スルガ銀行が融資をした女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」への投資が破綻した問題で、既に倒産したスマートデイズの初の債権者集会が19日に行われました。
集会の内容と判明したことを、毎日新聞プレミア記事を元にお伝えします。
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シェアハウス投資問題、スマートデイズで債権者集会
スマートデイズは女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」の運営会社。投資者のオーナーを募り、自己資金のないオーナーに対して、スルガ銀行を巻き込んで不正の融資を行ったとして倒産。
最初から倒産することを計画内に織り込んだ「計画倒産」とも一部では言われていました。
融資のスルガ銀行は行政処分
その融資を取り扱うことで利益を上げていたスルガ銀行も、自己資金のない投資者オーナーの融資書類を改ざんしたとして、行政処分を受けるところとなりました。
「地銀の優等生」とも呼ばれていたスルガ銀行は、今や多額の預金が流出し、新しい融資の顧客も見込めない状態に陥っていることは知られるところです。
スマートデイズの負債総額は1055億円
一方、スマートデイズは、19日に初めての債権者集会を行いました。そこで、現在のスマートデイズの資金状況が明らかになりました。
それによると、スマートデイズの資産額は現在5515万円であるのに対し、届出のあった負債総額は1055億円に上ることが分かりました。
数字を見る限り、債権者への返済は、困難であるというより、ほぼ不可能な状況です。
スマートデイズ債権者集会の様子
債権者集会は、東京地裁民事部が進めている破産手続きの一環として、非公開で行われました。
シェアハウス被害者オーナー200名が出席
スルガ銀行の融資を受けてシェアハウスを購入した被害者200名も、債権者として出席。
これまで伝えられているように、オーナーはいずれも1億円前後の借金を抱えているということです。
被害者オーナーらは、スルガ銀行に対しては、弁護団を通じて、「代物弁済」を求めて交渉を続けています。
毎日新聞の記者は、債権者の一人に委任されて入場したので、その模様が伝えられるところとなりました。
それによると、撮影や録音は禁止で、常時見回りの係官もおり、大変厳しい監視体制であったということです。
スマートデイズの負債1055億円の内訳
目録に記載された負債1055億円のうち、シェアハウス購入処分の負債は1015億円。
そのうち被害者弁護団に委任した人が248人で942億円、 それ以外が 245人で72億ということです。
スマートデイズの現在保有する資金は5073万円、そのうち現金が679万円ということですが、負債1055億円という金額を考えると、残りの 1015円は一体どこへ行ってしまったのでしょうか。
スマートデイズ資金流出の首謀者と手口
初回の債権者集会では、スマートデイズの資金がどのように流れて行ったのか、また、実質的なシェアハウス問題の首謀者の名前も明かされました。
スマートデイズの実質的な経営者の実名
公式にスマートデイズの実質的なオーナー経営者の名前が出たのは初めてで、その名前は、佐藤太治。
スルガ銀行が融資するシェアハウス販売の仕組みを作ったのは、この元社主であることも明らかにされました。
「東京シェアハウス」から「スマートデイズ」へ
元社主がスマートデイズを設立したのは2012年。最初の名前は「東京シェアハウス」。
管財人の清水祐介弁護士は、元社主について、
「この人物は会社登記にも株主にも名前が出てこないが、実質的なオーナー経営者だった」
と説明。
登記上の代表者は義弟で、株式保有は家族名義だったとみられています。
スマートデイズ社主は元「ビデオ安売王」経営者
すでに一部では知られていることですが、佐藤氏は「ビデオ安売王」の会社名で、風営法違反の疑いで逮捕。
さらに、その後も98年には旧住宅金融専門会社から16億円7000万円をだまし取ったとして、詐欺の疑いで逮捕歴があります。
この人物が、スルガ銀行の社員を通じてスマートデイズに融資を依頼。いわゆるスルガスキームの源です。
スマートデイズ関連の融資は、スルガ銀行に大きな利益をもたらしましたが、スルガ銀行内の行員による内部告発文書を受けて、当時の岡野喜之助副社長によって、融資が一旦中止されました。
しかし別の不動産業者名を使い、融資は継続。 その後は知られる通り、自転車操業の挙句、現在のような事態を招いてしまったわけです。
スマートデイズは計画倒産で意図的な詐欺
スルガ銀行としては予想しない結末だったかもしれませんが、内部億発の文書には「この人物は過去に何度も計画倒産を繰り返しており」とあるように、元社主の佐藤氏側としては、最初から倒産も計算に入れたものであったとも言われています
また、下に示すように、計画倒産に使われるとされる多額の資金の隠匿が意図的に行われています。
そのため1000億円を超える資金が、周到に計算をされた方法を経て、いまだに不明なままになってしまっているわけです。
他にも同様の計画倒産が疑われるのは、スマートデイズと同じようにシェアハウスを販売運営していた、ガヤルドという会社です。
シェアハウス被害者の資金を隠匿した手口
債権者集会では、佐藤氏の会社スマートデイズが、被害者から集めた資金をどう流したか、その手口について次のように説明されました。
そのうち利益の奪取が判明しているものとしては、下の3つの方法です。
・不動産用語で「三為」「四為」と呼ばれる土地の転売手法
・スマートデイズから他社への融資
・役員への多額の報酬
ひとつずつ解説します。
1.土地の値段を上げる「三為」の転売手法
土地所有者からスマートデイズが購入し別の企業に転売。
業界用語で「三為(さんため)」「四為(よんため)」と呼ばれ、3社、4社と転売させて土地代金をつり上げるいわゆる“土地転がし”と言われるものです高値になった土地を最後に購入するほかに、転売企業の中に、佐藤氏の企業があり、最初より高い価格で売った分、差額の利益が、その都度入るようになっていました。
2.スマートデイズから他社への融資
スマートデイズから、元社主が支配する企業と、コンサルタント契約を結び、1億5千万円などの多額の融資が行われました。
返済されないまま、3年後の18年この会社は休眠状態になったということです。
これは計画倒産の時に使われる手口だそうです。
3.スマートデイズ役員への多額の報酬
スマートデイズの役員が、それぞれどれだけの報酬を受け取っていたかに関しては、「「スマートデイズの役員に支払われた報酬は、我々から不当に得た資金が原資になっている」として、債権者から開示と返還が要求されました。
管財人は
「調査を継続しており、返還請求すべきであれば請求する。現時点で個別の報酬開示は差し控えるが、13年8月以降の全役員の報酬総額は3億7000万円になる」
と回答。
また、被害弁護団の共同団長を務める山口広弁護士は、
「不当で詐欺的な融資を受けた購入者が人生を破壊されたことが最大の問題だ。管財人には、スマートデイズの経営者が詐欺を行った実質的な証拠を示すようお願いしたい」
と要求を述べました。
債権者集会で、上のような事実が明らかになったことは、一歩進んだ感があります。
しかし、それと同時に、債権者と被害者への返済は極めて難しいことも明らかになりました。
今後は、スマートデイズの役員が受け取った金銭が返還されるのか、また、佐藤太治氏への「詐欺」の追及が行われるかどうか、それらが早く解明されることが望まれます。