朝日新聞の経済欄に、スルガ銀行の創業家岡野家ファミリー企業の実態を扱うコラムが連載されています。その中で、ファミリー企業が高級マンションを多数所有した、その他、ファミリー企業の実態を伝える驚くべき内容が掲載されています。記事内容を要約してお伝えします。
スポンサーリンク
スルガ銀行創業家岡野ファミリー企業の実態
スルガ銀行は、昨年末岡野光喜前会長ら一族が経営に関わるファミリー企業向け融資での不正に関する調査報告書を公表しました。
その中で、ファミリー企業に関する事実がはじめて明らかになりました。
スルガ銀行を支配した岡野一族
設立から120年以上、スルガ銀行トップとして君臨してきた岡野一族は、複数のファミリー企業がスルガ銀行株の1割超を握り、経営を支配してきました。
岡野ファミリ―企業の内容は
ファミリー企業が、クレマチスの丘と呼ばれる広大な土地と、その周辺の土地開発と分譲、美術館や飲食店を営んでいたこともよく知られています。
これまでは、それらがファミリー企業の主な収入源とも見られていましたが、現在ではむしろ、美術館などの資金繰りが行き詰まり、スルガ銀行から寄付の名目で多額の融資がなされていたことも明らかになっています。
スルガ銀行からの融資を受けて、ファミリー企業はスルガ銀行の支店や寮、美術館に所蔵する美術品などを買っているという関係でした。
融資の返済のため岡野ファミリ―企業へ「寄付」
しかし、返済に行き詰り、ファミリー企業の融資を減らすため、スルガ銀行が「寄付」の名目で資金を流すようになりました。
どういうことかというと、融資は銀行からお金を借りるということですが、寄付はあげると同じことで、実際は、美術品購入の名目などで寄付された47億円は、そのうち38億円をスルガ銀行への返済へ充てたのです。
煎じ詰めて言えば、ローンを返さないために、上記のような算段をしたということになります。
岡野ファミリ―企業へ1200億円の巨額の融資
これらの融資は、岡野光喜前会長の 実弟の故岡野喜之助氏が行っていたとされ、ファミリー企業への融資額は2002年には、1200億円を超えていました。
あまりにも多大であるため、金融庁が過去の検査で、取引の適正化を指示。それに従って融資の金額を減らしたものの昨年3月時点でも、融資額が488億円もあったことが伝えられています。
岡野ファミリ―企業が都内に分譲マンションを所有
そして今回記事で明らかになったのは、ファミリー企業が都心の一等地にある高級分譲マンションを多数所有していたということです。
分譲マンションは一室が140~400平方メートル で、相場は2億円から7億円、 すべて合わせるとそれだけでも総額約40億円になるということです。昨年秋、売却の情報があったことで明らかになりました。
それらのマンションは、2000年以降に取得されたものとされ、なぜファミリー企業が高額のマンションを多数取得していたのか、理由や目的は未だ不明と伝えられています。
所有者は岡野家親族ではなく借りた名義
それらを所有していたのは、岡野家一族の誰かではなく、マンションの 登記上の代表の男性は、職業はミュージシャン。
「岡野家とは大学時代に繋がりがあり、名義を貸しただけ」。
そして、驚いたことに「 マンションは持っていることも借金をしていることも知らなかった」と話しているということです 。
ファミリー企業役員はハンコだけで報酬
他にも複数のファミリー企業役員を務めるスルガ銀行 OB は
「前は週一回で集まって話をしたが、 喜之助氏が亡くなってからは仕事もほぼ亡くなった。報酬はあるが仕事の中身は知らない。」
別のファミリー企業社長は
「何か契約する時だけ呼ばれてハンコ押しに行く。契約の中身は分からない」
と言っているということです。
つまりは、岡野家のファミリー企業というのは、企業としての実態を持つものではなく、 ファミリー企業の社長という人も、仕事の中身を知らず、ハンコを押すだけという 不自然な業務内容だけを「仕事」としていたようです。
ファミリー企業40社以上 実態不明も
ファミリー企業は朝日新聞が確認しただけで40社以上あり、ほとんどの事業実態が不明だといいます。 スルガ銀行からの融資をファミリー企業同士で融通したり、不動産の転売も繰り返すなど、不自然な取引が多いのです。
国税庁 OB の税理士は、「節税や交際費の捻出目的だったのではないか」と憶測。
上記のマンションについては、スルガ銀行専務の男性は「社長に対応する責任がある」 どうして、詳しくは語らなかったということです。
岡野喜之助氏死去で不明に
そして結局、これらの事実は明らかにはなったものの、一連の融資を主導して、ファミリー企業を率いていた実質トップの岡野喜之助副社長が亡くなったため、調査委員会も「調査には限界があり、全容は解明できなかった」と調査が打ち切られたままとなっています。
記事を読み終えて
スルガ銀行の問題が報じられた当初は、ファミリー企業の数は20と言われていましたが、上記朝日新聞の記事だと、40以上あったということです。
そして、その多くが実態不明であり、岡野喜之助副社長だけが知っていたということなので、傾いた事業の継続を図るため、どうやら資金調達を行っていたということのようです。つまり、いわゆる「ファミリ―企業」の多くは、傾いた主要な当初の企業のプロジェクトのための、資金調達のために設立されていたのだと思われます。
なぜ、そうしなければならなかったのかは、これは推測ですが、岡野家の主要な企業の一つは、SGアセットマネジメントとその関連会社で、業務内容は、クレマチスの丘に隣接する地域の不動産開発、その他の不動産業だったと思われます。
しかし、静岡は土地バブルとは無縁であり、晴海フラッグや都心のタワマンならともかく、分譲地を開発したところで、それが飛ぶように売れたとはまったく思えません。
そして、静岡の町の不動産賃貸も、他の地方都市と同じでしょう。地方では、事務所や店舗を含め、軒並み空き室が多くなって、賃料を値下げしようとも、入居者が居ないことはザラです。人口が少なくなって、何をやろうとも儲からないのです。
朝日新聞では、岡野家ファミリ―企業が高級マンションを10室以上所有していた理由を「不明」としていますが、都心部は地価が上がっており、むしろ土地バブル。おそらく、静岡には見切りをつけて、都内に投資しようと思ったのではないかと推測します。利益が出れば、それで穴埋めしようと思ってのことでしょう。
ちなみに、不動産の転売は行えば行うほど値段が高くなる仕組み、いわゆる「三為」 と言われるやり方で、それはスマートデイズ社のシェアハウスの土地をオーナーに買わせる時の手法としても使われていました。不動産をファミリー企業間での転売というのも、それに当たると思われます
結局、岡野家ファミリー企業の不振の発端は、やはり、地方の衰退と地価下落に由来するものであったでしょう。
そもそも地方銀行の衰退は、地方の経済の衰退によるもので、シェアハウスやレオパレスのような地銀の融資を元にするサブリース事業を拡大させたのは、スルガ銀行だけではないことは言うまでもありません。これからも第二のサブリース被害が出てくることも十分予想されるのです。