相続法が改正され、様々なルールが40年ぶりに大きく変わりました。良くなった点も多いと思われる方も多いことでしょう。
特に、凍結された故人の口座から葬儀費用が引き出せるというのは、大きな利点です。
しかし、葬儀費用の引き出しには、もう一つ注意すべき大きな盲点がありました。それは故人に借金があった場合でも、払い戻し制度で預金を引き出すと、万が一の場合の相続放棄ができなくなるということです。
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改正相続法の利点
相続のルールが約40年ぶりに大きく変わりました。
昨年の民法改正で、高齢化社会の実情に合わせて故人の配偶者を優遇する仕組みが取り入れられたり、遺言の活用を促す制度も設けられるなど、様々な利点が追加されて安心された方も多いことでしょう。
しかし、これらは皆、相続そのものに問題がないということが前提です。
そして、相続そのものに問題があるという場合に、逆に適応したことが買いになってしまうのが凍結口座からの葬儀費用の引き出しです。
葬儀費用の払い戻し制度
7月から始まった葬儀費用がおろせる払い戻し制度は、今回改正された相続法の中でも、もっとも便利なものです。
通常は相続人が亡くなった場合には、銀行口座は預貯金の保護のため、預金がおろせない凍結という措置が取られます。
しかし、人の死亡後には入院費の支払いや葬儀費用など、この時点でもっともお金が必要になることが多いのです。
これまでは相続人全員の戸籍謄本など手続きが手間がかかるものであったため、 多くは被相続人の誰かが立て替えて用立てていたのではないでしょうか。
払い戻しで相続放棄ができない!?
それが今度からは、凍結後の口座からも、一定額なら簡単にお金が引き出せるようになりました。
これ自体は大変便利な制度なのですが、 逆に大きな問題となるのが、相続放棄の観点からです。
個人の口座から一定額を起動した場合でも、相続放棄ができなくなる恐れがあるからです。
故人に借金が判明
故人に大きな借金があったということは、亡くなってすぐではなく、やや時間が経ってからわかることが多いので、そのようなことは珍しくありません。
なので個人の資産状況がよくわからないままに、葬儀費用を引き出してしまうと、個人の財産の一部分を相続したということになり、相続をしたとみなされて相続放棄ができなくなってしまうのです。
「部分的な相続放棄も可能」説もあるが
個人の資産を使っても、使い道が葬儀なら相続放棄が認められるのもあるという弁護士もいます。(稲村晃伸弁護士)
ただ新制度では凍結口座から引き出すお金は、相続人に分割される遺産の一部になると法律に明記されているそうです。
なので引き出すことは武しとくと同じになるので相続を承認したとみなされる可能性が高いです。
いずれにしても、そのようなリスクを負ってまで葬儀費用を引き出すという人はいないでしょう。
相続放棄に失敗した例
新聞に掲載されている例では、埼玉県の五十代女性の例がありました。
お母さんが亡くなった数年後にお母さんに数百万円の借金があるということが判明したという例です
この女性の父は会社を経営しており、女性の母が保証人となっており、会社が倒産したため保証人だった母の債務が、娘である女性に請求がしてしまったのです。
その女性は、母の死後は銀行に口座の権利を放棄する書類を提出していました。
そのため口座の預貯金は相続はしなかったわけで、女性はそれで「相続放棄をした」と思っていました。
ですが、実際の相続放棄は3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きをしなければなりません。そのため、この場合は、相続放棄はできず、借金も娘の女性が支払う羽目になってしまいました。
故人に借金がないか確認を
せっかく相続放棄をする意思があったのに、手落ちがあっては残念です。
凍結口座から葬儀費用引き落としをするときも、個人に借金がないかは必ず確認に借金がないかは必ず確認する必要があるでしょう。
またできればこれまでに借金がないかどうかを、生前の被相続人に訪ねておく必要もあります。
また、縁の遠い叔父叔母などの相続が発生した場合にも注意する必要があります。いずれにしても故人の死後に、思わぬ借金が降りかからないようにしなければなりません。
売れない不動産も負債と同じ
そしてもう一つは、売れない不動産がある場合も、借金があるのと同じということです。この点は見落としをしないようにして、これも相続放棄の対象としてあらけじめかんらえる必要があります。
こちらの準備は、もっと早いうちから始める必要がありますね。
相続にはプラスになることばかりが多いとは限りません。凍結口座の葬儀費用の引き出しのみならず、慎重に対処する必要があります。