改正相続法で、相続時に良くなったと思われがちですが、本当にそうなのか。実はそうではない点もたくさんあるとの指摘を萩原博子さんが行っています。
どの点がそうなのか。改正相続法の注意についてを考えてみます。
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改正相続法とは?
40年ぶりに「相続」に関する法律が改正され、7月から施行されることになりました。
今までは人が亡くなると銀行口座からお金をおろすことができないなど、困る点が多々ありましたが、その辺りの不便を含めて法律の”改正”がなされたわけです。
しかし、便利になった、良くなったと思われる点は多々あれど、誤解を招く点も少なくありません。”勘違い”でこれで相続が心配なくなったと思っていたら、そうではなかったというのは、今まで以上に困りますね。
それらの懸念が残る部分についてを、経済ジャーナリストの荻原博子が、週刊誌女性自身で解説しました。
改正相続法の注意点
述べられていることは下の箇所です。
・息子の妻も寄与分を請求できる
・自筆遺言書を法務局で保管
・仏具は相続対象
・借地権を相続
・賃貸住まいに思わぬ費用
・相続税は10カ月以内
一つ一つ見ていきます。
息子の妻も寄与分を請求できる
介護に当たった妻の立場の人にも、「特別寄与料」が請求できるということで、この点は介護にあたる、いわゆる”長男の嫁”には朗報と思われていました。
荻原さんは「特別寄与料が法定相続人1人分より多いとは思えません。相続財産の1割程度」とコメントしています。
しかし、身内と同じ相続権が与えられるということではないのですね。あくまで特別寄与分の請求です。
つまり、そうなると、何もしなかった実子の兄弟、例えば長男の嫁の立場だとしてすると、何もしなかった実子の次男は、長男の嫁よりは多くもらえるということは変わりません。
ベストはやはり遺言書
介護にあたるのが、長男とその嫁、または次男とその嫁であるという場合には、やはり遺言書を書いてもらうという以外の方法はありません。
その場合でも遺留分を請求された場合は、渡さなくてはなりません。上の家族構成なら、次男の遺留分は1/4です。
自筆遺言書を法務局で保管
自筆遺言書を書いたら、法務局で保管してもらうという改正点も、一見安心そうに見えますが、家族が遺言書の存在を知らなければ、そのまま保管され続けることになるだけです。
遺言書の存在や保管場所を、必ず家族に伝えておくことが必要です。
もっともこれは、普通の自筆遺言書でも同じですし、場合によっては公正証書遺言でも、「書いた」ことは、言っておかないと手続きができません。
そして、自筆遺言書では、それをもって登記などの手続きはできません。それができるのは公正証書遺言だけですので、どうせどこかに預けるのなら、公証役場に願い出る方がはるかにメリットは高いです。
高価な仏具を相続目的で残すのはダメ
墓地や墓石、仏壇仏具などは相続税がかからないため、純金製の仏具や骨とう価値の高い仏像などを子孫に残そうという人がいたそうです。
しかし、今はこれらも税務署の追及を免れることはないので、これからはそれは使えません。
しかも、要らない仏具であれば、換金する必要がありますね。
生命保険は相続外
相続対象にならないし、確実なものといえば、生命保険をおすすめします。
相続とは基本的に無関係で、兄弟の同意等がなくても確実に受け取ることができます。
あるいは、500万円×法定相続人の数以内は相続税がかかりません。ただし、所得税の支払いは必要になります。
借地なら「借地権」を相続
土地を買ったのではなくて、借りている場合、前者は所有権、後者が借地権です。
家が建っているのが借地であれば、「借地権」があり、これも相続財産に含まれます。
地価が高い場所なら、借地権も億単位というところもあるそうです。
借地は売却が難しい場合も
また、借地ですので、売却をしようとした場合に、売却が難しいことが多いです。手離したい場合は基本的に更地にして返却するようですから、売却益が望めないどころか、解体費がかかります。
借地と分かっている場合も、売れない空き家と同様、早めの準備が必要です。
賃貸住まいなら費用が
被相続人が賃貸住まいなら、荷物をすべて撤去し、借りる前の状態に原状回復して、賃貸契約を解除する手間が必要です。
もちろん、それまで賃貸料が発生します。
高齢者の場合には、遺品整理業者に依頼すると、2DKで10万~25万円が標準です。
孤独死の場合
また孤独死など特殊な亡くなり方の場合には、対応も費用もかさみますので、わかっている場合には、こちらも早めの予防と対策が必要です。
相続税は10カ月以内に現金で
相続税がかかるのは、相続財産が、3000万円+600万円×法定相続人の数を超えた場合です。
法定相続人が妻と子2人なら、4800万円以内ならば、かからないことになります。家土地がいくらになるのかによって、予期せずオーバーすることもありますので、あらかじめ相続財産を見積もっておく必要があります。
親にいくら持っているのか聞くのが難しい場合もありますが、やはり話題にして、皆で準備しておくのがよいでしょう。
相続改正法まとめ
結局、改正されたといっても、亡くなったあと、葬儀費用が下せるというあたりは「よくなった」感じはありますが、それ以外は、それほどメリットが高くないように思えます。
しかし、いつも見ていて思うのは、なんの準備もなく相続ということになってしまうと、特に売れない不動産がある場合は大変困ることになります。早めに準備するのでなければ、売れない空き家の問題は乗り切れません。
相続について考えることに罪悪感を持ち過ぎるのも問題です。その時点で被相続人の親や兄弟が話が分からないようなら、相続発生後に揉めることも必至と考えて、対策を練るしかありません。