アパート建設会社レオパレス21が建てたアパートに建築基準法違反の疑いが出ている問題で、レオパレスは法令違反の物件が1,324棟あった調査結果を発表。補修工事のために、住民1万4443人に引っ越しを要請することになっています。
ところが、この時期に引っ越しを請け負う大手運送会社、ヤマト運輸が、3月中の引っ越しサービスの受注が受けられないことを発表。関係者に激震が走っています。
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レオパレス21が界壁不備で入居者に転居要請
レオパレスは天井に問題が見つかった物件、すなわち、「界壁」(天井裏の仕切り壁)の未設置により、特に危険な、耐火水準を満たさないアパートの入居者7782人に8日から順次、電話をかけ、引っ越しを要請するとしていました。
しかし、運送業者は慢性的な人手不足で、これまでも、希望する時期に引っ越しできない「難民」が社会問題化していることが懸念されていました。
ヤマト運輸は業務停止中、3月再開できず
さらにここへきて、業務停止中であった、ヤマト運輸が、3月中は、引っ越しサービスの業務を再開できないということが明らかになりました。
ヤマト運輸は、17年に200億円超の未払い残業代問題が起き、昨年7月には子会社『ヤマトホームコンビニエンス(YHC)』の引っ越し代過大請求が発覚。
昨年夏から個人・法人とも引っ越しサービスの新規受注を停止していました。
引っ越しが最も多い、繁茂期の3月ということで、引っ越しサービスが再開されるのでは、と期待されていたわけですが、2月21日、傘下のヤマト運輸の長尾裕社長(53)が4月1日付で社長に昇格する人事を発表。
そして、長尾氏が就任会見で「商品見直しなど、向こう1、2カ月間やるべきことが残っている。3月中の再開は難しい」と、引っ越しサービスの最下位を先送りにすると発言したというのです。
転居要請はアパート住民7782人
レオパレスが緊急に転居要請をするのは、天井の耐火性能に不備がある641棟、主にアパートゴールドネイルタイプに住んでいる居住者、7782人で、引っ越しにかかる費用はすべてレオパレス側で負担するとしているわけですが、運送の請負先がないということになります。
それでどのような影響が出るかというと、ただでさえ、人手不足から、引っ越しの料金は高止まりしているところに加えて、それが4月や5月に先延ばしされることになり、工事がその分伸びるとなると、オーナーへ、その間の賃料をも保証しなければなりません。
元々空き室であっても、そこには、入居者は募集できない訳なので、その分もレオパレスが負担しなければならず、さらに、転居の手配がスムーズにいかなければいかないほど、転居した入居者が戻ってこなくなる可能性も高くなります。
結局それらの費用を考えると、そのままでは済まされず、サービス料金が高くても、引き受けてくれるところを手配しなければならなくなることも考えられます。
レオパレスが負担する引っ越し費用が莫大に
レオパレスは、すでに補修工事費用など累計430億円の特別損失を計上していますが、アパートの施工不良の調査はまだ35 %しか進んでいないといわれており、これからも費用が積み上がるとみられています。
引っ越し費用までも見積もりよりも多いということになり、補修費用、引っ越し費用共に加算されていくということで、転居とその手配がうまく進まないということは、レオパレスにとっては大きな打撃となります。
レオパレス取引先銀行「いずれ債務超過も」
必要な費用負担に加えて、入居者やオーナーの損害賠償も少なからず発生するともみられており、経営悪化も避けられないところとなっており、レオパレスの取引先銀行の話では、「いずれ債務超過も覚悟しなければならないだろう」とまで、言われているそうです。
昨年末時点でレオパレスの預金は892億円、自己資本1069億円と資金は十分と見られていましたが、上に述べたように、今判明している施工不良アパート1134棟の補修工事の費用などが、430憶円、これだけで預金の約半分がなくなることになります。
しかも、現時点では調査済みは35%、半数以上が、まだ調査が行われていない訳なので、この後どのような不備が出て来るのかもわからない状態です。
発泡ウレタン外壁アパートはそのまま改築なしか
そのため、発泡ウレタンを使ったとされる外壁について、レオパレス側は新たに申請を行い、国の認可が降りさえすれば、それについては、補修や改築を行わなくてもいいという方向で、話を進めているとされます。
もし、認可が下りないとなったら、その分の全棟が建て替えとなるかもしれないので、レオパレス側としては、予算を考えるとそうしなくてはならないのでしょう。
オーナーにしてみれば、きちんと直してもらいたいというのはやまやまでしょうが、それで一気にレオパレスが経営悪化に陥り、家賃支払いが苦しくなるのであれば、どちらがいいのかは何とも選びようがない事態かもしれません。