世間を騒がせている積水ハウス地面師事件、カミンカス操ら地面師と呼ばれる詐欺グループが所有者になりすまして、積水ハウスに土地を転売、55憶円をだまし取ったというものですが、今日の朝日新聞朝刊において、首謀者の名前が初めて公表され、事件の全貌が明らかになりました。新聞としては初めての詳しい報道です。
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積水ハウス地面師事件内容
朝日新聞の記載は、「2017年4月、東京都新宿区のビル。運転手つきの高級車が横付けされた。」とまるで小説のように始まり、事件の発端からを時系列で追いながら、その全貌を伝えるものとなっています。
その高級車に乗っていたのは東京・五反田の廃業した老舗旅館の「元おかみ」になりすました、羽毛田(はけた)正美容疑者(63)。
そして、元おかみの「財務担当」を名乗るカミンスカス(旧姓・小山)操(みさお)容疑者(58)内縁の夫役、常世田(とこよだ)吉弘(67)、運転手役、佐藤隆容疑者という面々でした。
積水ハウスのオフィスで土地売買交渉は、そうして詐欺師が揃ったところから始まったのです。
羽毛田正美容疑者 「感じのよい」元生命保険外交員
羽毛田容疑者は、所有者のなりすましして、パスポートに偽造写真が添付。積水ハウス以前に、土地取引を持ちかけられた不動産会社は、それを手に近所に確認に行ったと言います。それを見て、近隣の5人中5人が「違う」と断言しました。そのインタビューを聞くと、旅館の女将であった所有者は、もう少し風格のある人物であったようです。
取引交渉の場で干支を言い間違う
羽毛田容疑者は、見た目はともかく、なりすまし役としてもお粗末でした。演技の指導を受けて居たにもかかわらず、干支を聞かれて言い間違ったと言いますから、手慣れた詐欺師というよりは、どこか素人レベルです。
しかし、業者の役ではなく所有者なので、あるいはそれが良かったのかもしれません。すかさずカミンスカス容疑者がフォローをするなどして、積水ハウス側は特に不信を抱かず、2か月後の登記申請まで取引は順調に進みました。
隣近所の印象では「感じのいい人」
羽毛田容疑者というのは、東京都足立区の借家で暮らす生命保険会社の外交員。いわゆる生保レディーです。近所の住人によると、工場経営の夫が急死し、7、8年前に引っ越してきたと言います。別な情報では離婚したというものもありますが、近所の人にとっては良き隣人であったようで、物をお裾分けするなど東京としては密な付き合いもあったようです。
近隣からは、感じのいい人で生活に困った様子はなかったと伝えられていますが、夫がおらず子どもが6人同居していたと言い、羽毛田容疑者本人は今回の事件に加わった動機を「病気の子どもの将来が心配でお金が必要だった」を理由としてあげていますが、なりすましが最初でなかった可能性もあります。
羽毛田容疑者を手配したのは秋葉紘子(こうこ)容疑者74歳ですが、これも手配役として逮捕されています。70過ぎて初めて詐欺師になったとも言えず、こちらも本事件の関与が最初ではなさそうです。
羽毛田容疑者の受け取ったお金、つまり、なりすましとしての報酬はというと、数千万円と報道しているところもありますが、秋葉容疑者共に数百万円くらいというのが妥当と思われます。
土地権利証の提示はなかった
積水ハウスとの交渉中、土地権利証の提示を求められましたが、羽毛田容疑者は「内縁の夫」とけんかしているとの嘘をついて断ったそうです。そこで、内縁の夫役、常世田容疑者が次回の交渉に登場して話を合わせる一幕も。
手付金を支払う際には、同社側の司法書士が土地権利証を確認したが、それはコピーを偽造したものでした。古く見える紙で法務局の押印もあったため、本物だと信じたといいます。結局、積水ハウスの方は、権利証を確認せず全額を支払いました。
「内田マイク」の名を初めて公表
今回の朝日新聞の報道には、これまで伝えられていなかった「内田マイク容疑者」の名前が出ています。
過去の地面師事件でも暗躍していた、と記事は伝えていますが、大きな地面師事件には必ずといっていいくらい関わっていた、地面師50名ほどの「池袋グループ」を率いていたとされる人物です。東京都内だけではなく、水戸市や川口市など地方の土地取引などでも、名前がささやかれるほどの人物、地面師の大物、ドンであり黒幕です。
内田マイクについてはこちらの記事:
地面師主犯は網走刑務所からカミンスカスに指示、積水ハウスから55億円を騙す
首謀者と見て再逮捕
今回の積水ハウス事件と同様、実行役は別の人間で、裏で糸を引いているのがこの人だということで、警察は首謀者と見て逮捕状を取ったということです。おそらく、これがはっきりしたので、今回の新聞報道となったのでしょう。
この人物はどこにいるのかというと、何とそれが現在も網走刑務所に収監中だというのです。ならば逮捕には事欠きませんが、それにしても、刑務所に居る間にさらに新しい事件を指図しているとは。これでは取り締まりのしようもありません。最初から「逮捕」も承知であり、何とも思っていないわけで、これでは逮捕が罰則として機能していないことになります。
地面師事件の難しい点で詐欺の罪状は多くは公文書偽造であるため、罪は軽く利益は最低でも数億以上と大きい「ローリスクハイリターン」が地面師事件が後を絶たない理由の一つのようです。
内田マイクが逮捕されたのは、杉並の駐車場の土地取引をめぐる詐欺でした。また、アパホテルの事件にも関与していると言われています。
アパグループの事件に関してはこちら:
積水ハウス地面師主導はアパホテル事件他で逮捕された男が収監中に指示
今の逮捕状は全部で5人
刑務所内に居る内田容疑者の支持を、カミンスカス容疑者に伝えていたのは、永田浩資(ひろすけ)容疑者(54)です。この人も、アパホテル事件で有罪判決を受けて、控訴中だと言います。
他に逮捕後に公判中なのが、北田文明容疑者(58)。こちらは世田谷区の土地をめぐる地面師事件での逮捕ですが、今回は詐取金を分散するための口座の準備をしたとされています。この世田谷の事件も、ドラマ性の強いもので、土地を購入しようとした不動産会社社長は、詐欺師の一味ではないかと疑われ、自殺まで考えたと言います。
「世田谷5億円事件」はこちらの記事:
積水ハウス地面師事件 11人目逮捕 北田文明容疑者 口座準備の主犯格手口
カミンカス操容疑者は国外逃亡
カミンスカス操容疑者は、現在フィリピンへ出国。写真は空港での姿ですが、マスコミが詰めかけている中を悠々と、飛行機に乗って日本を逃亡。なぜそれができたのかというと、逃亡ルートに暴力団か準備。そして、どうも警察内部、しかもマル暴に協力者の刑事がいて、逮捕への動きがあるということを事前にリークしたとも言われています。
「カミンスカス」という名前は、リトアニア姓、またはエストニアの名前と言われ、妻の一人がリトアニア人だったため、結婚によって改姓し、逃亡を準備。旧姓は小山です。G組のフロント企業に属しており、脱税容疑の前科があります。今回の事件で受け取ったのは7億とされています。国際手配中ですが、フィリピンとは引き渡し条約がなく、また、フィリピン経由で既に他の国に渡った可能性もあります。
関係者は「あいつはもう日本に帰ってこないよ」と言っているということですが、遠くの国に受け取った金で悠々と暮らしているのか。あるいは、日本に帰ってくるのは逮捕された時ということになるでしょう。
カミンスカス容疑者について:
積水ハウス地面師事件 逃亡中カミンスカス容疑者はどんな詐欺師か
積水ハウス事件地面師カミンスカスはリトアニア姓で海外逃亡 警察内通者が逮捕を通知か
土井淑雄容疑者 事件の鍵を握る中心人物
そして、今回その重要な役割と共に、名前が明らかになったのが、カミンスカス容疑者と同様逃亡して行方がわからなくなっている土井淑雄(としお)容疑者(63)。一連の動きの中心的な役割を果たしたとみられています。
北田容疑者他に、積水ハウスから詐取した55億円を振り込ませる口座を準備したわけですが、それだけではなく、55億円の内、行方がわからなくなっている30億円を隠し持っているとすれば、この人物が持っている可能性もあります。
また、上に記した警察とのパイプを作ったのもこの人物ではないかということで、逮捕に至れば警察内部で賄賂を受け取っていた協力者が明らかになるかもしれません。
積水ハウス地面師事件 警察が内部情報リークか?暴力団が海外逃亡手配
まとめ
積水ハウス地面師事件は、最初から被害額が莫大なため、注目を引きましたが、様々な取材を通して、実はそれ以上に大掛かりな事件であるということがわかってきました。ネックは、まだ捕まっておらず、行く先もわからないカミンスカス容疑者と土井容疑者が見つかるかということ。そして、残りの30億円の行方です。
事件の行方から今後も目が離せません。続報があればまたお伝えしたく思います。
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