞めない銀行員?
のら:成績未達の人の詰め方ひどかったんですけど、銀行員はあんまり辞めないんですかね。
「パワハラ」のすごさも話題になりましたが、それで行員が辞めなかったのは、スルガ銀行の給与は、日本全部の銀行、地方銀行だけではなくてメガバンクも取り混ぜて、2番目に高いということにあったようです。
転職をしたとしても、まず同じ給与はもらえない。「辞めない」理由は、銀行員だから、ではなくて、スルガ銀行員に限っての話だったからかもしれません。
シェアハウス投資の黒幕について
そのあとに、今回のシェアハウス投資の黒幕の話が出てきます。
のら:成績未達の人の詰め方ひどかったんですけど、銀行員はあんまり辞めないんですかね。
グル:超かわいそう。
哲戸:悲喜劇ですよね。で、俯瞰してみてそれに気が付いたのがタイジ。だったらこの蛇口をきゅっと気持ちよくひねってあげようと。
おそらく、スルガ銀行員がノルマに苦しめられていたことに目をつけて、融資の話を持ち掛ければ乗るだろうとして、「黒幕」である「タイジ」という人物が、スルガ銀行がらみのシェアハウス投資のシナリオを思いついたというご意見です。
そして、スマートデイズのほしいままに、スルガから融資がおりて、またそのお金を使って、新しいシェアハウスを建てる、それが後には自転車操業となっていったわけですが、顧客をどんどん増やしていったために、最終的には被害が拡大しました。
会社名を変えてシェアハウスへの融資を存続
どエンド:途中から不動産屋の方が立場が上になってきてますよね。
あくの:融資がほしいから「これをはねたらもう客紹介しないぞ」って。
哲戸:だから迂回法人を立ててくれと。
シュ:でもスルガから切られたら、かぼちゃダメになってましたよね。
スルガ銀行の方は、内部告発があって、当時の岡野喜之助副社長が、スマートデイズの投資物件の中止を命令しました。
しかし、いったん中止になったにも関わらず、スマートデイズの前身の会社はさらに名前を変えて取引を継続。
結局、スルガ銀行とスマートデイズは持ちつ持たれつの関係であったのでしょう。
どちらが欠けもシェアハウス事業は成り立たなかった。だからこそ、抑止力のあったスルガ銀行の責任が、より重く取りざたされることになったわけです。
引当金増加の顛末
シュ:でもスルガから切られたら、かぼちゃダメになってましたよね。で、そのローン債権も売れなかったんでしょうね、セカンダリーに。ずーっと持ってましたよね。結局どこも買ってくれなかったから引き当てせざるを得なかった。それ考えると、日本の金融市場はまだスルガ以外はまともなんじゃないかと。
セカンダリーというのは、「金融機関の貸出債権を買い取る企業。債権回収会社やサービサーとも呼ばれる」ところだそうです。
どこにも売れなかったというのは、それだけリスキーな投資物件であり、よその会社は引き受けなかったということで、スルガのずさんさがそこでもまた露呈することになった、ということなのでしょう。
「モーレツ社員」のスルガ銀行員
また、スルガ銀行と取引のある方が、スルガ銀行員のモーレツ社員振りにも言及。
はと:スルガの人って、素晴らしいんですよ。夜討ち朝駆けでフットワーク軽いしガッツがある。他の銀行は午後3時で固定電話どころか携帯もつながらなくなるとこ多いんですけど、スルガは何時にかけても出ますし。常にどこにでも飛んでくる。
グル:24時間営業(笑)。
「かぼちゃ事件とは何だったのか」
最後に、「かぼちゃ事件とは」と訊かれた時の、それぞれのおもしろい答えを挙げておきます。
哲戸:かぼちゃがあったからスルガが食いついたというよりも、そもそもカネ余りの中スルガみたいな銀行がヤンチャなところを求めてて、それに最大限合わせたらかぼちゃができた。時代が求めてた。
かずお:時代が生み出したキメラ。
どエンド:フルローン、8%、サブリースの夢。
はと:やっぱり1件で億単位の融資できるっていうのもでかいですよね。
またそれに続いて、
かずお:でも、こういうかぼちゃの話なんかを考えると、20年持ってる不動産投資ってすごいですよね。トータルだと勝ったか負けたかわからない。飲んでいるこのお酒はどこから来たお酒だろうとか。もしかしたら敷金まで飲んじゃってる可能性はありますよね。
という発言には、むしろ不動産投資の面白みも伝わります。
その上の「サブリースの夢」というところを見ると、自己資金がなくてもできるかぼちゃの馬車は、誰でもできる魅力的な不動産投資として、オーナーの目に映ったものであったのでしょう。
終りに
シェアハウス投資とスルガ銀行に関する部分だけを抜き書きと、若干の補足を加えさせていただきましたが、この座談会は6回シリーズで読み応えのあるものです。
スルガ銀行以外のことも話題ですので、投資や地価に関連のある方はどうぞダイヤモンドオンラインで原文でご覧になってみてください。
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