老朽マンションの建て替えと売却は、耐震性のあるマンションについてはこれまで所有者の全員の合意が必要でしたが、これからは住民の5分の4の同意があれば可能になるというニュースです。
国土交通省がマンション建て替えに関する法律の改正案を10日、決定したものです。
同時に、その際のマンションの売却の方法についても示されました。昨日のニュースを元にお伝えします。
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マンションの老朽化
国内に建てられたマンションの多くが、いっせいに老朽化するといわれており、対策が急務と言われるようになっています。
築40年を超えるマンションが増加
国土交通省によりますと、新耐震基準で建築されたマンションのうち、築40年を超えるマンションは、令和5年末にはおよそ34万戸、さらに令和20年末には、その8倍に当たるおよそ263万戸になる見込みです。
老朽化したマンションは建て替えが可能であっても、所有者全員の同意が得られない場合は、放置をせざるを得なくなっていました。
対策が検討されてきましたが、国は、マンションの建て替えをしやすくするため、建物と敷地を一括して売却する場合に必要だった所有者全員の合意を、「5分の4」に引き下げる方針を決めました。
マンションと耐震性
昭和56年以降のマンションは新耐震の基準で建設されています。
耐震性があっても管理が適切に行われず、特に外部に危険な外壁の剥がれ落ちるなどの問題がある場合は、速やかな修繕が必要です。
しかし、修繕がなされないままとなっているマンションも増加しています。
一方、昭和56年以前の耐震性が不足しているマンションについては、おおむね建て替えが必要となります。
マンション建て替えの合意の割合
耐震性がないマンションについては、建て替えに向けた建物や敷地の売却が所有者の5分の4の合意で可能です。
一方、耐震性があるマンションの場合は、所有者全員の合意が必要、建て替えや解体、または売却などを決める際には、マンションの所有者の全員の同意が必要となっていました。
これを、どちらも同じ「5分の4」の同意が得られれば、売却や建て替えができる、ということになったのです。
耐震性がないマンション(昭和56年以前) | 所有者の5分の4の合意で建て替え可 |
耐震性があるマンション(昭和56年以後) | 所有者全員の同意→ 5分の4へ |
同意が取れず廃墟マンションとなった例
所有者の合意が取れなかった例で、国が空き家特措法に基づいて、強制的にマンションの解体を行った例があります。
所有者9人のうちの7人は連絡がついたのですが、2人の連絡がつかなかったので、廃墟マンションと化していました。
滋賀県野洲市の廃墟マンション美和コーポを市が解体へ 特定空き家に
国土交通省のコメント
「新耐震基準でも今後、老朽化マンションが増加するおそれがある。まずは、マンションの適切な維持管理を進めてもらいたいが、建て替えの選択肢を広げることで、老朽化マンションの再生を後押ししたい」
老朽化マンションの建て替え方法2つ
新法案と同時に、老朽化マンションの建て替えについて、2つの方法が示されました。
建物を取り壊して建て直すのは、今までも聞いた方法ですが、新しく示されたのは、マンションの建物と敷地を業者に売却するというものです。
1.マンションの管理組合で建物を取り壊して建て替える方法
2.マンションの建物と敷地を業者に一括で売却して建て替える方法
合意を得やすいマンション建て替えとは
国交省が、第2の方法を提示したのは、上の第1の方法だけだと、所有者の合意が取りにくいということが大きな理由です。
管理組合で建て替える場合は、建て替えられたマンションではなく、売却をして別の場所に住みたいと考えている人がいると、同意が取れないことになります。
また、建て替えている間の住まいの確保などが、所有者にとっては個別に手配することも難しいことがあり、そのために建て替えに反対することも考えられます。
売却後は転居も入居も可能
しかし、建物と敷地を業者に一括して売却した場合は、住民はそこに住まずに別の場所に行くことも可能となります。
さらに、売却で資金を得られますので、その先は、戸建てを売った場合と同じように、自由に行動ができます。
転居をしたり、建て替え後のマンションに入居をしてもいいし、選択肢が広がるため、合意形成が進めやすくなります。
また、建て替えている間の住まいの確保などが、所有者にとっては個別に手配することも難しいことがあり、そのために建て替えに反対することも考えられます。
これまでの事例を踏まえて、上記のような提案がなされたわけです。
もちろん、住民の数が多いマンションの場合は、建て替えに際しては、課題は様々ありますが、不動産コンサルタントの長嶋修氏は、これまでに比較するとよくなったという意味のコメントを述べました。
マンションの建て替えというのは、これまではほとんどできないケースが大半でした。
今回の法案に限らず、さまざまな方法を検討していくことが必要だと思われます。
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